この世の中「人が足りない」と言う表現は解像度が低いと思う。
「優秀な人材が足りない」と言うべきだ。優秀な人材は、指示をすればやってくれるだけではなく、やるべきことの理由を理解しようとする。その上で次を予想し、対策し、指示をする人の目的を強く後押ししてくれる。
教育して、なんとか指示通りできる、だけなら未経験である程度のポテンシャルを持つ人ならまだ確保できると感じている。ところが、現場に入りました。はいすぐ仕事できます、ぐらいの人材は少なく、出会えた時の感動と言ったらない。それぐらい「優秀な人材が足りない」のだ。
もし、身内に優秀な人材がいるならば、半永久的に残ってもらえるように工夫をしなければいけない。そうしないと他の会社などに奪われる。奪われたらまたどこかから調達すればいい・・なんて考え、甘いも甘い。今はどの会社も、優秀な人材を獲得する努力と同じくらい、優秀な人材を手放さない努力をしている。だからこそ、なかなか市中から優秀な人材を獲得するのが難しくなっている。
さて、それなら、どうすれば優秀な人材が離脱しないのか。辞めないのか。考察してみる。
賃金
高い報酬を与え続けることで、「辞めようかな」と思う契機は減るだろう。ただ、どんなに高い報酬を設定したところで、上を行く会社はある。単に金額だけの戦いなら、おそらくほとんどの会社が分が悪い。また、社内基準もあり、突飛な報酬を設定するのは難しいし、現場のマネージャーは給与面まで会社に口を出せないケースも多い。
高い評価はするにせよ、限界のある武器である。
良好な人間関係
これは、とっっても大事。
優秀な方の周りに、足を引っ張る人がいないこと。
上司の指示が悪くて、本人がストレスを抱えてパフォーマンスを出せなくなったら一大事。もしくは、部下にとんでもない仕事ができない人物がいて、日々困っていたらこれも黄信号。
優秀な人も、人間関係を良好に築けるとは限らず、マネージャーが人員配置や席の場所など、いろいろと気を遣ってあげると効果が大きい。
仕事が優秀でも人間関係が上手だとは限らない。
本人が、会社に来て、嫌な思いをするような要素を細かく見て、先に潰してやるくらいのフォローアップを継続的にすると、「ああこの会社、居心地いいな」となる。
環境づくりは本人に丸投げ、ではなく、会社側(マネージャーなど)がホスピタリティーを持って、あれこれ動いてあげる姿勢は、本人の会社の印象をぐっと良くする。
ほどよく挑戦的な業務
絶対にできることだけを日々続けていたら、成長しないなと感じる。給料はいいんだけど、自分が成長しないままこの会社で日々を過ごすのはどうなんだろうか。それより、難易度の高いことをする企業に転職した方がいいのでは・・。
そんなことを思わせないために、挑戦的な業務をアサインしないといけない。
ただ、挑戦的過ぎると、「自分にはできない、荷が重い」とかえって悩みを抱える。失敗してしまったら、自信を失い元も子もない。だから、ほどよさが必要だ。少し難しいことを成功すると、成功体験を感じる。成功体験を日々感じられるかどうかが、定着のポイントとなる。
自主性の尊重
優秀な人材であれば、自分のタスクは自分でもちろん管理できる。
何か仕事が発生したら、自分で考え、プロセスまで自分で組み立て完了させようとする。
この一連の仕事について、あれこれ細かく口を出すと、優秀な人材ほどモチベーションを下げる。
自主的に考えてそれを実行し、完了させることが最も仕事のやりがいにつながる。
マイクロマネジメントは、優秀な人材には最もやってはいけないことだ。お任せして信頼する。そして成功する。これを積み重ねることで、優秀な人材は自分の優秀さを感じることができ、楽しくなる。この会社でやっていきたい、と思うようになる。
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つまり、優秀な人材を囲い込むためには、賃金だけではなく、多方面で職場に定着するような努力をしなければいけない。どれか欠けても、流出する要因となる。
そのためには、マネージャーの気配りがとても必要で、上段に構えた管理ではなく、きめ細かい気配りの方が重要となる。
優秀な人材の獲得競争の裏で、優秀な人材を流出させない囲い込みを今どの企業でも熱心に取り組んでいる。あなたの現場でも、負けないように強化して頂きたい。
代わりを補充するのは至難の業なのだから。