orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

中小企業の利点

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中小企業が日本の生産性を下げている論

数日前に話題となった下記の記事、おぼえていらっしゃいますでしょうか。日本には中小企業が多すぎるので、生産性が向上しないというお話です。

 

toyokeizai.net

中には、企業規模を拡大できるにもかかわらず、優遇措置を受け続けたいということで、50人未満のラインを意図的に超えない中小企業まで現れてしまったのです。非効率な企業が爆発的に増え、なおかつ成長しないインセンティブまで与えてしまいました。
中小企業を応援して日本経済を元気にしようという精神からつくられた法律が、優遇に甘えられる「中小企業の壁」を築き、「他の先進国と比べて小さな企業で働く労働者の比率が多い」という非効率な産業構造を生み出してしまったという、なんとも皮肉な話なのです。

 

この話、私は全く賛成していないのですが、あまりにも賛成コメントが多いので慎重に反論したいと思ってしばらく寝かせていました。

中小企業の利点についてお話しします。

 

考察

特にITの仕事をしているせいか思うのは、最近は一人だから一人分の仕事をする。十人だから十人分の仕事をする、という常識が通用しなくなっていることです。

極論、一人分の時間で百人分の仕事ができるようになっています。これはもちろんITの世界で、かつ特定の分野に限られた話だとは思いますがそういう業種が生まれてきていることは事実です。目の前でそれが見えています。

いわゆる売上や利益と、スタッフの人数が釣り合わないのです。売上や利益に対して相応する人間の数がどんどん小さくなっている。

こうなりますと、いわゆる大企業を社員数で定義する場合、年々社員が不要になってきます。しかし大企業は社員を雇用し続けなければいけない。そうすると、どうしても人を養わなければいけないので、人間が複数絡むワークフローを作り出そうとします。そのワークフローが最適化されている間はいいのですが、だんだんと陳腐化します。もっと生産性の高い方法を取ればいいのに、「これがこの会社のやり方だから」ということで変えられない。それは変えてしまうと仕事が無くなるからです。防衛的に社員が既存の仕事にしがみつくようになる。これは大企業病とも呼ばれています。

日経 xTECHに興味深い記事がありました。

 

tech.nikkeibp.co.jp

「悪いニュースがある。残念ながら、あなたは多分失敗するだろう。我々のデータによればDXが失敗する確率は95%。他の資料で80%とか85%という数字も私は見たことがあるが、いずれにせよ失敗する確率は極めて高い。その理由はあなたが管理しなければならないものの複雑さにある。管理するものの数が増え、それぞれが関連し合い、そのどれもが変化しているからだ」

 中でも「日本企業はDXに少し出遅れている」とウェイド教授は警鐘を鳴らす。さらに別の調査では、ディスラプションに積極的に対応している企業は17.2%と、全世界の26.2%より9ポイント少ない。「デジタルディスラプションを脅威として認識していない。または適切に対応していない」という会社は過半数に上った。これは2015~2017年に世界で2049人、日本人33人の企業幹部への調査をベースにしている。 

 

この中に、なぜDXに失敗するのかの要因が書かれているのですが、いたって「大企業病」の性質をはらんでいると思います。

 

間違いその3.変革チームの立て付けを誤る

 

中小企業には「変革チーム」など存在しません。自分自身を変革するしかないからです。チームではなく会社全体でやるかやらないかになるので、中小企業は変革しやすいと言えます。大企業だと、全員が携わるわけにはいかないので、チーム立てをしなければいけません。

 

間違いその4.戦略と計画にフォーカスし、ビジョンとアジリティー(敏しょう性)をないがしろにする

 

中小企業においては、やるかやらないかですから、決めたら実行まで素早いです。大企業の会社に限ってPoCや中期計画作りをしてそこから稟議をして・・と古臭い行動様式が目につきます。

 

間違いその5.サイロの中での変革に終始する

 

