orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

部下が結論から話してくれない理由

 

結論から話してくれよ、と思うことはないだろうか。

いろいろと話を引き出した結果やっと結論までたどりつく。いやそれって、時間があまりにももったいないから、いつも口うるさく、「話しかけるときは結論から」と言っているのにどうして部下は結論から言わないのだろうか。

実はそこにはからくりがある。

仮に部下が結論を先に言ったときに、「なんだそれは!けしからん!」と上司が話を最後まで聞かず怒り出すのだ。いやいや、こういう経緯があって、こういう理由で・・、結論を先に言った後、定型通りに話を進めて、だんだんと怒りは鎮まってきてようやく話が通じる・・という展開。こういうことが一度でもあると、部下は以後、とても慎重になる。前提条件や経緯をまず上司にそれとなくインプットし、結論を言っていい状況を作ってから、やっと話してくれるようになる。

結論を先に言って!と言う言葉自体が、怒りをはらんでいる。部下は怒られたくない、という理屈のほうが先に立ちだすのが特徴だ。特に結論を急ぐ上司は、端的な結論をすぐに自分で思考して、次のことを考え始めてしまう。もともと頭の回転が速くせっかちなので、相手の話に時間を取られるのが苦痛と考えるタイプである。そうなると、報告者はたまらない。とにかく最後まで話を聴いてくれ!、となる。

心理的安全性、という言葉が定着して時間が経つが、この現象を説明してくれるいい言葉である。何を言っても大丈夫、という雰囲気の醸成。これができると、部下は結論から話してくれるようになる。その後経緯や理由も教えてくれる。大切なのは、最後まで話を聴き、途中で判断しないという上司の態度だ。結論から先に言うのは望ましいけれど、でも内容がどうあろうと最後まで聴くよ。報告してくれてありがとう。決して怒らない。

最近の上司は、かなり、精神的に成長していないと勤まらないな、という理由でもある。頭がキレて、少しの情報でたくさんのことを把握し、短時間で的確かつ複数の指示を出せる。そういうスーパーマン的な上司像において、一点足りない点がある。相手の話を最後まで聴き、決して怒らないという覚悟だ。

そうじゃないと、せっかくの上司の性能が活かされない組織づくりを進めてしまうことになる。何しろ部下が、自分に対してのあらゆる物言いを慎重にしてしまう。そうなると、情報がちゃんと上がってこないので、結果として不正確な結論を導き出し、そして、もっと情報を断片的に知っている部下と衝突する原因となってしまう。

だから、結論から話さない文化は、テクニカルな要因から来ているのではない。エモーショナルな、人間関係に根ざす部分から見つめないと実現しない。会社の中だけではなく、夫婦関係、子供との関係も同じかもしれない。とかく、端的に聴いてすぐ頭がまわりだすタイプの人は、本当に本当に気をつけたほうがいい。取り返しがつかなくなる前に。一度下がった心理的安全性を取り戻すのは簡単じゃない。

単純に考えれば、結論から話すことを全ての人が徹底することは、効率の向上につながる。私も本当に心からそう思っていたし、なぜ世界はそうならないのだろうと不思議だったのだけど、ここ最近は痛感している。心理的安全性の高い世界を構築するためには上司の人間としての成長が必要となる。話を最後まで聴き決して怒らないことは、全ての基盤となるのだ。