orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

クラウドもオンプレも残る未来

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2010年代は、もうクラウドが全てになるとか、もっと言えばAWSだけになるみたいな話が取りざたされたけれど、それはもう誰も信じてはいないと思う。まだそう思っている人がいれば観測範囲が狭すぎると言わざるを得ない。

もう息をすれば情報漏洩の話で、名だたる大企業やメガベンチャーでも流出のニュースが絶えない。情報はもはや資産であり、漏らさないためにはどうすればいいかと考えた時に、とりあえず日本から出しちゃだめだよ、という圧力が日に日に増している。そして日本のデータセンター構築の熱も日々高まり、そしてデータセンターには漏れなくオンプレミスが付いてくる。クラウドと言っても結局はオンプレミスで動かしている、と言う話は有名だが、クラウド用ばかりではなく、結局どの企業もオンプレミスの重要さをわかっているし今後もオールクラウドとは絶対にならないだろう。だから、クラウドといいオンプレミスといい、両方の使われ方は今後も成長し、その器であるデータセンターが必要になるというシナリオはもう間違いない。

象徴的なニュースを見た。

 

cloud.watch.impress.co.jp

富士通Amazon Web ServicesAWS)は12日、モビリティ業界における、デジタルトランスフォーメーション(DX)のグローバル展開で協業すると発表した。

 

富士通も2010年代はクラウドへの投資を盛んに行っていたし、パブリッククラウドと勝負をしようとしていた時期もある。が、今は、完全に棲み分けを行っているように思う。富士通も自前のクラウドを持つが、得意客に対してのインフラ提供の選択肢の一つにしかすぎないと思っているだろう。国内ベンダーのクラウドがいい、というのはシンプルで再現性のある動機だ。そうじゃなくて、グローバルなパブリッククラウドAWSやAzureなど)でも顧客が良ければ、別に基盤はそれでも良くて、その上のソリューションこそ収益基盤だというふうに思っているだろう。もともと金額の大きい基幹システムについてはオンプレミス前提であることが多いので、本当に、棲み分けという言葉がよく似合う結果となった。

もちろん、パブリッククラウドに基幹システムを動かすケースは散見されるが、割合としては少なく、また、全てを移すのではなく情報系など、ケースバイケースで選択することが今のモダンな考え方だ。

今は、インターネットや5Gなど通信がますます豊かになっていく時代なので、あるクラウドに集中的に配置するよりも、システムの適性を踏まえて基盤を選択し、それぞれをセキュアにかつ高速に接続するという考え方に落ち着いてきていると思う。いわゆるハイブリッドクラウド、の時代だ。

いくつかの基盤を企業が持つ中で、でもそれぞれに対して、インフラ管理が独立すると管理が大変だよね、ということで、VMwareの仮想基盤や、Kubernetesが、どこに基盤があっても同じ管理ができるように、と抽象化を頑張っている。RedHatのOpenShiftが有料のプラットフォームでは存在感を増しているとも聞いた。

また、逆の考え方で、パブリッククラウドと同じ管理を、オンプレミスのデータセンターに持ち込むことができる、というサービスも出ている。AWS Outpostsやら、Azure Stackと呼ばれるものだ。でもこのパターンの話はあまり聞かない。まあオンプレミスなのに、パブリッククラウドの世界を持ち込むというのは、少しトリッキーな感じはあるし、それなら、ゴリゴリのオンプレの世界で構築したほうがむしろ安全という感覚はよくわかる。

我々は、クラウドがブレイクした2010年代を潜り抜けたら、ほとんどが雲の中に行くという恐怖を感じながら、でもそうならなかった2020年代にたどり着いた。いや、どっちが勝ったとか負けたとかいう話じゃなくなった。クラウドも勝ったし、オンプレミスも勝ったのだ。いつぞやの対立軸は消え失せ、どっちに軸足を置いても食べていけるようになっている。だから、好きなことをやればいいんじゃない?という感想しかない。クラウド好きもオンプレ好きも、手を取り合って、2020年代を駆け抜けていこう。