orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

無期転換申請後に解雇できるならそれは「企業はこれを拒否することはできない」にはならないだろう

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無期転換申請後に解雇

派遣契約で5年を超過すれば、派遣社員は無期雇用契約を企業に申し入れる権利を手に入れる。そして、企業はこれを拒否することはできない---。

この新常識を覆すような事例が発生してしまいました。

 

www.asahi.com

日立製作所が、5年を超えて有期雇用で働き、無期雇用への転換を求めた40代の女性社員に対し、今月末での解雇を通告したことがわかった。「無期転換」は有期雇用で5年を超えて働く労働者に法律で認められた権利で、女性社員は昨年6月に「無期転換」を申請し、今年4月から無期雇用になる予定だった。日立は事業の縮小を解雇の理由に挙げているが、女性側は「無期転換逃れだ」として解雇の撤回を求めている。

 

法律上の解釈はどうか

この件、調べれば調べるほど、労働者側に分があるように思われます。

注:以下は個人的な見解です。今後出るだろう弁護士の見解に注目してください。

 

roudou-pro.com

労働契約法改正で、派遣・契約社員などの有期雇用契約を結ぶ労働者は、5年以上同一業務を行った場合無期雇用契約に転換することが可能になりました。

 企業は労働者から無期転換への申し出があった場合、拒否することはできません。

 

今回は申し出をすでに行っていた派遣社員でした。にもかかわらず日立製作所は8カ月後に解雇通知。無期雇用に正式に転換するのは2019年4月からだったそうですが、「無期転換の申し出」を拒んでいるのと同義だと思います。

この問題の焦点を整理しますと、

・2018年6月に、派遣社員は無期転換を日立製作所に申請した。
・2019年4月から、派遣社員は無期契約を結ぶことは決まっていた。
・2019年2月に、派遣社員は日立製作所から解雇通知を受け取った。

と言う状況のもとで、2019年4月からの無期契約は無効になるかどうかということになります。無効になるようでは、無期契約を企業が拒否したければ契約実効までに解雇してしまえばいいということになり、無期転換制度など骨抜きもいいところです。

また、2019年2月には解雇されるけれども2019年4月からは無期雇用されて然るべきだとも思いますね。無期転換の申し入れについては、企業側承諾の強制が前提なのですから・・。

 

無期契約の場合に解雇することはできるか

一方で、無期契約が申し入れした段階で実質有効だったとします。無期契約の派遣社員を解雇できるのはどんな場合でしょうか。

 

partners.en-japan.com

使用者(企業)が、定年によらず、
無期労働契約に転換した労働者を解雇する場合には、
労働契約法第16条の解雇権濫用法理が適用され、
当該解雇が「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると
認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となります。

 

ということで記事の通り日立製作所の「業務上の都合」だとすると会社都合そのものであり、「客観的に合理的な理由」など存在せず権利濫用になって無効になるだろうと、思いますね・・・。例えば正社員が会社都合で解雇できるのなら、非正規なんて存在も無かったと思われます。

 

今回はっきりすべき

正直、「無期契約で派遣」というのと、「正社員」の待遇があいまいでよくわからないと思っていました。今回はっきりさせればいいと思います。
・無期転換申請後に、契約締結までに企業側が解雇できるなら、承諾の強制って何なのさ
・無期契約転換後でも業務都合で解雇できるのなら、無期契約って何なのさ

ということになりますよね。

ちょっと日立製作所の言い分も知りたいなあ・・。どういうロジックなんだろうか。