orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

なぜ日本だけ物価が上がらないのか

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なぜ日本だけが物価が上がらないのか

ヨーロッパは量的緩和政策を年内に終了することを宣言しましたね。

 

www.nikkei.com

【リガ=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は14日、ラトビアの首都、リガで理事会を開き、量的緩和政策を年内に終了することを決めた。ユーロ圏では景気拡大が物価を押し上げつつあり、物価目標(2%近く)の実現に手応えを感じ始めたためだ。利上げを加速する米国に続いて欧州が量的緩和政策を打ち切ることで、世界の金融政策は危機対応の局面から平時へと大きく転換する。

 

アメリカも、利上げペースを年3回から4回に上げるという宣言をしました。

www.bloomberg.co.jp

失業率が低下し、インフレ率が従来の見通しよりも速いペースで上昇していることから、2018年通年の利上げ予測は4回に上方修正された。

 

ところが、日本だけは異次元の量的緩和をしようが、マイナス金利を導入しようが、依然、物価がピクリともしません。

 

www.nikkei.com

「米国は賃金も物価も順調に上昇している。日本はなかなか十分に上がってこない」。日銀の黒田東彦総裁は15日、金融政策決定会合後の記者会見で力なく答えた。今週、米国は利上げし、欧州は年内の量的緩和終了を決めた。しかし日本の物価は鈍く、目標の2%が展望できず緩和を続行せざるを得ない。日銀の金融政策の正常化はほど遠く、米欧にとりのこされている。

 

デフレマインド、つまり人の気分が原因という記事ですが、これは本当なのでしょうか。日本人って物価を上げたくない人種なのでしょうか。

 

原因は不安定な非正規という歪み

厚生労働省の資料から非正規労働者が増えているのは明らかです。

 

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この25年で2倍。平成29年における日本の労働人口が5,500万人ですから、40%がすでに非正規となってしまいました。企業は、労働者を正規から非正規に鞍替えすることで物価を上げずに人にかかる原価を削減していったため、物価へ反映させることを先延ばしにし、これだけ長い間物価が上がりにくくなっていると思われます。しかも非正規化が進むことにより給与が下がったり雇用条件が不安定になったりしますので、より物価が低い方が売れるようになります。非正規の人数が頭打ちになるまでは物価が上がるべくもないでしょう。そして、今や日本人の非正規の数が足りなくなってきたため、外国人を長期間働かせる施策を打ち出すという始末です。

 

www.sankeibiz.jp

政府は経済財政運営の指針「骨太方針」の素案に、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格の創設を盛り込んだ。新資格で平成37(2025)年ごろまでに50万人超が必要と想定する。人手不足の深刻化を受け、実質的に単純労働分野での就労を認める方針転換となるが、現行制度でも受け入れ後の生活保護受給者増や悪質な紹介業者の存在など解決すべき課題は山積しており、一筋縄ではいきそうにない。

 

このように、人件費を落とそう落とそうとする動きが未来永劫続く限り、よほどの原材料価格高騰に見舞われなければデフレが続くものと思われます。

 

日本の特殊な事情

アメリカでは正規労働者でもクビ切りは日常で、正規労働者を雇うのに日本ほどリスクはありません。ヨーロッパでは正規でも非正規でも同一業務同一賃金の考え方が広がっています。一方、日本の正規労働者は相当手厚く守られていて、これを減らすことで原価削減、その結果生産性向上ということを地道に長期間続けてきた国と言えます。永久に続けたい企業側は外国人を使ってでも非正規化を止めたくないようです。

これじゃ、デフレは終わらないですね。

最低賃金アップ、給与のベースアップと言ったって、正規が減り非正規が増えるのを止めるか非正規の待遇がもっと上がらないと使えるお金は廻っていきません。

 

デフレマインド、どうやったら解消されるのでしょうか。

 

net-toushin.jp

国民は将来への不安から、とにかくお金を使わない。どれくらい使わなかったかというと、10年くらい前は1人あたり平均、年間の可処分所得(個人所得から税金などを差し引いた手取り収入)の約3倍の金融資産を持っていました。今はそれが約4倍。つまり、この10年で1年間の稼ぎほど貯蓄が増えたというわけです。世界では、米国や英国は3倍、ドイツやフランスは2倍くらいです」

 

こちらは2013年の記事です。もう5年間状況は変わってない。同じことを今年日銀総裁がおっしゃっています。この時は異次元の金融緩和を行えばマインドが変わるのではといわれていましたが全くもってデフレの状況が変わりません。

明らかに国民の将来の不安から、物価が上がらなくなっています。非正規の増加はこれを増幅しています。まずは政策として、非正規への待遇改善や保証を厚くし将来の不安を解消すれば、企業は物価へ転嫁せざるを得なくなると思います。人件費が減らせない時点で料金に反映させるしかなくなるからです。

 

政府もデフレマインドのため、とばかり言っていないで、これを打破するための政策を打ち出してほしいと思います。

 

 

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