「2025年の崖」とは何かをわかりやすく説明してみる試み

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呪文

こんな感じの呪文を唱えている人を最近見かけませんか?

 

「企業のITガバナンスが今ほど重要な時期は過去にありません。

企業のレガシーシステムは老朽化しています。

2025年にはもはや今の形を保つことはできないと言われています。

今こそモダナイゼーションし、デジタルトランスフォーメーションを成し遂げる必要があります。

クラウドやコンテナ技術を活用しマイクロサービスアーキテクチャーを導入することで、継続的インテグレーション/デリバリーを起業文化として確立させましょう。

今後、アジャイルを取り入れ、社内外や自社ユーザーと共に創り継続的に自社サービスをブラッシュアップしていくことで、強い企業を創出することができます。」

 

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ほとんどの人が、意味がさっぱりだと思うのですが、だいたいのSIerがこのようなことを言っています。どんな立ち位置でも言うことは同じです。そして当の事業会社は煽られるだけ煽られた挙句、どうすればいいかわからないというので、IT系のコンサル部門にはたくさんの案件が舞い込む構図となっています。

ただ、冒頭の文句を書きながら思ったのですが、やぱり一般の人にはさっぱりだと思うのでかみ砕いてみたいなと思います。

 

かみくだく

全ての企業でコンピュータシステムは使われています。そのシステムはほとんどが自社で作成したものではなく、システムインテグレーター(SIer)に依頼し納入されたものを使う場合がほとんどです。会社に情報システム部員は存在しますが、たいていにおいてSIerに対する窓口として機能しているだけです。

このように、企業とSIerはコンピュータシステムの外注を通じて持ちつ持たれつの関係が結ばれています。特に日本はこの傾向が強いとされていました。SIerは社員を企業に常駐させ、保守作業を行います。SIerの正社員であることもあれば、SIerの下請けであることもあります。日本は、ITと言えば外注するものだったのです。なぜこの形となったかと言うと、起業においてITは主役ではありません。経理や総務と同じように直接お金を稼ぐ事業部門ではなく、総務や経理などの間接部門(バックオフィス)の扱いを受けていたからです。今でも情報システム部門が一人しかおらず、一人情シス、なんて揶揄される現象も日本ではごく普通のことです。

さて、日本企業におけるITはあくまでも事業活動を支える道具、に過ぎなかったのですが昨今状況が変わってきました。事業活動そのものにITを使っていかないと、競合企業との競争に勝てなくなってきたからです。むしろ、競合企業だと思っていなかった会社が、ITを活用し参入してくるケースが増えました。例えば銀行業において、日本にはたくさんの銀行があったのですがどんどん合併し数を少なくした歴史がありました。合併によって競争相手が少なくなったかと思いきや、異業種からネット銀行がどんどん参入、そもそも銀行という業務自体もキャッシュレスの時代で境目がなくなり、今後旧来の銀行は厳しくなる、と言われています。

このように、これまであくまでもバックオフィスの裏方的な位置づけだったITが、今後は事業そのものに組み込んでいかないと立ちいかなくなっています。最近ではITを組み込んだ事業のことをデジタルビジネスと呼ぶようになっています。また会社の事業をデジタルビジネスに変革していくことを、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ぶようになっています。

経済産業省では、このデジタルトランスフォーメーションを2025年までに各企業が終わらせないと相当な経済損失になると予想しています。この経済損失について、ハードウェアやソフトウェア保守、もしくは人材不足などの観点ばかりを強調する人がいますが、これは違います。2025年のころに、旧態依然でデジタルを事業に取り入れないビジネスをやっていたら、5年後には古臭過ぎて国際的な競争にはさっぱり勝てなくなることを意味しています。今、まだ日本企業が競争力を持っている内に、デジタルを事業に組み入れることに着手しないと間に合わない、ということです。

さて、事業にデジタルを取り入れると何が必要になるでしょうか。通常の基幹システムは構築したら5年以上使うのは当たり前です。使い続けながら、修正が必要であればSIerに依頼し変更してもらう。そして数カ月に一度、変更を行っていく。しかし、これでは遅すぎるのです。毎日のように競合会社が新サービスを打ち出して来ます。弊社は半年後に、では遅すぎるのです。デジタルビジネスの特徴は、素早い変更と公開の繰り返しです。今までの情シスとSIerの構図ではこれはとてもできません。だから、SIer側もデジタルトランスフォーメーションの専門子会社や部署を立ち上げているほどです。

何を変えなければいけないかというと、まずは企業とデジタルの垣根をなくすことです。SIerも事業領域を理解しアイデア出しをしたり、事業会社もアイデアをSIerにぶつけたりと、企業の垣根を超えて、どんどん事業を変更していかないといけません。

それを行う上でも、今までのサーバーとアプリケーション、インフラなどのコンピューター側の仕組みも見直す必要があります。最近はコンテナという軽い単位でプログラムを動かすことを主流としようとする動きがあります。また、クラウドを利用することで、デジタル的に必要な資源を俊敏に活用できるようになります。こういったデジタルビジネスを支えることのできる新しい仕組みに変更することを、モダナイゼーションと呼んでいます。この逆がレガシーであり、過去の仕組み一般を指します。

IT業界にいる人ですら、まだレガシーの仕組みしか知らず、モダナイゼーションすることにおっくうとなっている人もたくさんいます。しかし、事業自体がそのような変革期にある今、ITが変わらないことなどありえない、と思われます。

このように、2025年に向けて、たくさんの日本企業がモダナイゼーションし、デジタルトランスフォーメーションをするために、事業会社側も、SIer側も、そしてIT技術者も危機感を持つべきではないでしょうか。

 

多分あってる

ざっくり書いてみましたが、意味は伝わりましたでしょうか。

AIやIoT、5Gのような言葉は入れなかったのですが、多分に本質ではないと思います。新技術はこれからも新技術なのですが、主題は事業です。あまりにも日本企業の事業内容は、デジタルと切り離され過ぎています。だから、レガシーがこれだけ幅を利かせている状況です。

今のところ、デジタルトランスフォーメーションを支えるような、コンテナやクラウド、継続的インテグレーション/デリバリーのような話は日進月歩で落ち着いてはいないのですが、そろそろ決定版のような技術が出てきそうな雰囲気を感じています。

一旦は、DXはIT目線ではなく事業目線なのだということを、IT技術者を含むたくさんの人にもわかってもらいたく、かみ砕いてみました。ご参考になれば幸いです。