「AWS移行」ということば
昨日、とある会合で、「AWS移行」という言葉を聴いて、「ああよくある、AWSへのシステム移行か」と思っていたら違っていて、「AWSから移行する」という話でした。
新しいなあと。
AWSには相当に便利なサービスがそろっているけれど、実はソフトウェアの塊であってAWS環境じゃないと動かないロジックがたくさん含まれています。だから、AWSで動いているものを他の基盤で動かそうとするとかなり大変なのはご周知のとおりです。いわばクラウドロックイン問題です。
AWSも、オンプレミスに持っていきたい?、じゃあAWS Outpostsってどうだい?、ということでオンプレでも動くAWSサービスをリリースする予定ですが、大きな目で言えばロックインなのは何も変わりません。なお、AzureとAzure Stackの関係も同様です。
結構、たくさんの企業がこのロックイン問題については関心があり、SIer観点で言えば、サービスを作って売ったときに「え、基盤はAWSなの・・、うちの会社Amazon使うなって言われてるんだよね」っていう話はよくある話です。小売り系は特にAmazon Effectに懸念を持っていて、最近AzureやGCPが伸びている原因の一つにはなっていそうです。
その話の流れで、「AWS移行」が「AWSから移行する」と言う意味であったということで、ちょっとゲームチェンジの空気を感じたのでした。
IBMのゲームチェンジ
一方で、昨日ニュースを見ていて、IBMが金融サービス向けパブリッククラウドを構築したというお話を耳にしました。
IBMはBank of Americaと連携し、金融サービス向けのパブリッククラウドを構築したと発表した。
現時点では他に特定の業界専用のクラウドの開発には取り組んでいないとIBMは述べている。だが注目すべきは、クラウドプロバイダーが、エンタープライズ向けソフトウェアベンダーのように業界のターゲティングを進めている点だ。Salesforceも、金融サービス向けのクラウドサービスを提供している。
あれ、IBMのパブリッククラウドって、IBM Cloudじゃなかったっけ。と思ったのですが内容を読み進めると全然違いました。
Bank of Americaはクラウドへの移行を進めており、ハイブリッドなアーキテクチャーを有している。IBMの金融サービス向けクラウドは、主要な「Kubernetes」環境として「Red Hat OpenShift」を利用する。Bank of Americaは、IBM傘下で金融サービスの規制遵守に関するコンサルティングを提供するPromontoryとも協力する。
多分、オンプレミスの環境に、Red Hat OpenShiftを導入し、その上に最近売り出し中のIBM Cloud Packを置いた環境だろうなと推測。
これをインターネット公開し、関連企業の複数の金融サービスをコンテナ化して動かしたら、確かにパブリッククラウドとは言える。言えるが・・。
OpenShift自体は、オンプレミスだけではなくAWSでもAzureでもGCPでも(IBM Cloudでも)動くわけで、IBMからしてみたら、Red Hatを買収した時点でもういわゆるパブリッククラウドの基盤争いからはいち抜けたんだなということなんでしょうね。
いわゆるゲームチェンジです。
「IBMが、パブリッククラウドを作りました」
なんて、ひと昔前から考えたらおかしな表現ではないですか?。
前段のAWS移行の件もそうですが、クラウドという言葉が相当に溶けてきている現状を感じました。
コンテナファースト
まだまだコンテナで動く業務ワークロードなんて、全体のほんの一部だとは思います。で、今Kubernetesを動かすと言ったって、パブリッククラウドのマネージドKubernetesを使わなければいけない縛りがあるのでしたら、クラウドロックインの心配は残ります。
EKSでもAKSでもGKEでも、コンテナならどこでも動くっしょ、なんて思っている人がいたら大間違いです。やっぱり各サービスにはローカルルールもあるし基盤独特の作法だってある。これじゃあ、マルチクラウドとは言えない。
今後、VMwareも、マルチクラウドやオンプレミスで動くコンテナ基盤の座をRed Hatと一緒になって争うとは思うのですが、なにしろアプリケーション開発者はそろそろコンテナでのシステム開発を考え出してもいいころじゃないかと思います。インフラ側はこのままいくと準備が整いそうな気がします。
コンテナファースト、と言う言葉は来年あたり、いろんな人が言い出しそうだなと思った次第です。