orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

非正規と低賃金の関係を言葉にしてみる

 

非正規を廃止して正規職員ばかりにしたら、日本の給料は上がるという意見をたまに見るが、いやいやそうではないだろうという記事。

 

mainichi.jp

地方のように良質な雇用が少ないところでは公務員は最大の雇用先だ。学会で非正規公務員の実態を報告し、正規に切り替えるべきだと指摘したところ、ある地方国立大学の教員が「そんなことをしたらうちの学生があぶれる」と発言した。

 ある大学では学生から「今いる非正規公務員を正規にしたら私は就職できなくなる」と言われたこともある。

 

なるほどね、という発想の転換である。

低賃金労働者をいかに作り出すか、というスクリプトが非正規そのもののからくりだ。正規職員自体が高度成長期の、仕事がありあまるとともに国全体が膨張していく時代の産物だからだ。皆が富を分け合い、皆が日々成長していく前提じゃないと、とても維持できない。いつまでも成長が続いていくんだというバブル期の盲信が幻となって、さて前提が崩れた。そのタイミングとともに現れたのが非正規だったのだ。

 

www.staffservice.co.jp

1996年    対象業務が26業務に
バブル崩壊以後、人材派遣に対する企業からの需要が拡大。それにともない、対象となる業務も26業務まで広がりました。

 

政府が非正規を主導したというより、企業が成長し続けない前提をいかに現実的に飲み込むか。その出口がこの非正規の始まりとも言える。

具体的に数字で言えば、厚生労働省のデータによると、1989年では労働者全体の19.1%が非正規だったのが、2017年では37.3%となっている。

この30年、世界に比べて日本の給料が伸びていないということがよく話題になるが、むしろ日本の給料が30年前高すぎて、それを30年間かけて調整してきた。非正規という制度の導入によって・・・とも言えると思う。

マクロ的な観点で言えば、非正規を選ぶことイコール、低賃金労働を受け入れるということを意味すると思っていいと思う。責任が低いが賃金も低い。それは正規社員では説明ができないため、そこにできたのが非正規という制度だと考えて良いと思う。

もちろん、非正規の制度の中でも高収入の例外的な人物も中にはいるが、平均化されると議論の余地がない。何らかの戦略性がなければ、労働という枠の中では正規は高収入、非正規は低収入。さてどちらを選びますか、というだけの話だと思う。

最近賃上げの話が盛り上がっているが、この正規・非正規という枠組みを外す議論ではない。5%とか10%とかの給与アップは、正規・非正規全体に適用したり、もしくは正規だけというところもあるだろう。結果として低賃金労働者層がいないと、社会がまわらないと言っているようなものである。

もしこのまま日本に革新的な産業が産まれず現状維持を決め込むならば、生産性だけは向上させつつ正規・非正規の割合は変わらないかもしくはいよいよ非正規を増やすなりして全体的な賃金の抑え込みは働き続けるだろう。そうなっていくとき、果たして「起業せず会社員がいい」というのはどこまで合理的なのか。リスクを取って起業するほうがまだ戦えるという時代が迫って来ているような気がしてならない。それぐらい、この非正規という制度自体が説明する低賃金の合法化があからさますぎると思う。