orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

現場に人を受け入れる前に知っておくべき重要なただ一つの観点とは

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ちょっと昔の話ですが、すし職人を育てるときに、昔ながらの教育方法、つまり庭掃除から始めてシャリを触るのに3年かかる。それまでひたすら大将や先輩の姿を見てひたすら学ぶ。それが時代遅れで、専門学校に行って半年で寿司握れます。どっちが教育方法として正しいかみたいな話がありましたよね。

私自身は、実際前者にて教育を受けました。周りの人の仕事を見て学んだ記憶がありつつ、必要なことを書籍などで自習しながら実力をつけていきました。大昔は未経験でIT業界に飛び込む人も圧倒的に多かったのですが、とにかく見ておぼえるという学習スタイルがごくごく当たり前でした。

時代は変わっていて、大手企業が新人研修資料を公開するなど、教育カリキュラムが整っていることで優秀な人材を呼び込もうとしていますよね。でも個人的には自分の経験から、やっぱり背中で仕事は教えるものだろう、と言う発想が抜けませんでした。

その考え方が最近変わってきました。

自分一人でビジネスを立ち上げ、自分がとにかく動き、そこから周りに人を集めて仲間を増やしていく。こういうときには教育プランなど元からないので、とにかく自分が手本を示し周りに指導するという、伝統的なすし職人の育成スタイルがぴったり合うと思っています。いわゆる0を1にするときの方法論です。自分が中心で、そして理解者を増やす。これは自分と周りの理解者の距離が近いからできることです。

ところが、この少人数グループをもっと増やしていく必要があるとします。その場合、中心の自分が新しく来た人に指導すると人数の増加に従っていずれ自分がパンクしてしまいます。自分の時間がなくなるからです。では周りの理解者である初期メンバーに教育を担当してもらうか。しかし、自分じゃない人が担当すると、自分の思いとは違う方向に教育が向かってしまう場合があります。違う人間なので、よほど気持ちのすり合わせをしておかないと、自分の期待する教育が施されるかコントロールするのは至難の業です。これは0から1ではなく、1を10にするときの悩みです。

0を1にするのも大変です。新規ビジネスがうまくいく確率も低いものです。ただ1になった後これが成長してくか、どこかで止まるか、もしくは継続不可となるか。また0を1にすることとは違う課題が出てきます。一番大きな課題は、ビジネスを立ち上げた中心人物があまり関わらずに、人数を増やし成長する土台を作れるかということになります。

ここで必要なのが「教育プラン」です。どうやって、新しく入った人が一人前になり、そして組織は具体的に成長した後どんな姿となるのか。教育プランは人を受け入れる前に、詰めておかなければいけないものです。

教育プランに必要な要素を挙げます。

 

ビジョンとミッション

・この組織は社会に対してどういう貢献をしたいのか。

・そのために個人は何をしていくのか。

 

業務に必要なスキル

・どんなスキルを学んでいけば一人前になれるのか。

 

業務環境

・仕事をする場所、機器、ソフトウェア、スマートフォンなどの説明。

・業務時間、および業務外時間の責任

 

体制

・登場人物と、それぞれの役割

・連絡手段

 

日常業務・定期業務

・毎日どのような業務を行っているかの概要説明

・定期的に行う必要のある業務の概要説明

 

中期キャリアパスの提示

・もし、順調に成長した場合に、将来、どのような役割が得られるか

 

ビジネスモデルの説明

・この組織が、どのように売上を受領し、原価を支払い、利益を頂いているか

 

具体的な学習計画

・必要なスキルに対してどのようにアプローチしていくか

・時間軸を意識して、学習していく計画を提示する

 

この辺りの計画を、「人を受け入れる前に」文書化しておく必要があることを最近実感しています。

まず、中心人物の背中は限られていること。新しく入った人が、中心人物の背中を勤務時間中見ていたら、中心人物が監視されているようでとてもストレスを感じてしまいます。

次に、新しく入った人が、中期的なキャリアパスのない現場に入ると不安になるからです。いつになったらシャリを触れるの?。シャリを触れるための計画を現場は考えてくれているの?。もし何の教育プランも用意せず、ただただ「見ておきなさい」では何も考えていないのと同じだからです。そのくせ「キャリアプランは自分で建てなさい」と無茶振りされ、必要なことは自分で勉強しなさい、と求められる。これではこの現場にいても先が見通せないというので、現場を離れて行ってしまうのです。若手は先が見通せないのに、2年や3年の若い時期を失いたくはありません。

ですから、ビジネスを0から1にすることができたら、次は1から10にしていくのですが、必要なことはまず人を増やすこと、ではないのです。人を増やすための教育プランを作るのです。それに基づいて人を増やすのですが、それを中心人物が主導するのではなく、代わりにビジネスを理解した初期メンバーをマネージャーにして、具体的に実装させるのが理想です。

なぜなら、それを実装するマネージャーが教育プランの作成を通じて中心人物としっかり合意できていれば、人を増やしていくときにブレが無くなるのです。個々のメンバーそれぞれの教育プロセスも、教育プランに合わせて評価していくことができるので、よくありがちな評価に対する不満も軽減することができます。

この、教育プランですが、0を1にする最中では実はあまり考えてはいけないと思います。なぜなら、ビジネスが固まらないうちは、ビジョンもミッションも揺れ動き、必要なスキルもわからないからです。小さいうちは軌道修正も小回りもきくので、とにかく何でもやる。何でも中心人物が主導し、周りはそれをサポートし理解する。

そしてついにビジネスが1に到達したら、いよいよ教育プラン構築が始まります。そしてそれを実行するマネージャーが必要になる。その時に理解者がいれば、教育プラン自体の作成も任せてしまうのが良いと思います。中心人物が四六時中いなくても組織が成長できるための計画だからです。

この辺りの努力をせず、いつまでも0から1の世界で物事を動かすと、新規メンバーが定着せず、「中心人物を理解し、根性のある人だけ残ったね」みたいな状態となり、成長も頭打ちとなるのが関の山です。

やっと教育プランの重要性がわかった、私です。