orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

DXの結果、社会はかえって不便になってはいないか

 

デジタル要件が出る度に、各社がシステムとアプリを作ってリリースするのを、本当にやめてほしい。1つの企業が何か企画をやる度にアプリが増えて、しかもそのアプリ同士で中途半端に連携していると来た。ユーザーインターフェースやデザインにも統一性がなく、使う方で気を遣えと言わんばかり。

会社の内部的には、企画ごとに組織が違うから、それぞれの担当者から構築するベンダーまで全部違うから・・と言い訳されても使う方からしたら大混乱。で、その後、しようがないのでということで無理やり連携機能を付けて、更に混乱。それぞれでIDを作らないといけなかったり、IDは共通だけどパスワードは別管理とか、ほんとどうにかしてくれい。

また、場合によってはWebからしかできない手続きもあったり、一方はアプリ前提だったりで、正直、巷のDXは大混乱状態だと思う。アプリにはできないがWebではできる、とか。もはや自由競争に任せて、落ち着くところに落ち着くだろうみたいな楽観的な想定はもうできない。何かデジタル的な仕組みをやろうとする度に、毎回の作法の違いにユーザーとしては途方に暮れる。

その混乱が今どうなっているかというと「デジタルはめんどくさい」という方向に流れつつあること。確かにめんどくさいのである。1つ1つのシステムは結構考えてリリースされているのだが、それぞれに統一性がない。手続きごとにやり方がばらばらだと、ユーザーもおぼえきれない。IDが多すぎてパスワードが覚えられない現象と似ていて、ユーザーの記憶力に頼るようなDXになってしまっているのは各社、どうにかならないのか。

すべてのDX案件、全部が個人認証から入り、そして何らかの入力をさせ選択を促す。しかも、同じ企業が何個も個別にリリースする。ユーザーはいくつもの企業とお付き合いするのだから、もうカオスである。今のDXはユーザー体験を洗練させる方向に行かないのは、個別の問題ではないから、一社の一担当者がどんなにがんばってもどうにもならないところに来ていると思う。

DXなんて言われなかった時代を考えると、1つ1つの手続きに窓口担当者がいて、煩雑な手続きを彼らに吸収させていたと思う。携帯電話にしたって、銀行にしたって、窓口担当者が煩雑な業務を優秀にラーニングして、ユーザーの困惑を一手に引き受けていた。今のデジタルは、その窓口業務をデジタル実装したという部分が占める意味が強いのだが、煩雑を煩雑なままデジタル化したので、ユーザーにとっては煩雑を押し付けられる結果となってしまったように思う。

デジタル化によって削減されたコストについて、煩雑を引き受けたユーザーが恩恵を受けるプログラムになっていることは多い。初回何%引きだとか、ポイントが貯まるとか。それはそれとして、煩雑な仕組みを変えないままのデジタル化を増やし、かつ業界全体で共通インターフェースや共通手続きなど自助努力のないDXを今後放置するとすれば、「デジタル嫌悪」みたいなブームが置きかねないんじゃないか、と思う。

そもそもDXを取り入れないと競争に負けるというのが始まりだったのに、ユーザー側がちっとも便利にならずむしろ煩雑で、かつ窓口削減・コスト削減の片棒をかつぐだけという絵は、誰か想定していたのだろうか。

今まさに、この業務をデジタル化しよう、Webかアプリか。ベンダー選定は。みたいな仕事をされている方も多いとは思うが、この大変な現状を理解してほしい。むしろ、各社のデジタルサービスを使ってみるといい。めちゃくちゃめんどくさいことになってるから。その母数を増やす方向に、貴社のデジタル戦略は傾けてないか再考してほしいところである。