ITが単純労働を食い散らかした後にやってくること

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勤労は権利

使いきれないほどのお金を手に入れたとします。

そうすると、人間どうなるかというと、表層的に考えれば仕事をしなくていいやと考えるでしょう。

ただ、仕事をすることは基本的には義務ということになっています。

 

第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

 

これは日本国憲法の一文ですが、働くことというのは国民の義務であると同時に、権利でもあるんですね。働こうと思ったら働くことができるというのは権利であるというのは面白い考え方だと思います。

だいたいは勤労=義務の議論ばかりが優先するのですが、いや、働く権利があるのだという話は注目に値すると思います。

さて、なぜにこんなことを前段に置いたかというと、どうも最近のITが、人を働かせないことに注力しているからです。

 

 

ITは単純労働を減らす 

RPAが何万時間の労働を削減したというニュースはちっとも珍しくなくなりました。以前特集したときは結構注目を浴びたトピックなのですが、もうRPAは空気のようになり、大企業から中小企業へ裾野を広げつつあります。

IoTは来年にも利用が開始される5Gによって大発展します。人力に頼っていた工場運営が一気にセンサー化が進みます。どこで何が起こっているかすぐにわかるようになり、人間が対処する前に自動的に対処されるようになるでしょう。

AIはこれまでシステムではできなかった複雑な判断を可能にします。工場での人力のライン仕分けなどは自動化されます。もともと工場内でのロボット技術では日本は優れていて、これにAIを組み合わせることでより自動化は進むでしょう。

どんな切り口を取っても、人間の仕事を取り上げる方向にITは努力しています。

そうなるとどうなるか。日本全体の単純作業にかかる工数がどんどん減っていくでしょう。同じことの繰り返しで成り立っている仕事が減るのです。

そうすると、「単純労働こそ働くこと」と思い込んでいる人にとっては不幸です。求人がどんどんなくなっていくのは間違いありません。

本ブログの読者はIT業界の関係者が多いと思いますので、普段はあまり考えたことがないかもしれませんが、我々のIT業界の仕事は単純労働をITの力で削減することだと思います。100かかっていたプロセスを、ITの力で、10いや、むしろ0にしてしまうと「ああ仕事したなあ」と思うでしょうし、達成感もあると思います。しかし、今までその100に従事していた労働力が裏にはいるのです。

IT業界の原動力は、この単純労働の集合体を食らっていくことにあると思っています。

 

単純労働を食い散らかした後にやってくること

一方で、冒頭にもお伝えしたように、働くこと自体は権利です。

従って単純労働がこの先、限りなく最小化されていったとしても、それに従事している人たちに働くことを提供しなければいけません。これは義務であると同時に権利でもあるからです。

権利を保障することは、政治の大きな機能の一つです。

今は、少子化に伴う労働力減少を理由に、生産性向上を伴う働き方改革を政府は推進しています。

しかし、それとは全く別次元で、単純労働を徹底的に削減した後に、単純労働にしか従事してこなかった人々の大失業が待ち受けているのはもう、どう考えても免れないと思います。

大幅に削減された単純労働に従事していた人たちの受け皿が重要です。

日本の基盤である製造業も人手確保より、ITによる自動化推進の方を優先し始めています。一歩先を論じるとするのであれば、人が働く、ということについてもっと国民全体に変化を促し、単純労働からの脱却をたくさんの人々が共有しなければ未来は暗いと思います。

 

ベーシックインカムが解決しないこと

自動化が今後進むのであれば、人間は働かなくても済むのではないか、という議論があります。主にベーシックインカムの話です。

私自身はベーシックインカムには概ね賛同しています。今後しばらくは、単純労働と「働くことの変化」にギャップが生まれ、働き口がないという人々も出てくると思います。その方達に時間的猶予を与えるためにも重要な施策だと考えています。

働く権利があるのに仕事が与えられない、ということに対する対症療法です。

しかし、逆に考えてみましょう。

使いきれないほどの大金を得たとしたら。人間は働かないかというとそんなことは決してないと思います。お金持ちと言われる人々をよく観察してみてください。SNSやメディアで盛んにニュースになるような行動を起こしていませんか?。

働かないというのは、社会から切り離されることに等しいと思います。社会で生きていたら誰かの役に立っていないときっと空虚な気持ちになります。住居も保証され何でも買っていい、旅行も行き放題。学校に行くも良し。しかしきっと、世の中の役に立って社会から尊敬されたいという欲が満たされないに違いありません。

お金持ちがツイッターやYoutubeで、今日もアレコレやっているのは、あれも「働く」の一部です。結局は何らかのお金が彼らに還流していきます。

結局、働くことは権利なのです。彼らは働くことを決してやめません。

ですから、ベーシックインカムがあるとしても、働く権利を満たしていることにはなりません。

どこまでも、単純労働が無くなる世界で、単純労働しかやってこなかった人たちに働くことを提供すること、に対する努力を続けていかなければいけません。

働く、という概念をもっと拡張していくこと。これを国全体として明確に意識化し、制度化することこそ今後重要になっていくと考えます。