大企業がサイロ化しやすいというのは、大企業で働いた経験がある方ならよくわかるのではないでしょうか。全員が集って話ができないのですから、会社全体が変革するのはかなりのトップダウンによるリーダーシップがないと難しいものです。

 

社会の変化スピードが速く、企業がどんどん変化していかなければいけない時代において、「人数が多くないと成り立たない産業」はそれだけでリスクを冒していると考えることがあります。たくさんの人たちを変化させていくということはなかなか骨の折れる話です。

もう一つ例を挙げます。シャープの再生の話です。

 

www.nikkan-gendai.com

 また、就任直後から社員に対して「狼性を持て」と呼びかけている。「狼性」とは狩猟に出た狼のような企業文化を指す。チャンスをうかがい、積極的にチャレンジする、鴻海の企業文化そのものだ。

 それまでのシャープ社員は、業績不振が長引くにつれ自信を失い、何事にも消極的になっていた。何をやってもうまくいくわけがないという「負け癖」がついてしまっていた。

 戴社長の「狼性を持て」との呼びかけは、その、負け組意識の払拭を狙ったものだった。

 一方、事業戦略としては「量の追求」をやめ「質の追求」に転換することで、収益力の向上を図った。

 以前なら、工場の稼働率を上げるために採算を度外視しかねないところがあった。戴社長は「大切なのは黒字を出すこと」と、極めて基本的なことを徹底した。

 

このお話、ちょっと時代を遡るともっとクリアになります。

 

realtime.wsj.com

5日に開かれたシャープの株主総会で新社長の高橋興三氏は、業績不振の根源は「おごり、高ぶり、チャレンジ精神の低下、顧客志向の欠如という大企業病」にあると述べた。そして、業容が拡大する中、己の姿を見失い、創業以来の経営理念も「いつしか忘れていた」と振り返り、「すべてを変えて」同社を再生させる覚悟だと語った。

「大企業病」は日本でかつて強大な力を持っていた巨大複合企業が、より小規模で機動的な競合先に追い抜かれていく理由としてしばしば使われる経営用語だ。症状としては例えば、頻繁な会議や、決定までに時間のかかる根回し、企業や顧客の利益よりも組織図の管理を重視する姿勢などがある。

 

日本に大企業が少ない、というのは実は素晴らしいことだと思っています。何しろ変化に強い。時代が大きく変わっても、網の目のように経営者がいて、自分の人生をかけて会社全体を変革するリーダーシップを取れる。

特に日本は災害の多い国ですから、ある日環境が大きく激変することに文化レベルで他の国よりも耐性があります。一つ一つの企業が小さいため、変化を要求されたときにすぐに対応できる賢さと強さがあります。

単に今の時代をスナップショット的に考えて、小さな企業を取りまとめ大企業化すれば生産性は上がります。しかし大きな変化が訪れた時にいわゆる大企業病が発生して対応できず、企業ごと継続できなくなった例が日本にはたくさんあるでしょう。特に日本は大企業病にかかりやすい国民性があると思います。同調圧力が強いことから、組織の政治や根回しに左右されやすいのです。

 

中小企業の多さを強みに変える思想こそ重要

法律ありきで中小企業が多いのではなく、国民性や国土の性質、文化などから中小企業が多いのだと私は思っています。私自身も中小企業におりますし、大企業で働きたいとは一度も思ったことはありません。

もちろん、人数をかけないといけない産業もありますし、既に大企業化していると思います。だからといって、小さい企業を取りまとめて大企業にするべきかというと私は反対します。

繰り返しますが、災害の多い国で変化に対する耐性のある日本人に、中小企業はプラットフォームとして最適だと思います。しかも、今後IT化によって一人でこなせる仕事の量がどんどん多くなり、単に人数だけを抱えると負担になってきます。それを中小企業が多いことで強みに変え、生産性の高い業種に複数の中小企業が小回りを活かして挑戦し、日本らしくどんどん変わっていき最適化することが重要であると考えます。