orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

解雇規制のないアメリカがいいのかどうかという議論 「アット・ウィル」の是非

f:id:orangeitems:20190617142636j:plain

 

Amazonが大量解雇、のニュース

強者Amazonに就職出来たら一生安泰、そんなことは全く言えない模様です。アメリカの話ですが。

 

gigazine.net

Kotakuが実際に解雇された従業員から聞いた話によると、世界最大のゲーム展示会「E3 2019」の最終日となる2019年6月13日に、Amazon Game Studiosの人員整理がひっそりと行われたそうです。解雇を通知された従業員にはAmazon内で新しい仕事を見つけるために60日の猶予が与えられ、もし猶予期間中に再雇用されなければ退職扱いとなるとのこと。また、未発表のゲームプロジェクトも開発途中で中止されたとKotakuは報じています。

 

猶予期間(60日間)で次の仕事を見つけるのは自分の責任なんでしょうね。他部署でおそらく面接を受けて、採用となれば異動できる。どこにも採られなければ解雇。

日本では考えられないのですが、アメリカでは日常。この厳しさがあってこそのGAFAの一角だと思うのですがいかがでしょうか。解雇規制に縛られた日本企業が同じ土俵で戦っていけるのでしょうか。日本では、企業が正社員として雇ったのであれば、そのキャリアパスも企業の責任であり、企業の方針が変わったら再教育するまでが責任、そう言われていますよね。

 

アメリカの解雇規制

アメリカでは、「アット・ウィル」という原則があります。

 

www.919usa.com

アメリカでは大抵の企業がアットウィル雇用を取り入れています。このアットウィル雇用については、会社の従業員ハンドブックに明記がされていることが多いので現在仕事をされている方は一度確認してみるとよいでしょう。アットウィル雇用とは、雇用主はいつでも理由なしで解雇することができます。同じく、従業員も理由なしでいつでも仕事を辞めることができるというものです。ただし、雇用主は差別等で解雇することは法律で禁止されていますので、必要であれば不当な理由で解雇をしていないということを証明しなければいけません。転職を考えた場合、アメリカではこの雇用契約があるため辞職は比較的スムーズに進むケースがほとんどです。

 

基本的人権を尊重している前提で、ビジネス上の理由によりいつでも解雇できる。もちろん労働者も同様、いつでも退職できる。そんな制度が根付いている国がアメリカです。今回のAmazonの例では、60日間の猶予期間がある分まだソフトだということになりますね。

 

考察

同じビジネスが長期にわたって安定するのであれば、日本の解雇規制は機能すると思います。長年磨かれた職人技が社内に浸透し、若手にそれを授ける。こんな世界が機能したのが戦後の世界だったと思われます。

今の時代は、同じビジネスが1年続くかどうかも闇です。今AI(人工知能)がホットですが、本当にこのままビジネス自体が拡大するのかは誰にもわかりません。今回もAmazonはゲームビジネスをやろうとしたけれども、うまくいかない判断を行ったわけですがこれにかかった時間も数年の話です。

新卒採用して、その人材にまずゲームをやらせて、うまくいかなかったからやめて、じゃあ人工知能やらせて・・、これだと経営的には非常に非効率だということになります。

ゲームビジネスをやりたいなら、社外からゲーム開発スキルのある人を雇用し、ビジネスをあきらめるなら今回のように解雇(他のビジネススキルがある場合で現場が受け入れ可能なときのみ社内転職)。次に違うビジネスを始めて・・。そんな企業運営ができるのがアメリカという国なのですね。

労働者側も、Amazonがゲーム開発スキルが不要というなら、他のゲーム開発会社にアプローチしてすぐ転職。

このように労働者と企業が流動的に動くから、アメリカ経済の強さはあるのだと思います。

かたや日本では、企業がビジネスを変えるたびに正社員がスキルチェンジを強いられます。日本の大企業では一定期間ごとに異動のある会社も多く、ジェネラリストを求められると言えます。企業はいろんなことにチャレンジするようになったので、社員はいろんなことに対応できるようになりなさい、と。で、これではスペシャリストは育たないのでどうするかというと、スペシャリストの会社にアウトソースするわけです。日本で特にアウトソーシングが根付いているのはこういった事情があると思います。SIerはアメリカでは見当たらないぞと。では日本で内製でスペシャリストを作ろうとしてもうまくいかないわけです。スペシャリストを作っている間に、ビジネスが違うものに変容してしまうのです。結局アメリカがスペシャリストを内製しているわけではなく、必要なスペシャリストを都度雇用して、不要なスペシャリストを放出しているだけにすぎないということですね。

一方で、アウトソースされる側も、アウトソースの需要は波があるため、この辺りを非正規労働や、フリーランス、下請の協力会社等に頼り、成り立っているという絵になっています。

アメリカと日本、どちらがいいかということではなく、もともとの労働文化が完全に違うことでこういった差が出てきているということは理解すべきだと思います。

 

結論

ビジネスのライフサイクルが早まっている。下記のエントリーで書いたばかりでした。

 

www.orangeitems.com

 

解雇規制が強く、事実上解雇が難しい日本にとっては、労働者はカメレオンのようにスキルをぐるぐる変えないと諸外国とは戦えないのではないでしょうか。

また、正規と非正規のあいだの格差も問題視されていますし、ある程度流動性を高めるような施策は必要かと思います。

アメリカが良い、日本が良い、ではなく、最善策を追い求めていくべきかと思います。もし企業自体がビジネスの変化に変容できないのであれば、企業ごと倒れるだけ、です。