orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

転職とセルフエスティーム(自己肯定感)の関係

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私はブログで何度か触れましたが心理学科専攻でして、大学で臨床心理やカウンセリングを学んだ経験があります。なのに経済的な問題もあって大学院には行かず、しかも就職氷河期の中でSES中心のIT企業に飛び込んだ、という経歴です。

コンピュータ中心の仕事ですから、人間関係のわずらわしさがない、なんていうのは大ウソです。私が新入社員のころはプロジェクトマネジメントという言葉すらなく、とにかく案件を受注しては火を噴いていた、という時代でした。今と比べると原始時代のようなもので、とにかく時間とマンパワーをかけて解決しようとしていました。でもそのころの先輩たちは、「昔は会社に一か月泊まって追い込みしてたこともあったから、今の子たちは恵まれてるよな」なんて今の時代ではパワハラ的な武勇伝を聞かせてくれていました。

さて、IT業界において長いこと問題になっていたのが、メンタルヘルスの問題です。長時間労働の温床のような業界だったので、気を病む人が多かった。プロジェクトマネジメントのない時代は問題が膨れ上がることが多く、人間関係も殺伐とし、ストレスの非常に高い職場でした。

コンピュータの仕事で、人間の心理とは関係のない畑に来たつもりなのに、仕事の中で人間の心理の大切さについて学ぶ研修をたくさん受けることになりました。これはメンタルヘルスが不調になることによる業界の不利益が大きかったことの裏返しかと思います。

私がこの業界に残れた理由の一つとして、このメンタルヘルスに関する理解が挙げられるのかもしれません。人の心の機微を無視して効率ばかり追求したり、無理をさせたりすることの不利益は、他人にとっても自分にとっても有害だからです。

 

さて、その得てきた知識のなかで「セルフ・エスティーム」という概念があります。

 

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自己肯定感とは心理学における“セルフ・エスティーム”という言葉の日本語訳ですが、他にも自尊心や自己評価などいくつかの言葉と混同されて、だいたい同じ意味で使われています。心理学では“自分に対する評価感情”と定義されていて、“自分の存在を自分自身で価値ある人間だと考えられている状態”を指します。

 

詳しくはこの記事をご参照頂きたいのですが、この自己肯定感、IT業界に多い常駐型の働き方だとなかなか高まらない、ということを私自身が経験しています。

私が新人から十数年所属した会社はSES契約で他社に常駐するスタイルが9割。社員数とオフィスの広さが全然見合いません。ほとんどが外に出払っているのでそれで会社はまわっていました。私もその一人でほとんどの時間をクライアントの会社で過ごしました。

逆にクライアントの会社には自分の席があったし、電話もクライアントの会社を名乗って出ていたので、もはや自分がどの会社に所属しているか、という意識がないまま時間を過ごしました。

このような状況だと、どうしてもクライアントのオフィスの中で「よそもの」として扱われるケースが多かったです。オフィスの社内食堂に入れなかったり、入れたとしても社員価格とそれ以外で差別があったり。クライアントの社員が予防注射や面談など福利厚生を受けているのを見ていたり。

どんなに頑張っても、成績を出しても、クライアントには褒められるけれど自社には届かず。またクライアントの現場でいくら評価が良くても、実際の契約はクライアントの管理職と自社の営業の間であり、間接的にしか評価されない。

この辺りに、他社常駐モデルのゆがみがあって、自分の評価をしてくれる人が自分のまわりにいない、ということが起こりえます。

ひどい会社だと、技術者をモノのように扱っており、現場をたらいまわしにします。値段を付け売るので、値段の高いベテランが売れにくいといって邪見にし、若い給料の安いメンバーを優遇します。

私はそういうのが嫌になってSESから足を洗いましたが、全部の会社がそうだとは言いません。逆に若い時はSESの恩恵を受けた気がします。

こういった環境にいると、セルフエスティーム、自己肯定感ってなかなか育たないんですね。ですから、自分は転職しても高く評価されないんじゃないか、という恐怖を持ちがちになると思います。低すぎると、会社にしがみつかないといけない。外では絶対に成功しない、だから転職できない、と思い込んでしまう。

しかし全くそんなことは言いきれなくて、SESの仕事の中でしっかり技術を身に着ける人だってたくさんいます。だから、私はSESで待遇に不満を持った人は、転職できる準備や活動をぜひ行い、元請SIer、内製でSaaSやパッケージを展開している企業、ユーザー系の情シスなど、自分の企業で仕事できる場所に移るチャレンジをしてほしいと思っています。

もしくは、フリーランスとして、営業部分も含めて独立しちゃうという選択肢もあると思います。一方でこちらは責任も大きく増えますので考慮は十分にする必要はあるかと思います。

 

ちなみに、大企業にずっといると、会社のブランドが自分の実力だと勘違いしてしまい、セルフエスティームが客観的実力よりも高すぎてしまうことが起こりえます。転職活動してみたら、あまりにも評価が低かった!、なんてこともあります。

高すぎるのも低すぎるのもよくない、という話です。