特定の事業領域があって、その分野を若手の頃からやり遂げて、そしてその専門家となる。皆が認めてる。これがベテラン社員の理想的な姿だと思う。
定年までの時間も、これまでの社会人としての年数から考えると短いものだ。であってもあと十年以上ある。どう捉えるか。逃げ切りは確定しているようなもので何も工夫しなくたって、リスクもほぼ無く守りの姿勢で生きていける。新しいことが降って来たってどうせ小手先の技術革新がほとんどなんだから、ちょろちょろっと勉強すれば、モダンなことも語れる。
この境地に立った時に、これで安心だ、と心の底から思う人もたくさんいるだろうけど、私はそう思わないし、思えなかったのが事実だ。
特に強調したいのは、退屈だ、ということだ。
そしてこの退屈な仕組みに、ぶらさがっている他人もたくさんおり、今後も堅持しなければいけない仕事ではある。価値のあるものだ。
しかしその門番だけをいつまでも務めるのは、いささか長すぎる。長すぎた先には何が待っているのだろうか。そう考えると、冒険が足りない。
では脱サラや転職をしてリスクをがっつり負ってみる、という選択も世の中を見るとあるが、それをやるメリットよりデメリットの方が大きすぎて、そして今まで作って来たものを守る責任を放棄できるほどの環境も整っていない。準備が足りない。
いろいろと足りないことだらけなのに、これで安心だ、はないなと思うのだ。
いい感じの冒険が必要で、そして今を守る少しだけの徒労もいかんせん必要だ。
そう考えた時にやるべきは、今と全く違う観点でのビジネスを編み出してみること。
この新しいビジネスについては、あまりリスクを負わず、失敗ならすぐ止められるスモールスタートが望ましい。それでも、何かサービスを作り出して、誰かから1円でも頂くこということは、かなり素晴らしいことだ。そこからすべてが始まっているのだから。
ふと、今日、この境地にたどり着いてしまったんだな、という感覚をおぼえた。きっと動き出さないと、最後まで門番を果たし続け、そこから去る自分が見えた。
それって、楽しいかな?、と。楽しくはないよな。
もう1個やるための時間はまだ十分にある。何個か失敗するのかもしれないけど、何もやらないで、イスに座って有り余る時間を過ごすよりはいいだろう。
門番だって大事な仕事だしそれで生きていくのは確約されているから、逃げ切ったのだけど、まだまだ直線は続いている。
せっかく手に入れた時間だから、もっと使えるし、いろんな可能性を考えていく。
後ろに立派なお城を作り上げたことそのものはそれはそれで素晴らしい事だし、これを維持することも忘れてはいけない。若手がお城をゆくゆくは引き継ぐこともアリだろう。そのためにも尽力もしよう。
何せお城があるのだから、門番だけでも認められているんだから、小さな失敗をしても門番に戻ればいいだけだ。
もしかしたら、もしかしたら今のお城よりも大きなお城が立つかもしれない第一歩を、踏み出してみよう。それが、逃げ切り後に必要なビジョンなんじゃないか。
・・と、思ったことを言葉にしておこうと思う。