ベーシックインカム、つまり国民に一定額のお金を定期的に配る制度のことを追っていたら、「負の所得税」という考え方に辿りついたのでメモ。
――フリードマンが提唱した「負の所得税」とはどのような制度なのでしょうか。
井上 低所得者がマイナスの徴税、つまり現金給付を受けられるのが「負の所得税」です。仮に所得税率を一律25%引き上げ、年84万円(7万円×12月)の控除または給付が受けられるとすると、年収400万円の人は16万円の所得税を余計に払い、年収60万円の人は69万円の「負の所得税」(給付)を受け取ることになります。
上記の記事から、とてもわかりやすい図がありますので転記します。
引用元:『AI時代の新・ベーシックインカム論』 (光文社新書)
なお、普通の所得税の考え方は、以下の図のようになっています。
引用元:間違いだらけの所得税計算"高く見積もりすぎ" 課税所得700万なら、161万×97万○ (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
ということで、普通なら0円以上稼いだら、初めて所得税が発生する。ところが負の所得税の考え方の場合、336万円以上稼いだら初めて税金が発生します。
それ以下の人は、申告したら逆にお金がもらえることになります。全く稼がない人は、この図だと84万円をもらえることになります。税金なのに、逆にお金がもらえてしまう。おっと、84万円は12で割ると、月7万円ですから、この前話題になったベーシックインカムの議論に辿りつくというわけですね。
この話、結構筋がいいと思っていて、この制度を導入すると国は低所得者を放置すると税収が下がってしまいます。ですから、できるだけ336万円以上の仕事に就いてもらおうとします。
一方で、低所得者向けの細かい手当類がシンプルになるために行政コストが削られます。
結果的に、急に収入ゼロ円、という時に事務的にお金を受け取ることができる制度なので、大きな借金さえしなければ生きてけるということになります。
この負の消費税、実現可能性はあるのでしょうか。
興味深い記事を紹介します。
負の所得税は現在の社会保障を「リセット」するので、フリードマンの提案から50年たっても実現した国はない。民主党の公約した「給付つき税額控除」はこれに近いが、他の社会保障を廃止しないと財政支出がふくらむので実現しない。負の所得税は社会保障経費をゼロにして税に統一するので、財政再建の役に立つ。維新の会がこれを公約に掲げて闘えば、若い世代の支持を得られるだろう。
しかし有権者の過半数を50代以上が占める日本では、公的年金を負の所得税に変えることは政治的に不可能だろう。年金を積立方式に変えるという維新の会の政策も多くの経済学者の提案するものだが、現在の高齢者の既得権を侵害するので、与野党ともにまったく論議にならない。
結局のところ生活保護、年金などの社会保障の調整でせめぎ合いになるそうです。もう、こういった現状の社会保障を受けている人は切り離して、働き世代に対してだけでも適用してもらえないかな?とも思います。
憲法上で、「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定されているので、収入がないという状態に機械的に保証をつけるのは問題ないと思われます。
また、月7万円という金額が妥当かについても、これは採算の問題になるので計算すればいいけだけと思われます。
たまに、「非正規で働いていたが、コロナで無収入に」という話を聴くたびに思うんですよね。
家族は男児の姉、祖母の4人で、収入は母親のアルバイトのみ。カラオケ店に勤めていたが、新型コロナの影響で休業になった。店からの補償はなく、その間は友人を頼り単発のバイトで生計を立てていたが、今は「収入がない」と肩を落とす。
就学援助を受け、給食費も免除してもらっているが、休校で給食がなくなり、急な出費に頭を抱えていた。母親は「配食が頼り。量も幾分か多めにもらっていて、その分を夕飯に充てている。配食が生活を支えている」と語る。
たまにテレビでも、こういった無収入向けに配食している例を見るんですが、どういう理由であれ無収入では憲法違反、生活できない状況に陥るのではないかと思います。
誰にでもお金を配るベーシックインカムより、この負の所得税の案、もうちょっと現実化しないかな、と言う感想です。