orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

ローコード/ノーコードがうまく行かない Webアプリケーション化すれば使われると思ったら大間違い

 

煩雑な業務をデジタル化すれば色んな人が便利に使ってくれる。そんな発想は根本から間違っていると思う。より具体的な事例が日経に掲載されていた。

 

www.itmedia.co.jp

 補助金をもらい逃していないかチェック──。東京都が都民や企業に給付する補助金にはさまざまな種類があるが、制度に気づいていなければ得られるものも得られない。都民のそんな“損失”を防ごうと、得られる補助金をインターネットで簡単に検索できるシステムを都が開発・供用開始してから2カ月余り。周知不足のためか利用は伸び悩んでおり、担当者らは活用を呼びかけている。

 

都が開発したとあるが、このサイトを開くとMicrosoft Power BIという表示が左下に出る。つまりローコードツールである。おそらく、Webに公開とするAzure上に展開される。

あらまあ便利ということで公開したのだろうが、都民がWebアプリケーションを利用するまでのプロセスは本当に甘くないと思う。

作成者はデザインばかりが気になるだろうが、実際は、データをどのようにユーザーに見せるか。理解させるか。どのような導線を前提とすれば使いやすいか。多くのWeb開発者、特にフロント開発者が頭を常に悩ませているところが大事だ。

マイナポータルの作りにしても思ったが、行政がデジタルを使った場合のデザイン能力が本当に低い。ユーザーがどこを見てどこをクリックし、どう遷移するかについて想像力が働いていない。機能を満たせばいいと思っている。

その上にローコードである。ユーザーがカスタマイズできる範囲が限られる。お仕着せの作りはたいてい気が利いていない。ユーザーはマニュアルを見ながらがんばって使おうと思えば使えるが、Webアプリとはそういうものではない。もっと人間の普通の感覚で使えるインターフェースを知恵を絞って実装しないと、人は使ってくれない。

利用低迷が周知不足と言う理由に結びつくのが行政らしい。使いにくいから利用されないというのがWebの世界でも常識と思う。優れたサイトはリピートする。色使いに一貫性が無い、ボタンが多すぎる、テキストが多すぎる。引っ張られたデータの表現がわかりにくい。そうやってシステムとは利用されなくなっていくが、その過去のシステム開発が踏んできた「やってはならない」をローコード開発者、ノーコード開発者がどんどん踏んでいく。

おそらく、まだローコード・ノーコードの世界も日進月歩なんだろうと思う。素晴らしいアプリケーションを、コーディングができない人に作らせるためには、もっともっと仕掛けを整備しないと、恐ろしく基本を外したアプリケーションがどんどん作られてしまうのだろう。

 

 7月の記者会見では小池知事も自らのスマホ端末を使って検索を実演し「せっかくの予算です。税金を有効活用するため、ぜひ使ってほしい」と呼びかけた。だが、供用開始以降、サイトへの訪問数は月200件程度。担当者は悔しさをにじませている。

 加藤課長は「広報誌やホームページなどで周知を図っていく」と話し、「使い勝手をよくするために改良を重ねていく」と意気込んでいる。

 

実は問題なのは、補助金自体の制度がわかりにくいのではないか。そのお金をどういう風に使えるのか。どういう手続きになるのか。業務プロセス自体が問題なのに、いくらシステムばかりをローコードで作ったところで、わかりにくさは変わらないのでは、と思った。また検索結果が簡潔過ぎるし、詳しくは電話・・となっているのでそこで興味を失ってしまう。

この程度なら周知しても利用者は増えないだろうし、改良を重ねていくどころか、ちゃんと使いやすい、都民が補助金を理解できるためのシステムをWebアプリの専門家に作ってもらったほうがいいんじゃないの?、なんて思う。