orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

やる気と売上の関係性

 

売上が伸び悩んだのは、社員のやる気が下がったから。

そんな記事を見たのだけど、やる気の上下でそんなに結果がすぐ変わるものだろうか。現場ではやる気とは言わずにモチベーションと言う言葉を使うが、それより、どんなビジネスを行っているか、そのビジネスをどのようにオペレーションするか、の方がよっぽど売上と関係していると思う。

例に挙げて申し訳ないが例えば、新聞配達業を営んでいるとして、この先どんなに頑張ったところで売上が右肩上がりとは行かない。一般的な予測として紙での新聞は廃れていくことがわかっていて、モチベーションを極限まで高めたとて、結果は知れている。きっと新聞配達業の社長は、これまで貯めた資産を使って新しいビジネスの創出に余念がないだろう。

モチベーションが下がることで最も生まれる懸念はまずは離職率の向上だ。人の入れ替わりが頻繁になることによって一人当たりの生産性が下がる。ただ、あまり人に依存しないような仕事の仕方をしていればそれでも現場はまわる。機械やシステムによる自動化を推し進めている場合などだ。ただ、そんな人を使い捨てにするようなことをしているといつか、中途採用を誰も取れなくなる。結果給料を上げざるを得ず、利益を圧迫する要因とはなる。問題は売上の減少にではなく、業務継続性の低下の方が心配となる。

二点目の懸念は、モラルハザードだ。関わっている仕事に愛着が無くなり、ただしやらなければいけないこと、ノルマはどの仕事にもあるので、手段を選ばなくなる。某中古自動車会社も似たような状態だったのだろう。前段で給料を上げる、と書いたが、モチベーションの維持にお金を使うと、社員は手段を選ばなくなる。仕事をして価値を生み出そうとするのではなく、お金を生み出そうとしてしまう。そのお金がどんなお金でも。モラルハザードの追求は、確実な破綻を引き起こす。これは間違いない。歴史上、どんなに表面上成長した会社でも、瓦解したケースはたくさんある。

三点目まで挙げておく。社員同士がコミュニケーションを取らなくなっていく。社員たちが仕事に対して愛着を持てないものだから、最低限のやりとりしかしなくなる。何か問題が起こっても皆対応を自分以外の人に投げがちになり、解決に余計なコストを払うことになる。マネージャーが毎回仲裁した挙句「解決するためのルール」のようなものを作らなくてはいけなくなる。うまくいっていない関係ほど、細かいルールが必要になる。ビジネスをオペレーションする際の問題解決能力が低いので、成長する際に足を取られる。「新しいことやりたくないっすよ」という雰囲気が蔓延する。

今回挙げた3つ以外にも、モチベーションが低いことの代償は様々あるが、いいことは何もない。ただ経営者は利益の追求に対して、社員のご機嫌伺いまでしなければいけないのは結構辛いし、それが延々と続くことを考えると、AIに異常に社会が期待していることも良くわかる。AIはモチベーションを持たない前提だし、退職することもないので投資していくばくかの結果が達成できるだけでも意義は大きい。

人材不足を盾にしつつ、人材獲得にお金をかけるのではなく、AIの取得にお金をかける。まあ、正直言ってめちゃくちゃ正しい。ただ、本当にAIが人間の仕事を代替してくれるのかという点。この検証はこれからになろう。また、将来のビジネス環境の変化にAIが対応してくれるか。早期退職や希望退職の話のように、人間の柔軟性が期待ほどないので入れ替えた方がましと言う話の裏返しで、AIだって捨てなきゃいけなくなる。そのコストがどの程度かかるのかもよくわかっていない。

このような背景がある中で、やる気は売上と関係がある、というのはいろんなことを省略し過ぎて解像度が低すぎると思う。そりゃ関係があると言えば何でも関係があるわけである。それより何と何が隣接の関係にあり、それらがまた別のことに関係し、という全体の関係を精密に読み取り、一つ一つ対処していかなければいけないので、あんまり単純化して考えるのもどうかな、と思う。モチベーションだけを上げても何も解決しないことも真実だ。