45歳リストラ、希望退職はなぜ生じたのかを考える

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はじめに

なぜ優良企業でさえも45歳以上のベテランをターゲットに、お金を支払ってまで希望退職制度を実施するのかを考えてみます。かなりの企業が実施に踏み切っていて希望退職の話を聞かない日はないのですが、報道を見ても表面的なことの分析にとどまっていて内情を把握しているとは思えません。

なぜ希望退職は生じたのか。多面的に考察していく必要があります。理由を知ることで冷静に対処できますし、将来に備えることもできます。

 

考察

企業から考えたときに、あるべき45歳像が存在します。社会人経験が20年で業界や社会のルールを熟知しています。会社の商品やサービスに対して営業段階から製造、納品、そして現金の回収までのビジネスで必ず通るプロセスがありますが、その全部もしくは一部に精通している必要があるでしょう。逆に20年やってきて何にも精通していないのであればそれまで何を経験してきたのか、ということになります。

 

ここで、会社が退職させたい45歳以上のゾーンに「学んでこなかった人」が一番に上がります。70歳まで働くことが常識化しそうな社会において、20年間学べなかった人をあと25年社内に引き留めるのは意味がないでしょう。

さて、仕事ができない人を会社から追い出したいというモチベーションはすぐ浮かぶのですが、実際はこのゾーンは20年間も会社にいられないという別の話もあります。何らかの形で給与が大幅に抑えられたり、仕事内容が単純化されたりで、いわゆる閑職においやられる状況が多いはずです。企業経営者や管理者も鈍感ではなく、彼は仕事をしていない、という状況を見える化することについてはかなりの企業が手をつけています。そうすると、「学んでこなかった人」を追い出すというのは希望退職の意義の中で意味づけは小さいのではないかと私は考えています。もっと直接的に会社にいられなくしてきたのではないか。

 

それでは次の仮説は何か。「会社で過去功績を残し、その権力を持ってポストを得て、その中でぬくぬくと会社に在籍している人」です。結構怖い話だと思います。会社に20年も在籍していればどこかで功績を積んでいるはずで、そのビジネスに対して過去立ち上げを行ったりマネジメントを行ったりして主役であった人です。しかしそのビジネス自体は成長性はないが持続性がある。今後売上は上がることは決してないけれども、持続性はある。このような場合で、45歳以上はそのビジネスのマネージャーではあるけれども、時間が経っているのでだいたいの具体的な仕事の引継ぎは完了していることは多いでしょう。立派な肩書はあるものの実際の仕事は部下が全て廻している。その功績は自分。しかしそのビジネス以外を広げられた実績がない。そんなケースです。

経営者から見た場合、そのビジネスを立ち上げてくれた彼には感謝しているけれども、彼を今後長く引き留めたとしてもメリットがない。彼自身はそのビジネスの中に閉じこもって出ようとしない。そもそもそのビジネスはもう彼を必要としていない。経営者から見れば希望退職制度で出てもらうと最もメリットがありそうなタイプです。

一方で、彼自身は、自己評価が高い傾向にあります。会社の中で功績も作ったしそのビジネスの中ではトップの位置にいます。役職も高く給与も高いので、自分は会社の外に出ても通用するという思いは強いです。もちろん通用するタイプもいますし、実際は通用しない自己評価が過大なケースもあります。

どっちみち、功績を盾に実務が伴わないケースにおいては、会社にとっては清算したほうが良いという判断が起こります。その過去のビジネスも、いつまで続くかわからないのですから。

 

上記の仮説は有力ですがまだ違うゾーンがあるはずです。「特定の技術領域について、スペシャリストを標榜している人。しかしその領域自体が陳腐化しつあるケース」です。特定の技術領域がお金になったときは、その技術を持っていることに対する能力評価を根拠に高い評価を与えることができました。しかし、日本企業は特に前年より給与を下げる賃金制度とはなっていません。ある時期から特定の技術領域の価値が激減してしまったにもかかわらず、給与を下げることができない。

このようなケースは、特に45歳以上の人々に多い傾向があるのではないでしょうか。再教育するにしてもこれまで高い評価を受け社内でも高い職位にある人に、あなたには別の技術領域を担当してもらいたいので一から勉強しなおしてください。給与もそれに基づいて低くなりますが我慢してください。とはやりにくいのです。

