orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

「今日の仕事は、楽しみですか。」がなぜ人々を傷つけたのか

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ネットで話題となったこの記事の感想です。

 

www.itmedia.co.jp

「今日の仕事は、楽しみですか。」――品川駅コンコースにある数十台のディスプレイに10月4日、一斉にこんなメッセージ広告が掲げられた。

その写真がTwitterで広がると、「見た人を傷つける」「楽しみでなくても、しなくてはならない仕事はあるのに」などとTwitterで批判が集まった。

 

このキャッチコピーがまずいと思うのが、仕事という社会人にとって人生の中心となる事柄について、「楽しいか」という人格的な要素まで踏み込んでしまったことですね。

仕事をすることについては、憲法上は義務ではありますが、社会の仕組み的には基本的に仕事をしないと生活ができなくなっています。どうせ仕事をするならば楽しく感じる方がいいに決まっていますが、仕事は楽しい側面ばかりではないのは周知の事実。仕事はやり遂げるのが目的であり、それをどう感じるかどうかはそれぞれの人に委ねられた部分なのです。

仕事という概念をどう捉えるかは定義次第で意味は変わってきますが、人生の大部分の時間を浪費する事柄ですから大事であるのは間違いありません。しかしそれをやり遂げるということが尊いのです。一方で仕事をどのように行うかについてはいろいろな制約があり不自由ですが、自分がどう感じるかというのは個人に自由が与えられています。楽しいという感情もあれば、辛いという感情も時にはあるでしょう。責任感に燃えたり、失望したり。仕事は人生に近しいと考えると大変デリケートな話題だと思います。

それにもかかわらず、「楽しみですか?」という質問を投げかけられるというのは、自分のことをよく知りもしない人が心の中に手を突っ込んできたくらいの感覚になる人もいるということだと思います。それはあなたが私に質問していいことではない、と。

この質問を見て傷つくという人がいるというのは裏を返せば「仕事は楽しく感じるべきなのに、あなたは楽しくないのだ」と投げかけられたと感じるということになるのだと思います。つまり自由であるべき心の感じ方に対して他者が入り込み疑問を呈しているのです。完全に自分だけが担当できる心の中の話。他人が知ったことではありませんよね。どう感じるかは自分が決めるのだ。しかしあれだけ駅の構内で圧迫的に表示されると、言い返せるわけではなし、公共の場で不特定多数のビジネスパーソンに失礼ではないかというロジックです。

さて、このような人の心の機微に触れてしまった広告主は、どのようなトリガーでこの広告を出したのでしょうか。

 

 アルファドライブは10月から、「今日の仕事が楽しみなビジネスパーソンを増やす。」を新たなスローガンに掲げ、新聞広告などを展開。

 

もともとは、人生の大部分となる仕事をするという行為の中に楽しいと思える場面を作りたい、という意図から生まれた発想だったと思われます。「楽しい感情を仕事の中にどう作るかを考えていき行動に移したい」ということを想起していたはずなのに、どうやって間違えたのか「仕事をする人の仕事を楽しいと思わないこと」に対して問題提起してしまった形になってしまったという様子です。

目的そのものには炎上する要素は全くなく、手段が配慮を欠いていたということになろうと思います。これは、いわゆるパワハラ問題でもよくある現象です。加害者はいたって、良いと思ってやっていた、なぜ被害者が傷ついたのかがわからない、とはじめは言うのです。目的は部下のためになると思ってと言うのですが、手段がまずい。受け手が傷ついていると告白した場合は十中八九最近はハラスメント扱いされます。

手段が受け手に対してネガティブな要素がないか。特に人格面に切り込むようなやり方ではないか。人の性格や、感じ方、価値観、見た目、性別、生い立ち、人種、住所など、個人において変えようがないものを人格と呼び、ビジネスの場面でもそこに触れないというのが今や常識になっています。

今回の件はまさに、人々の人格に対して手を突っ込んでしまった、そういう話だと理解しています。

 

nlab.itmedia.co.jp

 広告は10月4日から掲出されていましたが、5日午前に掲載を終了。アルファドライブは「当駅利用者の方々への配慮に欠く表現となっておりましたことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪しています。

 

そうですね、配慮を欠く、というのは広告を見た人の人格に対してでしょう。

この手のトラブルの加害者にならないよう、誰しも気を付ける必要があると思います。気を付けるポイントとしては、相手の人格には言及しないこと、です。

他山の石といたしましょう。