orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

多重請負に対する個人的な感想

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多重請負の話を少々。

まずは、システムが欲しい企業がいます。この企業は社内にシステムを作る部署が無いので、システム開発会社にシステムを作って欲しいと依頼します。

システムを使う企業をユーザー企業。

ユーザー企業と直接契約し、システムを作る仕事を請け負う会社を元請と呼びます。

元請は有名で資産を持っている企業が多いです。なぜなら、もしシステムを作る約束をしたのに、作れなかったら賠償しなければいけないからです。またシステムを作り終えるまではユーザー企業からお金がもらえないので、それまでの人件費などを肩代わりする必要があるからです。

請負契約になりますから、体力がありしかもプロジェクトを完成させる自信のある企業しか元請にはなれません。

しかし元請の企業の正社員が全部のシステム構築にかかるプロセスをこなすことは、規模の大きいシステムの場合あまりありません。システム構築の仕事が常にあり続けることはないので、暇なときに正社員を抱えると負担になってしまうからです。システム構築にとって大事な上流と言われる部分。要件定義や設計段階までは元請の社員が独占しておいて、そこから実装段階と呼ばれるプログラミングやインフラ構築の部分は、元請が普段仲良くしている外部の会社に声をかけ、人集めをします。

人集め、と言うのが肝で、仕事を外部の会社に依頼するのではなく、元請の依頼に応えてくれる人を集めるのです。集まってきてくれた人に仕事をお願いしますが、完成させることについては責任はなく、ただただ契約した時間の中で仕事をしてくれることを期待します。もちろん、全然技術が無くてやる気も無くて何もできない、だとすぐに契約は打ち切られます。「がんばっていること」は義務の一つでもあります。

期間での契約であり、かつ一か月ごとにお金が支払われますので、人を差し出す方も毎月お金が支払われることで経営もお金周りが楽という側面もあります。

このような、仕事をすることそのものをサービスと定義し、一定期間働いた時間に対して報酬を支払う方式をSESと呼んでいます。

元請は請負契約でユーザー企業と契約し、その報酬を原資として、人集めをしプロジェクトを完遂する、というのが日本のシステム開発の現場で見られる良くある風景です。

さて、ユーザー企業のことを考えた場合に、元請のシステムエンジニアが一人分の月単価がいくらかなんて考えません。システムを作る費用、ということで元請に支払うのです。

元請は、人集めをするときに、別の企業、子請に人出しを依頼しますが、子請に対応できる人がいなければ、子請の子請、つまり孫請の会社に人出しを依頼します。このようにして、多重請負の問題が発生していきます。

元請は子請に月120万で依頼したときに、子請は孫請に、月100万で依頼します。

そうやってどんどん階層構造になっていき、末端では月50万・・なんてこともザラです。

月50万だと年間で600万ですが、会社の場合半分は会社が取りますから、これで年収300万のシステムエンジニアが出来上がる、という寸法です。

ふもとでは月120万が、末端で50万になるとき、この70万円はどこに行くのか、という話です。

一方で、元請は子請にSESでお金を流しても、それでもシステム開発が成功すればたくさんの利益を得ることができます。

ユーザー企業は、いったい、何に対してお金を支払っているのか。

私も、この多重請負のどこかに挟まっていたこともありますが、一人のシステムエンジニアとして、バカバカしいなと常々思っていました。

システム開発を実際に行っていない人たちに、お金が流れる仕組みだからです。

具体的には、「人が足りない元請に近づき、必要としているスキルを理解し、お互いに納得がいく単価で調整し人を連れてくることができる人」にお金が流れていくのです。

もし、とんでもない人を連れて行ってしまったら、その企業には話が来なくなるので、お金が流れないようになります。だから、人出しとは言えその人の品質も保証しなければならず、だからこそ価値が認められていると思います。

SES企業に私が勤めていたときは、大手のSIerと仲良くしている営業が、いつも誰かと知らない人と打ち合わせをしていて、コネクションの量と質を争うような場面をたまに見せられていました。彼らはしかも、現場のシステムエンジニアとも仲良くしないといけません。

まあでも、実際に価値を生み出すのは、システムエンジニア自身なのにな。会社はたくさんの人をSESによって流通させた営業の売上しか見ない。技術のあるシステムエンジニアもある程度昇格すると、営業に近くなっていき、技術と縁遠くなっていく。

だからやっぱり、私はこの多重請負がはびこるSIの文化、やっぱりよろしくないと思っています。

元請が、全部のプロセスをやりきるのが、やっぱりきれいなのかな、と。

請負でその全体金額をできるだけ使わずに、生産性高くやりきる。そのための技術。

技術が高ければ、それだけ金額も上がり、報酬も上がる。

そういうシンプルな世界が、最も望ましい。

きれいごとだと思いますが、きれいごとを突き通していきたいです。