orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

テレワークはそもそも無理なSI業界/右往左往している様子が目に浮かぶ

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ユーザー企業とSIerのクラシックダンス

 

下記のツイートについて深掘りします。

 

ほとんどのSIerが、プロジェクトを協力会社と一緒にこなしています。ユーザー企業に常駐していたり、持ち帰って元請のオフィスで実施したりと、いくつかパターンはありますがそれを自社の社員だけでこなすのは難しいと思います。元請は上流工程に深く関わりつつ、下流に行くにしたがって協力会社に仕事をアウトソーシングします。一括請負でお願いするケースは元請と協力会社の関係が深まればあり得ますが、SES(準委任)が最も多いでしょう。一括請負だと請負範囲が完結するまで支払いがないのですが、SESの場合は毎月精算できるために資金繰りが楽だからです。しかも成果物に対する責任が善意管理義務しかないので、リスクも小さいです。もし人員のスキル不足だった場合は人を入れ替えればいい、というのも元請にとってもメリットです。一方で最近は、請負やSESに見せかけながらやっていることは派遣だった、という偽装請負について厳しくなり、派遣契約にわざわざ切り替えているところもありそうです。

契約形態の問題に関しては横に置くとして、結果的に言えば、ある一つのオフィスに、複数の会社の社員が集結します。

 

Aシステム構築プロジェクト

作業場所:ユーザー企業のオフィス

ユーザー企業担当者B:Aシステムのユーザー側窓口
元請担当者C : Aシステムのプロジェクトマネージャー
元請担当者D、E : Aシステムのリーダー、サブリーダー(要件定義・設計まで)
下請担当者F:下請会社の管理者兼、開発リーダー
下請担当者G、H、I:プログラマー、デザイナ、テスター等

 

例を作ってみましたが、情報処理技術者試験の午後にでも出そうな構成です。下請も一社だけではなく数社あったり、もしくは孫請のようなパターンも存在します。

なぜこのような体制を組むかと言えば、「セキュリティー」が一番上の理由になると思います。Aシステムが扱うデータは社外秘であることがほとんどです。社外秘データをなぜ元請や下請が扱えるかというと、秘密保持契約をユーザー企業と元請、そして元請と下請の間で結ぶからです。その上で、作業場をユーザー企業のオフィスで、しかもセキュリティー区域に限定し、ユーザー企業の社内インフラを開発で利用することでセキュリティーを担保できるという寸法です。

もう、こんな現場を山ほど見てきました。そして未来永劫このユーザ企業とSIerのダンスは続くと思いましたし、最近は「共創」なんて言う言葉も生まれました。ユーザー企業とSIerが一緒に考えて、新しい価値を創造しようという試みです。

 

テレワークに対応しづらいSIビジネス

さて、この新型コロナウィルスです。

昨日の事例です。

 

xtech.nikkei.com

 SCSKは2020年2月26日、顧客企業の拠点に常駐していた協力会社の社員が新型コロナウイルスに感染していたと発表した。

 同社によると、協力会社社員はオリックス生命保険の住友不動産新宿ガーデンタワーにある拠点に常駐していた。2月14日に本人が発熱などの体調不良を訴え検査したところ、2月24日に新型コロナウイルスに感染していることが判明したという。

 

こちら、先ほどご案内したような事例に似たような事例です。ユーザー企業がオリックス生命保険、元請がSCSKというパターンです。

さて、ユーザー企業が「今日から全社員テレワーク!」と言ったとして、機能するでしょうか。ユーザー企業担当者Bだけがテレワークに突然になったとします。しかしプロジェクトを止めることはできません。元請配下は全員出社するでしょう。これではユーザー企業のオフィスが空っぽになる、なんてことはできません。

また、ユーザー企業がいくらテレワークのためのインフラを準備しようとしても、そのインフラはユーザー企業の社員しか利用できないのが現実です。メールやチャット、社内の基幹システム等に、元請配下をアクセスさせることはできないのです。「セキュリティー」が大きく絡むからです。

一方で、元請の企業にも「今日から全社員テレワーク!」と言う指令が下ったとしましょう。そもそもこのプロジェクト、ユーザー企業のオフィスで作業することが必要かどうかが問題となります。要件定義・設計がリモートで進められるかについて難しい調整が必要になるでしょう。

もっと深刻なのが、下請です。上流担当とコミュニケーションを取らないで実装するなんてできるはずがありません。ドキュメントがあれば実装できるでしょ・・とはいかないのがSIです。かつ、もし下請がオフィスへ出勤するとすれば、元請もユーザー企業の面前で出社せざるを得ません。

例えば、元請のオフィスで持ち帰り作業とするとしても、そこに下請が出勤するのならば同じく、元請が管理監督しなければいけませんから、こちらも出社が必要になります。

 

リモートでもできるSIを目指せ

本日の記事です。

 

www.itmedia.co.jp

 新型コロナウイルスに伴う重症者を減らし、社会への影響を最小限にするため、政府が企業にテレワーク(在宅勤務)の推進を呼び掛ける中、先行する企業の取り組みからは課題が浮かび上がっている。普段からテレビ会議を活用するなどテレワークを導入しやすいとされるIT業界でも限界はあるといい、感染拡大防止と事業継続の両立には優先すべき業務を事前に見極めるなどの工夫が求められている。

 「どうしても人が出てきてやらなければならない業務があった」。IT企業のGMOインターネットの広報担当者はそう語る。同社は新型コロナウイルスの感染者が国内でも数例確認され始めた1月27日に東京や大阪など都市部の事業所で働く約4千人に在宅勤務を命じた。しかし、2月10日に方針を転換。社外だけでは仕事が難しい職場の千人程度については出社を認めたという。

 

無理なものは無理。それは事実だと思います。

しかし、日本は「2週間は厳重注意期間」と言うことで様々なイベントは中止となり、期間限定でテレワーク強制となった企業が続出しています。

これから、社外にはテレワーク強制としてアピールはしたものの、社内的にはいろんな矛盾が頻出し対応に困る企業がたくさんでるでしょう。特にSI業界はセキュリティーの壁を理由にして、ユーザー企業もSIerも、対応を後回しにしてきました。

ユーザー企業もSIerも、今回の件で再度、業界慣習が本当に適切なのか一度考え直すべきときだと思います。異業種間、異国間で共創するアジャイル的な発想が、テレワーク・リモートワークでも成り立つ方法を編み出さないといけません。