orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

工事進行基準2021年4月「廃止」でITベンダーに嵐の予感

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工事進行基準とは何か

工事進行基準、という言葉をご存知でしょうか。

IT業界で、システムの構築を請け負っていらっしゃる会社の方はご存知ではないでしょうか。システム構築の仕事は1年以上に渡るケースがあります。要件定義から設計、構築、テスト、そしてサービスインまでにかかる全体の期間について、1つの契約で仕事を請け負うことが日常茶飯事かと思います。

そうすると、システムが完成しないと会計上売上を上げられません。しかし技術者には給料を毎月支払わないといけません。自社オフィスの家賃・光熱費などもかかりますから、システムが完成するまで赤字続き・・となってしまいます。

毎月仕事をしているのに、完成まで決算上赤字が続くと、本当の会社の状態が決算から見えてきません。この問題を解決するために考えられたのが「工事進行基準」です。

工事進行基準とは何か、については下記の記事がわかりやすいです。

 

www.fujitsu.com

2009年4月1日以降の事業年度から、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造だけでなく、受託ソフトウェアの開発についても、「工事進行基準」(以降、進行基準)の適用が開始されます。 進行基準は、ソフトウェア請負業務の収益計上に用いる会計基準であり、ソフトウェア開発の進捗に応じて売上を計上する方法です。進行基準では、ソフトウェア開発の進捗に応じて売上を計上するため、開発状況の実態が把握し易く、また見積もり精度の向上や原価管理の適正化等、経営管理面においても実態を把握し易いといった利点があります。

 

この話、2009年ごろに業界で大騒ぎになったものの、各社が対応して現在にいたるのですが、これが逆に2021年4月から廃止され、「収益進行基準」になります。1年後に迫っているので取り上げます。

 

収益進行基準

こちらは去年の記事です。

 

xtech.nikkei.com

 売上高の計上に関する新たな会計基準がITベンダーの決算遅れを招く恐れが出てきた。2021年4月以降に始まる事業年度から新たな会計基準として「収益認識基準に関する会計基準(以下、収益認識基準)」が適用される。適用対象は約3700社の上場企業を中心に有価証券報告書を作成したり会計監査を受けたりしている企業である。

 その中でも受託ソフトウエア開発を主な業務とするITベンダーは大きな影響を受ける。これまで受託開発の売り上げを計上する際に基準としてきた「工事契約に関する会計基準(以下、工事進行基準)」を廃止し、収益認識基準に変更しなくてはいけないからだ。収益認識基準の適用対象となるITベンダーは売り上げの計上方法に関して見直しを避けられない。

 

こちらの記事、収益認識基準の説明がわかりやすいですね。

物やサービスなどを顧客に完全に移転したこと、を単位として売上を上げていくそうです。システム全体の請負を行っていても、中身を見ると、ハードウェアやソフトウェアを販売したり、クラウドを契約したりしています。サブシステムに完全に分かれている場合もあります。そういったいくつもの取引について、顧客に引き渡し顧客のものとなった時点で売上を計上するといったやり方のように見えます。

ほかの記事も紹介します。

 

www.concur.co.jp

今回ご説明するのは、「工事進行基準」についてです。「収益認識に係る会計基準」が新たに開発されたことに伴い、「工事進行基準」は廃止されることになります。特に土木・建築関連、あるいはシステム・インテグレータ(SIer)など、長期請負契約を伴う仕事に携わっている企業にとっては、大きな制度変更です。また、ソフトウェアの受託開発を行う企業も、同様に影響を受けることになります。

 

こちらの記事が教えてくれるのは、案件が顧客の都合で中止となった場合、かかった原価と利益を請求できる裏付けがないと、売上を計上できないということです。

つまり、要件定義だけやったとします。そこで顧客が「こんなに費用が掛かるとはわからなかった!であれば、システム構築自体を取りやめたい!」なんて言い出したとしましょう。しかし、要件定義にコストがかかっていますよね。これらを売上計上するためには、顧客に要件定義分にかかる原価と利益を請求できることが前提となる、ということです。

 

これまでの話をまとめた記事です。

 

www.otsuka-shokai.co.jp

工事進行基準と収益認識基準では、進捗に応じて収益を計上するための条件が大きく異なる。工事進行基準では「工事収益総額、工事原価総額、決算日における進捗度を、信頼性をもって見積もれる場合」としているのに対し、収益認識基準では「一定の期間、製品やサービスが顧客企業に移転しているかどうか」を判断する条件が別途定められている。

 

ということですね。

 

なぜ工事進行基準が廃止されるか

とても有名な事例を紹介しておきます。

 

www.atmarkit.co.jp

今回は、東芝が行った工事進行基準による売上計上不正を解説します。大規模システム開発案件でも採用されている売り上げのルール、工事進行基準とはどういうものなのか、東芝はどのような不正を行ったのかを学びましょう。

 

この記事が2015年ですから、廃止に影響を与えた事件の一つでしょう。

この事例は記事を読めばわかる通り、原価を小さく見積もることで、売上を早期計上するトリックが問題視されました。収益認識基準を適用する場合は、原価を正しく見積もることが前提となっています。

 

もうあと1年後に迫る工事進行基準の廃止、SIビジネスが好調な各SIerはどう対応するのか、具体的な見解が待たれます。