orangeitems’s diary

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就職氷河期世代・国が就業支援→人材派遣会社に委託、のなぜ

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なぜ派遣会社が就業支援で登場するのか

国語の問題だと思うのですが、何だかおかしなことが行われようとしています。

 

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 新卒重視の採用慣行が続く中、バブル崩壊後の1993~2004年ごろに大学や高校を卒業した世代は、新卒時に正社員として採用されず、不安定な働き方を続ける人が多い。この世代とほぼ重なる35~44歳の約1700万人のうち、非正規で働く人が317万人、フリーターは52万人、職探しをしていない人も40万人いる。

対策の柱として、人手不足の建設や運輸などの業界団体を通じ、短期間で就職に結びつく資格を得るための訓練コースをつくる。また、正社員に採用した企業には最大60万円の助成金を支払う制度の条件を緩めるほか、氷河期世代を対象にしたキャリア教育や職業訓練を人材派遣会社などに委託し、就職に結びついた成果に応じて委託費を払う。

 

考察

非正規やフリーターが多いので、不安定だと言っているんですよね。しかし、教育については人材派遣会社に委託する。これ、単に派遣社員を増やすだけの政策になっておりませんでしょうか。

人材派遣会社にとっての生命線は、人数の確保です。人数が多ければ多いほど在庫となり多く出荷すれば成長する仕組みです。人数が足りなければ生きてはいけません。かつ、単なる人数ということだけではなしに教育も施さないと、派遣先で安定しません。国から補助を受けて人材不足の業界に対する教育コースを開設でき、そこに潜在的に人材供給力のある就職氷河期世代を持ってくるというのは、あまりにも出来過ぎな仕組みです。

人材派遣会社は、この国の支援を追い風にキラキラ広告を流して、派遣社員をさらに増やそうとするんだろうなあという絵がくっきり見えます。あれは西暦2000年になる少し前、派遣会社のCMが湯水のように流れた時代がありましたが、そのときの再来と思います。

また、「正社員に採用した企業には最大60万円の助成金」なんて見出しも踊っているわけですが、60万円と正社員のポジションは企業側には釣り合わないでしょう。派遣社員の供給量と質を増やしてくれたほうが経営的には都合がいいわけで、この制度は結果として、派遣会社に登録する人数の増加、派遣社員として働くための教育の充実、非正規社員の増加という枠組みが強化されるだけになると予見しておきます。

 

設計の問題

この問題の背景はとてもわかりやすくて、「非正規は不安定だ」と言っておいて、非正規を生産する人材派遣会社にお金が入るという設計の問題です。

逆説的に言えば、本当の問題の解決のためには、非正規が安定する必要があるのです。正規100%になることではない。

今後、正規社員の枠はどんどん小さくなり非正規社員ばかりになっていきます。これは統計の通りです。下記の記事でご説明したことがあります。

 

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アルバイトやパートタイマーを、派遣社員に引き上げるような教育がされつつ、正社員にはいつまでたっても届かない。無期転換の制度も企業は抜け道を探っていて、正社員の人数は増えない。下記の記事でもご紹介しました。

 

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だんだんと人材派遣会社ばかりが成長していく状況に関しては、ある程度の規制が必要なのではないかと考えています。公共料金の値上げが認可制となっているように、時給のマージンにも上限をかけないと、供給力の大きな人材派遣会社が寡占状態となり、不都合な事態が起こるのではないかと危惧しています。

そのうえで、非正規社員が「安定」となるような政策が必要なのですが、ここがいつまで経っても実現できていないから、謎の制度ばかり作られると解釈しています。

 

就業支援が、派遣社員就業支援とならないよう、この制度の詳細を追っていきたいと思います。