雇用危機
ステイホームの状況下で報道される内容というのは、以前よりも網羅性を欠くと思って情報を見聞きしていますが、それでも伝えられる内容というのは実態がとてもひどいということを示していると思って判断しています。
雇用の件です。
オンライン化が進んだためにこれまで何となく用意されてきたポストが実はいらないのではという議論になった。売上激減のため人件費削減をしなければいけない。かなりの仕事が削減されるきっかけが、ここ数か月で生まれたのではないかと類推しています。
非正規雇用も、明日から来ないで、みたいなことはできず月単位、四半期単位、半年単位、年単位のような契約切れを狙って雇い止めが発生します。そう考えると表面化するのはこれからではないかとも思います。
また、海外は正規・非正規に関わらず解雇が容易なため、むしろ人員削減の話が出始めるでしょう。
現状を情報収集します。
雇い止め
朝日新聞(2020/5/22)
加藤勝信厚生労働相は22日の閣議後会見で、新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止めをされたり、その見通しがあったりする働き手が、21日時点で1万835人になったと明らかにした。2月4日の集計開始以降、初めて1万人を超えた。主に各地の労働局で把握できた情報を厚労省が集計したもので、実際はさらに多いとみられる。
北國新聞(2020/5/22)
石川県内で新型コロナウイルスの感染拡大に関連して仕事を解雇された、または解雇される見通しとなった人は、19日時点で10事業所の154人に上ることが21日、石川労働局への取材で分かった。企業の休業や倒産が原因だという。
業種の内訳は、宿泊業・飲食サービス業が4事業所68人、卸売・小売業が3事業所31人、情報通信業が1事業所46人、不動産業が1事業所6人、製造業が1事業所3人となっている。外出自粛が続いたことに伴い、観光関連産業や卸売・小売業に影響が目立った。
朝日新聞(2020/5/17)
コロナショックで派遣社員が大量に雇い止めされる「5月危機」が迫っている。6月末で契約が満了する人が多く、1カ月前の5月末に更新のタイミングが集中するためだ。すでに雇い止めされた人もいて「派遣切り」が横行するが、国は詳細を把握していない。
東京新聞(2020/5/17)
コロナ禍の収束が見えない中、派遣社員が窮地に陥っている。リーマン・ショック後の非正規切りの嵐は不安定雇用の増大が招く惨状を可視化したが、今回も繰り返されるのか。仕事を失った派遣社員二人が取材に応じ、雇用政策や給付金の貧弱さを訴える中、全く同じ言葉を発した。「何のための税金なのか」と。 (宇佐見昭彦)
読売新聞(2020/5/12)
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、解雇や雇い止めの対象となった労働者が11日時点で5500人(見込みを含む)に上ることが12日、厚生労働省の調べで分かった。4月7日に緊急事態宣言が発令された時点の1677人から、約1か月で3倍以上に増加した。
厚労省が全国のハローワークを通じて集計した。業種別では、ホテルや旅館といった宿泊業や観光バスなどの旅客運送業、飲食業、製造業が多い。外国人観光客の減少に加え、緊急事態宣言を受けた外出自粛や休業要請が影響しているとみられる。
人員削減
日本国内で「人員削減」という言葉はあまり使われません。先に非正規雇用を雇い止めすることで調整弁として利用するからです。
一方で海外は日本より解雇がたやすいため、すでに人員削減ブームが起こっています。
bloomberg(2020/5/22)
米IBMは全米で人員削減を実施した。具体的な人数は明らかにしなかったが、削減は広範囲に及んだもようだ。
同社広報担当のエド・バービニ氏は21日の発表文で「競争が非常に激しい分野にあるIBMの事業には、高付加価値なスキルを絶えず拡充する柔軟性が求められる。われわれは常に現状を考慮するが、人員に関するIBMの決定は当社事業の長期的健全性のためにある」と説明。
bloomberg(2020/5/22)
日産自動車が、欧州や新興国を中心に世界で2万人を超える人員削減を視野に入れていると、共同通信が22日報じた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要減少で経営が厳しくなっており、国内拠点の再編も検討するという。
Forbes(2020/5/22)
故スティーブ・ジョブズの未亡人のローレン・パウエル・ジョブズは、メディア企業「The Atlantic」の過半数株式を保有している。彼女の保有資産は現在195億ドル(約2兆円)に達しており、今年3月以降に31億ドル分の資産を増加させたが、The Atlanticは先日、社員の20%をレイオフすると宣言した。
traicy(2020/5/22)
フィンエアーは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う運航便数の減少に伴い、一時的な人員削減に向けた協議を開始する。
東洋経済新聞社(2020/5/19)
英航空機エンジンメーカーのロールス・ロイス<RR.L>は20日、全世界の従業員5万2000人のうち少なくとも9000人を削減する方針を明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた航空業界の大幅な市場縮小に対応するためで、工場の閉鎖も検討している。
cnet japan(2020/5/19)
配車サービスなどの事業を展開するUberは米国時間5月18日、3000人以上の従業員を解雇し、世界各地にある約45のオフィスを閉鎖または統合することを明らかにした。同社は2週間弱前に約3700の従業員を解雇したばかりだが、新たな人員整理により同社の従業員数は25%減少することになる。同社のリストラは、新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲って以降、シリコンバレー企業による最大規模の人員削減の1つとなる。
bloomberg(2020/5/18)
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国の航空会社エミレーツ航空を傘下に持つエミレーツ・グループは、約3万人の削減を検討している。実現すれば、新型コロナウイルスの感染拡大で休止状態に追い込まれている世界の航空業界で過去最大規模の人員削減となる。
エミレーツは3月時点で10万5000人だった従業員を最大30%削減する可能性があると事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同社は数年続くと見込まれる旅行低迷に対応するためコスト削減と事業再編を進めているという。
考察
日本国内では、非正規雇用の雇い止めの大量発生が先にきます。かなりの契約が6月末で切れると考えられ、それ以降契約しない、つまり雇い止めの通知が来週大量に発生するのではないかと危惧しています。
一方で、海外においては人員削減が表面化し始めたのはここ1週間くらいのようです。始まりは直撃している航空業界や自動車業界中心ですが、だんだんと周辺の業界や全く関係ない業界にも波及し始めていると思います。
この景気減退は一時的なものではなく、少なくとも数年は影響が残ることを考えると、企業が生き残るためには体質改善をしなければいけない。そう考える経営者は多いと考えられ、そのためには新しい状況に応じた人員配置、そしてコスト削減を踏まえた人員削減となるのは、かなり自然なロジックだと言えます。
テレワークだステイホームだと変化を楽しむ雰囲気は表面的なもので、経済は新しい状況に変化していくことが必然で、それに伴う企業の行動は実はまだ計画段階です。いよいよ実行に移していく時期に入ってきたのは間違いなく、それが週明け、そして6月を迎えいよいよ表面化していくことが必至だということを主張しておきたいと思います。