orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

AIがあなたから取り上げる仕事が見えてきた

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AIに仕事を奪われる

AIと言われるとまだ実験段階で、私たちの仕事に何か影響するわけがないと思っている人はまだまだ多いと思います。いや、影響すると思っている人を見つける方が大変なぐらいです。しかし日経 xTECH EXPOを見学したり各種メディア記事を見るにつけ、おいおい、もう現場に入って仕事を奪っていっているぞという感触を強めています。

かの堀江貴文氏はAIに対して負のイメージを持つのはダサいと説きました。2018年5月、去年の段階での記事です。

 

toyokeizai.net

でもはっきり言って、「AIに仕事がとられる」と思っている時点で、あなたはダサい。それは別に今なんの職業についているかにはかかわらない。その理由を、話しておきたいと思う。

(中略)

でもそう考えているあなたに問いたい。そう考えてしまう理由は、今あなたがやっている仕事が、AIにとって代わられるようなレベルのものであると、自分で考えているということではないだろうか。

はっきり言うが、「AIによる職の代替=不幸」のロジックを持つ人間は、自分の価値をAIと同じレベルに下落させてしまっている。

 

上記の状況から1年半経過し、当然のことながら状況は変わってきています。具体的なソリューションが現れ、「AIに仕事がとられる」という状況が顕在化してきました。

直近のソリューションを集めその傾向を探ります。この1年半で実用化できるものですから、今後爆発的に広がっていく可能性を秘めていると思います。

 

AIソリューションの実例

 

スーパーの食品発注作業自動化

cloud.watch.impress.co.jp

 対象は、西友が販売する弁当・惣菜売り場の商品のうち、西友の自社工場で製造した商品をはじめとする約250アイテム。従来は各店舗の担当者が、商品ごとに過去の在庫・発注・販売・廃棄量や、天候・イベント情報などの複雑な条件を考慮し、需要を予測した上で発注作業を行ってきたが、こうした作業は熟練者による経験・ノウハウが必要とされていたほか、一定程度の作業時間を要していたという。

(中略)

 西友では、こうして、担当者が従来行っていた発注業務をAIに任せることで、発注作業の自動化を実現。スタッフは、店内厨房での加工業務や接客などの店舗オペレーションにいっそう注力できるようになるという。あわせて、欠品の改善や、社会問題化している食品廃棄ロスの削減を目指すとのこと。

 

聞こえはいいですが、この仕事について経験を持っていた一部の熟練者は、仕事を奪われています。一定の作業時間を仕事としていた人たちは、店舗オペレーションを配置換えされてしまいます。

具体的に「経験・ノウハウがあって一定時間を使っていた熟練者」の気持ちに立ってみるとなかなかシビアな状況ではないでしょうか。明日から、店内厨房に立つか、接客をしてください、ということです。

 

住民税業務の自動化

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 練馬区では、住民や事業所などから申告される確定申告書や給与支払報告書、年金支払報告書などのさまざまな課税書類を、富士通の自治体向け税業務システム「FUJITSU 公共ソリューション MICJET」(以下、MICJET)で管理している。

 それらの書類は「MICJET」上で照合され、住民税額の不整合がある場合はエラー検出されるが、例年7万件を超えるエラーについて、職員が手作業で内容を確認し適宜修正対応しているため、作業の負荷軽減やベテラン職員からのノウハウ継承が課題になっていたとのこと。

 

こちらも、「住民税システム上のデータに対してエラー処理を行う仕事」を行う熟練者が実際にいて、日々従事していたということになります。もともと公務員の仕事は煩雑なデータ処理が多いので、この件が解決してもまた次の似たような仕事がありそうですが、一つ一つ解決していくと最終的には無くなりそうなものだと思います。

エラー処理自体を人間の仕事としていくことそのものがむなしいよね、という感覚はあるのですが、それでもそれが仕事と思っていた人に取ってはAIから仕事を奪われるという解釈もあながち誤りではないのかもしれません。

 

間接部門への問い合わせ自動化

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 「業務標準化しなければ、属人的な業務は機械化できないですよね。それがすごく重要なので、われわれはまずBPRありきで話をしている。会社・組織として必要な業務をしっかり棚卸ししないと、今後のデジタルには対応できないと考えています」。

 労働生産性が上がらない理由のひとつに、社内の問い合わせ対応の多さがあり、間接部門では、業務の3~4割が問い合わせ対応だったという。

 また、業務が属人化していることには、別の弊害もある。「平均年齢が46歳で、かつ私のような35歳前後の人間が少ないんです。ナレッジが頭の中にだけある状態で、そういったベテランが10年20年後にいなくなってしまうと、会社にとって必要なナレッジがそのままなくなってしまうのです」。

 

平均年齢が46歳というのが興味深いです。最近、上場企業が45歳以上をリストラのねらいうちにしているのは有名な話ですが、このソリューションとしてもAIが活躍しだしている。

これまで、人間の世界では「引継ぎ」という行動で業務を継続させるのが一般的でした。今やAIが属人的なベテランの仕事を引き継ぐのであって、若い世代が属人的に仕事を引き継がないのだと言う事実をかみしめるべきと思います。

RPAのような表層的なオペレーションの自動化ではなく。その思考ロジックそのものを引き継ぐということです。

 

考察

「AIから仕事を奪われる」と嘆くのはダサい。この言葉が気持ちがいいのは、AIから仕事を奪われることを一見否定しているからだと思います。あとの小難しい理屈を聴かず、とりあえずこの言葉だけを取り入れれば安心感は生まれると思います。

しかし、その理屈自体が重要で、堀江氏は奪われるような仕事だけをまじめにやっていることがダサいと主張しています。いや、奪われるのではなく使う側に回ってAIが富を生むことを自動化してくれるのでそれを享受する側に立つ。そしてその富で人間しかできないことに取り組んでいこうよというメッセージこそが重要でしょう。

もともと、与えられた仕事は完璧にこなすというのがプロフェッショナル、言う建前が行動成長期を支えてきて、モーレツ社員だの24時間働けますかだの、日本が高度成長するエンジンであったのを知っています。

ところが、与えられた仕事自体がAIから奪われるのが顕在化した今、与えられたそれが、虚像かもしれない。どうせ取り上げられるなら今AIにできないような高次元の知識や活動を別でやっておかないと自分の未来は危うい。そう考えなければいけないということではないでしょうか。

いろんなことに興味を持ち、まだ誰も取り組んだことのないような分野で、仕事なのか遊びなのか区別がつかないようなかたちでAIに先んじて取り組んでいくことがこの先の世の中を生き抜いていく秘訣だと私は思います。

今回の3例のような例はどんどん今後出てくると思います。類似の業務はどんどんAIが侵食してくるでしょう。一方で、もっとAIが進化し、もっと違う使い方も出てくるかもしれない。AIと人間は競争の最中にいる。誰にでも当てはまることではないでしょうか。