orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

人の心をどう分析し理解するのが適切か

 

脳科学者の記事を読みました。

 

toyokeizai.net

「老害」というと、「すぐ切れる」「空気が読めず周りに迷惑をかける」など、トンデモな老人をイメージされるかもしれません。しかし、実はこれは脳の老化によって脳機能が低下することで起きる特徴でもあります。脳の老化は30代からはじまり、自分では気づきにくいこともあるため、40代、50代の働き盛りの人でも他人事ではないのです。

脳科学者・西剛志氏の著書『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、老害と言われる人たちの特徴とその予防策について、一部抜粋・再構成してお届けします。

 

私は大学生のとき心理学科を専攻しましたが、人の心という共通の研究対象に対して、色んなアプローチがあることを知りました。

①臨床心理学・カウンセリング
②脳科学
③精神医学

心理学から離れても、哲学や文学などは人の心の真理に近づこうとしています。実は宗教でも、芸術(美術や音楽)も、人の心を表そうとしていますね。

でもみんな目的は実は一つです。人の心の機微を、ロジックを解き明かしたいという動機に基づいています。

富士山に登りたくても、いろんなルートがあるのと似ていますね。どれが正解かではなく、どれも正解。でも同じ道は通らない。興味深い事実です。

私自身は臨床心理学からのアプローチを勉強しましたから、あまり脳科学のことには興味を持ちませんでした。どちらが正しい議論は意味がなく、どちらからでも山頂までたどり着けばよいです。排他的ではありません。

 

で、老害の話です。そもそも老害と言う言葉がスラングですから、アカデミックな話ではありません。高齢になるとどういう傾向があるかという話に過ぎません。

人の心の話を、脳の萎縮の話で全て解決してしまうのは無理が過ぎます。まだまだ、人間の行動と脳の関係について、具体的に根拠を持って話ができる段階にはない、と思います。

結局は、老いた時の傾向というのは外観から推察するしかないです。結果として、老いると色んな行動の変化が見られる。だから、脳にも何か起きているに違いない。加齢による脳の比較でみると収縮が起きているのは間違いない。だから、収縮すると行動が変わる。それぐらいの根拠です。

なぜ明確な結論が出せないかと言うと、人体実験ができないからです。「脳を人工的に収縮させてみたら」。これができたら脳科学分野は一気に進捗するでしょうが、そんな倫理的に危険なことが許されるはずがありません。

実際は、いろんな症例を検討しながら、物理的な欠損と行動の因果関係を類推するしかありません。

人の心を知ろうとする際に用いるエビデンスは、何らかの手段で集めたデータです。これは脳科学だけではなく臨床心理学でも精神医学でも同じです。どこに注目するかが違うと集められたデータが異なります。そうなると考察のプロセスが全く違うということです。

なんとなく、人々が「老いるとこんな傾向があるよね」「あるある」という共通のぼんやりとした共通認識があり、それをどういう方法で何らかの影響に絡めて相関しているかどうかを表現するか、ということになります。

 

どういうアプローチでも山頂に近づくことはできると思いますが、最も危ないのは「こういう結論であるだろう」という思いこみ、バイアスです。もともと、老害はあるだろう、と思ってしまうと、老害があることを印象付けるようなデータを重要視して、結論まで引き出そうとしてしまいます。学生のレポートのように。でも、結論ありきの学問なんて、著名経営者の人生論みたいなもんです。あれって、読んで何かの役に立ちます?。自分はこうだから、がポイントであり、しかも誰でもは慣れないような結論が置いてあると、プロセスがむちゃくちゃだったりします。でも、私がそうなってるんだから、あなたもそうですよ、みたいな話になりますよね。それが思い込みです。バイアスです。

 

私が心理学科から、いきなりコンピューターの仕事に就いたのも、この「人の心」という大きな山があまりにも曖昧だったから。答えが見当たらないしこれからも答えは出ないだろうという感覚があったので、答えがわかりやすいコンピューターの世界に進みました。

ただ、ここにきてAIが台頭し、人の心をコンピューターがシミュレートしようとしているところがとても面白いです。結局、あの山。人の心を知りたい。どんな学問もそこにたどり着いてしまうのだなというのは興味深い事実です。