この状況の人は社内でも職位が高いこともあり自己評価が高く、他社に移っても十分通用すると思っているタイプが多いと思います。もしその技術を高く評価してくれる他社があるのであれば十分転職するメリットはあります。逆に実際は通用しませんでした、もしくは、その技術が本当に陳腐化しているので外でも必要とされませんでした、という厳しいケースもあります。

経営は、希望退職に応募してこなかったこのような人材に対して、ドライに配置転換を行う可能性がありますし、事実そのような会社もあります。事務職をシステムエンジニアや営業職に配置転換し、そのうちの大部分が短期で退職していきました。

 

さて、最後にもう一つの仮説を置いておきます。「仕事は申し分ないけれどもモチベーションが低く、周りに有害である人」というパターンです。たいてい「この会社を辞めたい」と周りに愚痴をこぼしつつ、自分は決して辞めないのです。「この会社はこんなに良くない。あんなことやこんなことがまかり通っている。」と20年も会社にいるので非常に物知りなのですが、組織にとっては有害極まりないのです。

本人も年齢的に転職しても何のメリットもないのがわかっていて、それでいて現在の自分自身がおかれた環境に不満を漏らします。そして特徴的なのは、自分を原因にすることなく外部環境に原因を求めるのです。会議では評論家的な発言に終始。攻撃的で自己防御的。生産的な方向は仕事が増えるからと言って拒否。自分の職域に非常にこだわり、その職域には新しい人を入らせないで属人的な仕事をしがち。一方で新しい仕事をすることには非常に消極的、と言った具合です。

経営としては一日も早く退場願いたいのですが、何の理由もなく解雇することはできないので、一つの方策としての希望退職制度であるとは思います。

 

対策

3つの仮説、こういう状況に自分自身が追い込まれないために45歳までに準備しておくことを考えます。

 

一つは、経営側に「この人は時間とともに成長する」と判断してもらうことです。年間単位で個人目標を明確にし、その数字を増大させていることを経営側に認知してもらうことです。経営は成長する人が大好きです。ずっと会社にいてもらえたら、会社が成長していくエンジンになることが明確なのです。過去の実績にしがみついているだけだから、いなくなっても大丈夫と判断されたらおしまいです。ですから、過去の実績が自分を守ってくれるとは思わないことです。毎年伸びしろを見せていかなければいけないとすれば、危機感が生まれます。この危機感を経営と常に共有することで、45歳を過ぎても必要な人材と思ってもらえるでしょう。

そのためには、自分の職域について、どんどん部下に引き継いでいく姿勢も重要です。そうすると新しいことができます。新しいことを年々続けていくことが重要で、そのためには過去の実績にとどまっている自分を拒否する必要があります。

 

もう一つは、絶えず自分の職域を外部環境に合わせてアップデートし続けることです。技術者であると思うのですが、年単位でどんどんトレンドが変わっていきます。会社の中にいて既存ビジネスだけに閉じこもっていると、どんどんガラパゴス化します。そのうち「自分の会社のやり方が正しくて、周りのトレンドの方が間違っている」と言う誤った認知すら生まれるようになります。これは良くない。外部環境に合わせた職域のアップデートを行い、経営が評価に困るスキルセットにならないようにしましょう。ベンダーのセミナーや展示会に参加したり、他社の営業提案を聞いてみるなど、努力が必要だと思います。

 

最後に、本当に環境が悪いと思うのなら、転職準備を整えることです。そんなこともあります。転職したらいけないという決まりはありませんから、その判断も頭の片隅に入れる必要があります。そのためには上記2つの対策も合わせて行いつつ、行動しなければいけないと感じた時に動ける準備が必要です。

いくら、原因を自分に求め研鑽することは重要とは言え、周りが腐っているケースというのもあります。腐った周りをよみがえらせることで消耗するぐらいなら、初めから転職を選ぶのも一手です。そのためにも、普段からの準備が必要です。

 

以上、個人的な考察を行ってみました。たくさんの人のご参考になれば幸いです。