社員のモチベーションを上げれば、業績は上がる。
今まさに目の前でそういう姿を見ている。特に若手はそうなのかもしれない。モチベーションが上がると、成長度合いも比例して上がる。結果、実績は上がっていく。
しかし、モチベーションを上げるというのは言葉で言うほど簡単じゃない。
明るい人物ならモチベーションが高いかというと、全然関係ない。明るかろうが暗かろうがモチベーションなるパラメーターが人には内在している。
給与を上げればモチベーションが上がるかというと、上がる一つの要因ではあるが、それだけでは上がらない。例えば高給取りであれば永遠にモチベーションが高いか。そんなことはないだろう。つまらないという感情はお金では消せない。
最近、モチベーションが上がったように見える若手たち。何があったんだっけと思い出す。
うーん、この前飲み会があった。
飲み会一つでモチベーションが変わるなら、仕事って何だろうと思う。仕事の環境やワークフロー、業務のアサインやスケジューリングなどを工夫しても、飲み会一発でブーストするってのは、なんだかとても人間的で、そして不条理な気もする。
しかも、そんなに飲み会で深い話をしたわけでもないのにね。ただただ世間話をしただけだけど、人によってはものすごく価値のある時間になるようだ。
でも飲み会でモチベーションが上がるのなら、そんな簡単な話はないよな。
そうだ、もう一つ。若手に、これからどうするか、ということを考えさせたこと。
直接私と課題を考えると、私が議論を先回りして正しい答えを導いてしまうので、問いかけだけをして二週間ほど待つことにした。
彼らは聴くところによると、色々と自分たちで時間をかけて議論したそうだ。
そして、いきなり私がその議論の結果を聞かずに、私とは別のマネージャーにヒアリングしてもらった。そしてそのマネージャーから、私は色々と若手の思ったことや結論を聴くことにした。
そこまでやった後に、若手の意見を打ち合わせの場を作って聴いたんだけど、事前にマネージャーから聴いているということもあってスムーズに受容できた。その上できっと彼らが私には直接言えないようなことについては、マネージャーと協力して、無難に話題に出し、関係者全員で消化することができた。
この話はすごくまどろっこしいプロセスになっている。
・時間をかけて
・議論を若手だけでさせて
・議論の結果を、私に直接伝えず、一度マネージャーに吸い上げて
・マネージャーからまず私に伝え
・最終的にみんなで集まって、合意形成する
めんどい。
だけど、ここまで慎重なプロセスにした結果、若手は自分たちなりに議論した結果を、誤解なく私に伝えることができたし、私も理解して、彼らの希望を受け入れることを宣言した。
これで何が起こるかというと若手は「発言することで、未来を変えることができた」という経験を得たということだ。
単に、仕事が簡単か、難しいか、ということじゃない。
出社して、目の前にビジネスがあって、自分が何か発想し行動したら、未来が変わるかもしれないという手応えをつかめるかどうか、だ。
会社に言っても、決まり決まった仕事が合って、それをやることが求められ、そしてそこから逸脱すると怒られる。こんな現場にいるとモチベーションなど日に日に消失してしまうのである。
自分がいて、自分の発想があり、自分の行動が起こり、そして世界が少し、変わっていく実感を自分が持てることこそが、モチベーションの源なのだと思う。
とかくモチベーションとは、給与や環境、人間関係がクローズアップされるが、もっと高次なものであると認識したほうが良い。自分が、自分の行動で目の前の世界を変えられるかどうか。影響させることができるかどうか。
特にマイクロマネジメントをやりがちな人は、今回指摘した点を大事にしてほしい。過保護は、部下に無力感を与える。私なんていなくてもいいんじゃないか、とまで考える。それではモチベーションは上がらない。言ったことしかやってくれないのも当然だ。
仕事を任せるというのは、手順を準備してこの通りやれではないのである。
彼らに世界を変えられる実感を持たせることが、モチベーションを上げるためには最も重要だ。