orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

おすすめ:巷説IT企業奇譚

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これはおすすめ

IT業界に関わっている人は、ぜひ下記エントリーを読みましょう。おすすめです。

www.megamouth.info

 

正直、お金が取れるレベルだと思います。本をよく読んでいてかつ業界経験もないとここまで書けません。話自体はフィクションですが、ここにちりばめた要素はIT業界あるあるで構成されています。すごい。

 

夢と現実

現実的に個々のエピソードを捉えていきたいと思います。

 

社長の隣にいかめしい山伏が立っていて・・・

経営コンサルタントという商売の人がいます。創業者や、社長などをうまく丸め込み、山伏のようにふるまいます。これは本当です。何度か目撃しました。

 

山伏の教科書がないかとアマゾンを見ていたら、良さそうな本がありました。 

 

 

年間報酬3000万円超えは一見すごそうですが、一人で全部回すわけにもいかないと思いますので「普通の仕事」に見えます。また、業績が回復してしまえば契約も打ち切られることが多くなかなかコンサルタント業もずっとやっていくには大変そうだな・・、とは思います。

現場からすると、急に外からやってきて、社長の横で偉そうにしゃべりやがって、ということになりがちな、ヘイトの集まりやすい山伏という職業だと思います。結果が出なければコテンパンに叩かれて出禁ですね。

 

社員とは対照的に社長は上機嫌の様子

コンサルを連れてきた社長って大体ご機嫌なんですが、何を飲まされているんですかね。まあ、経営を向上させるという社長の第一のミッションをアウトソースできるんだから楽といえば楽でしょう。これから俺も楽になるかな、ということなんですかね。

もし上手くいった上で、社長に相当に気に入られた場合は、スカウトされてそのまま役員に就任・・なんてこともあるので、ハイリスクハイリターンながらやりがいのある職業であるということは言えると思います(うまくいかないと地獄ですが)。

 

SESビジネスからの脱皮

まず、SES主力の会社はオフィスに全社員分の机がありません。ほとんど顧客のオフィスにいますので、広い自社オフィスは家賃の無駄だからです。したがって、いろんな現場は他の現場とかぶらないように帰社日を調整します。結果、同じ会社にいても顔を知らない人ばかりになります。

この状況で、SESビジネスを脱皮するといってもまず受け入れ態勢が必要です。机も無ければパソコンもないわけで、まずは出るお金のほうが先でしょう。フリーアドレスにするにしたって、カフェのような狭い机では仕事をするのは難しいと思います。マルチディスプレイが主流ですし、Macbook Proで円卓は仕事は回せないかなという印象です。営業ならできそうですが。

次に、空き人員を埋める仕事が必要です。しかもここではプライムということなので、よほど強い営業ルートを引っ張ってこないとSESから戻ってきた社員を100%動かすのは難しいと思います。単に営業ルートだけあっても商品・サービスがないといけませんので、では帰ってきたらすぐできる、他社と比べて競争力もある自社サービスなんて、なかなかありません。優れたテックセールスを外部から連れてきて独自の提案力とコネクションでもってプライムから仕事をどんどん受注し、SES帰りのエンジニアに振ってチャレンジングにこれを成功させる。ワンライナーで書けてしまうのですが、そんなうまい話世の中に落ちているわけがないと思うあなたは、正解です。だいたいは、営業段階で安値掴みしていたり、技術の段階で破綻したりします。だからプライムなんて誰もやりたがりません。

 

企業ブログでもやってはどうか、あるいは勉強会で登壇したい

ここには議論の余地があると思います。企業ブログに慎重な経営者は多いです。企業が炎上した場合のリスクは年々上がっていて、むしろ知名度を上げずに暗躍して仕事を取った方が有利に働く場合もあります。セキュリティー的にも、あまり知られていない企業のほうが攻撃を受けにくい傾向にあります。技術者は企業ブログで世間に目立ちたいという欲求があるのですが、経営者からすると、変に炎上してブランドを傷つける可能性があり慎重にならざるをえないのです。企業ツイッターでもたまに不適切発言でニュースになっていますよね。

 「無闇に有能を誇るは愚か者のすること、もし才あらばその結果をもって自ずと世に知れよう」

なんとなく、著者の本当に言いたいことが隠れている気がしますね。基本的には私も賛成です。今はリスクのほうが大きいと思います。技術者はやりたければ匿名でやった方がいいと思いますね。またもし会社でやるならば、レビュー体制を整えるなど慎重に取り組む必要があります。

 

たまに会話があるとすれば、誰と誰は使える、あいつは使えない

自分が技術者の時は、人のアサインと懐柔に精を出す管理職を無能扱いしておきながら、自分が偉くなると同じ事をやりだすというのを見てきました。

あるビジネスモデルがあり、これが工数と成果物がリンクしているような場合は結局は人の管理が一番重要になります。日本のSIerの伝統的なヒエラルキーであり、技術者も出世していくと最後は人の管理だけになっていく。こんなことじゃいけないよねともう数十年言われ続けていますが全然変わっていないように思います。有能な技術者がどんどん平凡な管理職になっていくのをたくさん見てきました。

この小説の場合は、山伏がせっかくユニークで高収益なビジネスモデルを確立してくれたのに、その営業のノウハウを取り込まずに新しい営業・技術者で渦中の栗を拾うようなSESと変わらないビジネスを始めてますから、まあ社長さんは学習能力はないです。ただ社長という生き物は我が強いので、なかなかコンサルの言うようにはなってくれないというところではないでしょうか。そのあたりがリアルだなと思いました。

 

まとめ

業界の状況が最もわかりやすい小説といえば、有名ですが、なれる!SEかな。お時間があればぜひどうぞ。

 

 

がむしゃらに技術ばかりやっていると数字だけしか見ていない人に利用されがちな業界なので、技術者も正しくビジネス周りを理解する習慣を身に着けるべきだと思います。そうすればどこに転職してももしくは起業しても、すぐ戦えますから。ビジネスと技術両方に長けてくると、自分がベテランになった時の身のこなしが優雅になります。若い技術者はこのあたりにぜひ興味を持ってもらいたいと思います。技術者が利用され使い捨てられないためには必要な自衛策です。