orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

多重請負の現場にいたときの気持ち

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懐かしい。私も2次請け経験があるもので。

 

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「言われるがままに動くロボットみたい」

 20代のシステムエンジニアの女性は3カ月間、そう思いながら過ごした。

 IT業界で「下請け」とされている企業に新卒で入社。5年ほど前、都内のIT企業が請け負ったある企業の在庫管理システムの開発を「2次請け」として受注し、その企業の社屋にほぼ毎日、上司ら3人と出勤した。

 仕事は、システムの設計が書かれた、全体の中の一部分の仕様書を書くことがほとんど。システムのフローチャートで処理の流れを書いたり、実際のシステムと仕様書が矛盾していたら直したりするだけで、指示された仕事が終われば上司に伝え、新たな仕事をもらう繰り返しだった。

 

元請けの直下が2次請けなので、2次請けだとまだフェアな関係だと思います。2次請けがまた下請けを探し、その下請けがまたその下請けを・・というような多重請負関係になると、誰から指揮を受けていいのかわけがわからなくなりますからね。

一番問題だと思うのが、意思決定する会議にはことごとく参加できないことです。お客様とのお打ち合わせ、社内での検討会議。進捗確認。あらゆるプロセスが見えず、決まったことの一部だけが降りてくるので、その指示がどんな文脈なのかがわかりません。

元請けの社員の方と仲が良くなると、どんな経緯なのか一部は教えてくれますが、守秘義務などの壁もあり、都合のいい部分をかいつまんで話してくれるだけです。

元請けのお客様とは本当に絶対に顔を合わせることはなくて。昔は元請けの会社の名刺に自分の名前を書くなんてことがあり、私も大昔に一度だけそういう名刺を手に入れたことがあるのですが、今はあまりやってないんじゃないかと思います。だって、自分の所属会社じゃない会社の名刺ってまあ偽造ですよね。誰が得なんだいと。そうすると、下請けの会社の人物の名刺をお客様に出すのも微妙な雰囲気になるので、出ない、ということにあります。まあ子会社なら自然とか、営業段階で協力会社の名前を出しておくなどいろいろやりようはありますが。まあ普通は出しませんね。それやっちゃうと、万が一お客様と下請けの社員が直接やりとりやっちゃうとかなりめんどくさいことになるので。契約関係はお客様と元請けの間にしかないので、元請けを外してしまうと、知らなかったことが発生してしまう。

この下請けの存在で一番つらかったのが、プロジェクト全体について誰も説明してくれずいきなり現場に途中の工程から入り、その部分を切り取った仕事しか振ってこないことです。いったい何のためにこれをやるのかがわからず、単に指示内容だけを把握し打ち返せばいいのですが、受け取った側が満足するのかしないのかよくわからないのです。仕事をしたときに、自分に対してのフィードバックがないと良かったのか悪かったのかわからず、成長実感がないんですね。

元請はお客様の要求に始まり、どういう形で満足いただけるか考え、その手続きを想像したうえでタスク分解し、それぞれを下請けに降ろしていきます。タスクになってしまうとそれをどうこなすかであり、お客様が喜ぶ、なんて言っても会えないので、とりあえず指示元の元請けにいい反応をして頂けるようがんばります。ただ、やっぱり全体のことがわからないのでやりがいという意味では限定的なものになります。

私の経験ですが、こういった環境のなかでタスクを淡々と繰り返すような状況になったときに、時間が余ったので、その時間を利用して現場にあるドキュメント類を読み漁った記憶があります。構築の現場だったのですが、設計書を含めて現場には公開されていました。

今の自分自身の仕事のスタイル、実はこの時に読んだドキュメントが基礎となっています。そこまで上流の仕事をやったことのない下請けの一社員だった私は、ここで上流の仕事の「正解」を知れたことは大変大きかったです。

現在は、規模は小さいながらも設計から構築、運用まで一連の作業を一人でできるようになったのですが、過去の経験が無ければ今のパフォーマンスはなかったかな、と思います。

だから、二次請け以下の立場、完全に悪いとは言い切れない部分があります。「言われるがままに動くロボットみたい」と思うなら、とりあえずロボットとしての期待をまずは完全クリアしたらどうでしょう。その責任の無さなら完璧にこなせば時間が絶対余るので、そこで現場の様子をつぶさに観察するのです。大きな規模のプロジェクトにおいて誰がどういう役割を持ち、そして成果物としてのドキュメントがそこにあれば読んでみるのです。書籍などでいくら勉強しても抽象的だし自分の身の回りのことじゃないので頭には残りにくい。しかし、自分の職場のことなら興味深く確認できるので、身に着くのです。

そして勉強できたと思ったら、後は元請けへの転職を試みれば良いと思います。元請けイコール大企業と思ったら大間違いです。今は小さい企業でも元請けやってますよ。また人手不足につき、大手の元請けSIerも下請けからの登用も普通に行っています。元請けの経験がないと元請けができないわけじゃ決してないです。仕事中の心構えが大事です。

私はこのように多重請負の中で成長してきた経験もあるので、多重請負は完全に否定するのではなく、付き合い方次第だと思っています。