orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

飛び道具に頼らない姿勢

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今日も昨日に引き続き、Chatwork Business Day二日目の話。

私、技術者だけど、技術セッションより経営寄りのビジネストークの方が好きです。なぜなら、技術は個別過ぎて自分の職域に活かせるかどうかは微妙だけど、ビジネストークは自分の仕事に活かせる部分が多いからです。いわゆる抽象化しやすい。私の場合だと・・だよね、となりやすい。今後自分の組織を成長させたいとして、どういう手法でどういう時間軸で、どんな内容に取り組めばいいか、みたいなところはどんなビジネスの場面でも同じように悩み取り組んでいるのがわかるのです。Chatworkのイベントだったけど、今回はビジネス主体だったので、二日間ものすごく刺激を頂きました。毎年ぜひ続けて欲しいですね。

今日取り上げるのは、一橋大学教授、楠木健氏のセッション。

 

逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知

 

「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」
経営を惑わす3つの「同時代性の罠」を回避せよ!
近過去の歴史を検証すれば、変わらない本質が浮かび上がる。
戦略思考と経営センスを磨く、「古くて新しい方法論」。
「ストーリーとしての競争戦略」の著者らの最新作!

これまで多くの企業が、日本より先を行く米国などのビジネスモデルを輸入する「タイムマシン経営」に活路を見いだしてきた。だが、それで経営の本質を磨き、本当に強い企業になれるのだろうか。むしろ、大切なのは技術革新への対応など過去の経営判断を振り返り、今の経営に生かす「逆・タイムマシン経営」だ。

そんな問題意識から、日本を代表する競争戦略研究の第一人者、一橋ビジネススクール楠木建教授と、社史研究家の杉浦泰氏が手を組んだ。経営判断を惑わす様々な罠(わな=トラップ)はどこに潜んでいるのか。様々な企業の経営判断を当時のメディアの流布していた言説などと共に分析することで、世間の風潮に流されない本物の価値判断力を養う教科書「逆・タイムマシン経営論」を提供する。

経営判断を惑わす罠には、AIやIoT(モノのインターネット)といった「飛び道具トラップ」、今こそ社会が激変する時代だという「激動期トラップ」、遠い世界が良く見え、自分がいる近くの世界が悪く見える「遠近歪曲トラップ」の3つがある。こうした「同時代性の罠」に陥らないために、何が大事なのか──。近過去の歴史を検証し、「新しい経営知」を得るための方法論を提示する。

 

IT業界に過ごす身としては、何だかキレの良い説教を受けているようで、とても刺激的なセッションでした。

私自身は2000年手前からIT業界にジョインし、かつインターネット自体は2000年から前のことは記憶喪失です。Googleで検索してみたらわかると思うのですが、2000年から前のドキュメントってほとんどないですよ。だからインターネットがあれば世界のことがわかると思っている人は大きな思い違いをしています。動画にいたっては多分ここ5年くらいのことしか残っていないのではないか。だから、インターネットは「今」には強いですが、古い情報はどんどん無くなっていきます。いぜんジオシティーズが無くなった時も思いましたが、インターネットは倉庫ではなく、単なる今のスナップショットに過ぎないのです。

そして、インターネットで、何か情報を引き出そうとすると、今の情報しか得られません。だから、DXやらAIやらIoTやら、新しい技術、楠木氏は「飛び道具」と称していましたが、最新のそれらに行きつくようになっています。広告による誘導も含め、もうそうなっているとしか言いようがありません。だから、インターネット広告を牛耳る会社が世界を制しているのです。

しかし、ちょっと時間軸を昔にずらしていくと、それはERPも、インターネットも、そして私の知らない1990年ごろは、SIS(戦略情報システム)という言葉が席巻したそうです。

1980年代は、OA(Office Automation)という言葉があったような子供の記憶です。

結局のところ、文脈を捉えず、短絡的に、流行の最先端に飛びついて「意味不明なことをし出す」そうですが、これは本当にそう思いました。

なぜインターネット時代で情報が飛び交っていて、賢くなったと思っている人類が、過去と同じような失敗を繰り返すのか。

それは、インターネットが、記憶喪失するようになっているからだ、と思います。

過去の失敗が全然インターネットに残っていないのです。

インターネットは、「新しい情報」を捕まえるメディアだと思います。

私が今日書いたこの記事は、ほとんどは今日、もしくは明日までぐらいしか読まれず、地下に潜ってしまいます。それはネットメディアでも同様です。

だから、日々「今」を切り取ろうとしますし、刺激的な見出しを付けます。むしろ記事の内容と合っていなくても読まれればいいみたいな記事が日々量産されます。したがって、インターネットの、いわゆる「ファストメディア」と楠木氏が呼んでいた、ふわっとしたネット記事による学びは「ひとくち目だけおいしい」のだと思います。本当の栄養にはならない。

過去を振り返れば、歴史を紐解けば、たくさんの人が同じ間違いをしているし、少数が正しい選択肢を選び成功している。これらには普遍的な法則があり、そのロジックを学ぶことの方が学びが大きい、ということでした。楠木氏は「スローメディア」とおっしゃっていました。過去の文献や新聞記事に宝の山があると。

楠木氏のインタビュー記事も掲載しておきます。

 

www.sbbit.jp

 

本セッションを聴講し、ちょっと腹が括れましたね。

新しいこと、飛び道具に飛びつくのではなく、なぜ今の仕事が獲得できたのか。そして自分たちの魅力は何なのか。その普遍的な部分を掘り下げて、自分の仕事を伸ばしていきたいと思います。飛び道具があれば成長できる、というのは、幻想。