orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

苦情は目に見えない間に処理され、平和が保たれている

 

オフィスで、自分の業務上の話をよく電話でやる人がいて、出社するたびに「うるさいな」って思うことがあった。仕切りもないのでオフィス全体に声が響く。ほぼ毎日だし一回数十分にも及ぶので、ええ加減にしいや、とも思うが、なにぶん部署が違うので声をかけようにない。

コロナ禍も落ち着きオフィス回帰する中で、静かな在宅で働くことに慣れた人たちが戸惑うのがそういう騒音問題だと思う。不思議とそういう音をたてるのに無頓着な人がいて、明らかに仕事の集中力を削ぐよね、という感想をずっと持っていた。

防衛策としては、ワイヤレスイヤホンをして仕事をする。ただもはや一切の音も入ってこないので、そもそもこれってオフィスで仕事する意味ある?となる。ある程度の会話などは本当は聞こえたほうがいい。様々な部署がいろんな仕事をしていることを耳に入れておくのは、自分の仕事にいい影響も与える。また、部下の仕事の様子も耳から聞こえてきたら何かとためになる。

ある日、その「うるさいな」の元凶だった電話の声が聞こえなくなった。快適である。うれしい。そうなんだが、なぜ消えたのか。当の本人は意気揚々と電話して「オラ、仕事してっぞ!」と周りに知らせる機能もあったのではないか。

とりあえずコーヒーでも飲もうと、休憩所に行ったら、彼が電話をしていた。よくわからないが声は抑え気味だ。

そうか、明らかに周りの人間から苦情が出て、彼に圧力がかかって自席での電話を控えるように指導が入ったんだな、と思った。ありゃあうるさいもんな。隣の人とかめちゃくちゃ悩んでたろう。

ここまで、全部推測である。本当かどうかはわからないが、電話の声がオフィスに響き渡ることはなくなった。

会社で働くにしろ、組織の中にいると思うのは、苦情は見えないところで明らかに生まれ、伝達され、そして見えない場所で本人に伝えられ、そして強制されるということだ。

どれだけ組織のコミュニケーションで、見えないコミュニケーションルートが構築されていて、そして機能しているのだろう。また、実際のところ強い力を持っているんだな、と思う。

オフィスを見渡して、今日も平和そうだ。明るい会話が交わされている。でも耳を澄ますと、何か短調というか、怒りやイライラを含んだ会話も聞こえなくもない。

おそらく、みんな何かを我慢している。我慢しているが、我慢の限界となったときに、表に向かって「ふざけんじゃねえよ」と言わないのが大人の世界だ。そんなセリフを放ったら放ったほうが負けてしまう。

そこで、コミュニケーションの裏ルートを使って、本人に調整の圧力が伝えられるが、それでも意に介しないとき、突然本人が左遷されるなんてことも、よくある話なんだろう。本人は何の異動なのかもよくわからないまま・・。

もしくは裏ルートの力が企業内で弱く、それに絶望したスタッフが、本音も言わず静かに退職していく・・ということもこれもよくある話だ。

そう考えると、組織、管理職、マネージャー、リーダー、いろいろな役割がいるが、彼らのパブリックネットワークと、プライベートネットワーク、かなり構成図が異なっている思ったほうがいい。世の中、簡単じゃない。中途採用で転職した人は、まずは黙って職場を知ることに注力したほうがいいのはそのせいだ。

裏のコミュニケーションルートがないほうがいい、なんて理想論も、実は残酷なのかもしれない。不満があったら表で殴り合え、そんな秩序を作ってしまったら、オフィスは日々、拳闘が繰り広げられてしまうのだろうからね。

社会って、大変よね。