orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

AIで仕事が奪われるとして

 

新しいテクノロジーが出てきて、よく話題になるのが、それで人の仕事が奪われるかという話だ。今回はAIである。

IT業界にいると思うのが、IT業界はむしろ人の仕事を奪う側にいるということだ。システム化して自動化した結果、たくさんの事務仕事が消えたのは記憶に新しい。

では、AIは、今度はITの仕事自体を奪いに来るかどうか、だ。

これは、ある側面から見ればその通りではある。情報収集して概要をまとめる、ということが上手な今回のAIは、その通りの仕事を奪う可能性はある。

ただどれだけ「情報収集して概要をまとめる」の面積が、IT業界の中で大きいのだろうか。それをAIがやるメリットがどれだけあるのか。

日々の仕事で感じるのは「情報収集して概要をまとめる」の後に、決断するところの比重が非常に大きいということだ。情報はいくつかの選択肢を示唆することが多く、それらを選ぶことについては人間しかできない。責任はどうやっても人間にあり、AIに責任を取らせることはできないからだ。

スポーツの世界で、データ主義のようなものがとても流行し、いろんなデータから次のアクションを決定するようなプロセスが取り入れられたが、その結果、全てうまくいったかというとそんなことはない。むしろ、データ分析の結果打つ手はなく負けるしかない、という結果を出されどうしようもなくなることの方が多い。しかし、それを人間の選択によってどう捻じ曲げていくか、のような部分のほうが価値が高いと思う。

この世はデータが多すぎる。統計解析したところで、その結論が結果を決めることはない。むしろたくさんの選択肢が存在することだけがわかる。それを選ぶのはあなただ、となる。あなたとは誰?。AIは絶対に責任を取らない。

仕事を奪われる/奪われないの境目は、この部分になる。

情報収集までにしか携わっていないと思うなら、それはもう大げさにAIで便利になる。便利になるから人手が要らなくなる。ということは人が減る。

しかし、「何を情報収集すべきか」「情報収集した結果から何を導くべきか」「何を決断し実行するか」については、AIはカバーできない。

私自身も最近は、部下の教育に携わることが多いが、この部分についてどう伝えていくかとても苦労している部分でもある。目的がはっきりしていることについてはAIは非常に良い結果を出すが、何が目的かを考察し結論付けることが難しい。つまり、AIに質問する段階で入力する単語や文節を生み出すのは人間である点がポイントとなる。

これは「AIをどう使いこなすか」という命題へ収束する。今までもそうだった。ビッグデータ、統計ソフト、いろんな便利なツールはたくさん増えたが、それを手に入れた会社が必ず勝つということではない。最後に人間が決断するが、**そこから社会環境は想定外にいろいろと変化する**のだ。それにすら追随しなければいけない。ここが人間にしかできない部分である。

あまりにもたくさんある「情報」を、いかに<なんとなく最適化して判断して>、腹落ちできるよう関係者を説得し、そして実行する。

案外AIが仕事を奪いに来るためには、かなり長い道のりになると思う。意志の形成やら、共感の獲得やら、昔なつかしい心理学科で学生だったときにもいろいろ感じていた部分が今出てくるとは。