orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

IT業界におけるセンスとは何か

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センス、という言葉が話題になっていて、興味があるのでコメントします。

 

anond.hatelabo.jp

本当に迷惑なんだ。

センスがない奴の何が問題かというと、技術がないとか、ベストプラクティスを知らないということではなく、根本的に「頭がおかしい」ことなんだ。

センスのない奴は、普通の人間が到底思い付かないことを平然と行う。所詮、本に書いてあるようなアンチパターンは、「経験のない人は典型的にこういうことをしがち」という例であるが、センスのない奴はそういう典型的なアンチパターンにすら当てはまらないほど意味不明なことをする。だから、「センスのない奴は典型的にこういうことをする」という具体例を挙げることが非常に難しいし、「ここがダメだから直せ」という指摘もできない。

 

私も若手で経験が浅いころは、センスとは先天的なものだと思っていました。無い人がいくら努力したって、センスがある人にはかなわない、と。

今現在、経験年数にして二十数年ですが、ああセンスってもしかして後天的?と思う瞬間をかなり目撃しています。

後天的と言うと、なんらかの教育や経験にて身に着けることができる、ということを指します。だから、誰しもセンスという言葉の重さに対して負けなくてもいいと思います。やればできる。センスがある人だって、初めからあったわけではない。

じゃあ、どうやったらそのセンスって身に着けられるの?という話です。

よく言われる、基本情報処理技術者試験から入り、基礎を積み上げていきましょう、というのは確かに真理なのですが、この、正しい勉強を積み重ねるというやり方はワナがあるものだと理解しています。

正しい、とは常に正しいのですが、結構曖昧なことが多いです。ある条件では正しくても、ある条件では間違っていたりします。

例えばディスク使用率が90%だということが発覚したとして、すぐ消すかというと、

①とりあえずエスカレーションし指示を仰ぐ
②とにかく消す

2つの選択肢が現れます。どちらが正しいか。これは状況によって変わります。

監視システムのグラフを見て、例えば1時間以内に急上昇しているなどと言う場合は、②とにかく消す、になろうと思います。ほっとけば100%になってシステムが止まってしまいます。

しかし、一日に1%上昇などであれば、10日以内に対処すればいいのですぐに対応せず、①とりあえずエスカレーションし指示を仰ぐ、の方が正しそうです。

指示を仰がないで独断で作業をしたせいで、二次被害、例えば消してはいけないものを消す、というリスクもあります。

と言うふうに、正しさとは簡単な話ではありません。

で、たいてい資格の勉強や座学というのは、「正しさ」を積み上げる作業です。しかし私は最も教材たりえるのは、「正しさ」ではなく「間違い」だと思っています。

正しさから外れると間違い、なのですがこの間違いを知ることで、消去法的に正しさを知るというのが、センスの正体ではないかと思うのです。

なぜ「間違い」を強調するのかと言うと、間違ったときの被害を想像できるかどうかで正しさを選べるようになるからです。先の事例でもし、ディスク使用率を減らしたいあまりに本当に必要な物を消してしまったらどうなるか。想像できたら簡単には作業しません。しかし正しさしか知らない人は、消す方向に振りがちなのです。また、逆に、作業はエスカレーションしてからやるもの、という頭しかない人は、放っておいた時の想像ができません。何らかのバグでログを吐きまくって、ディスクを枯渇してしまうなんていうことはあり得ます。

正解の集合知ではなく、失敗の排他としての正解。

これって、簡単に言えば経験なんです。

失敗経験を積み重ねること。しかし、失敗を若手にたくさんさせるわけにはいかないですよね。仕事で失敗したら、会社に損害を与えてしまいます。だから、指導者が、なぜこの選択肢を選ぶのかを若手にきちんと伝える必要がある。正しいから、ではなく、間違ったらどうなるかをいちいち説明する。

指導している立場で思うのは、勉強している若手は正しさは知っているのですが、なぜ正しいかということについては浅い場合が多いです。正しさの横にある無数の間違いが、何を引き起こすのかを説明しなければいけないので、きっと「なんでこんなことも知らないのか」の苦悩が指導する初期にあります。

しかしそこを乗り越えると、ああ、センスがついたかな?という瞬間が確かにあります。ここが若手が育つかどうかのポイントになろうと思います。

最近は、何でもスマートに学ぼうとする傾向が強いので、とても重要だなと思う観点です。間違いにこそ学びがある、ということです。