orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

なぜ大企業は45歳定年制や希望退職制度に好意的なのか

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先日から話題となっている45歳定年制ですが、なんと経済同友会では好意的に受け取られていると言う記事が出ていて驚きをおぼえました。というのも、ネットでは大炎上しているからです。

 

www.news24.jp

雇用市場の変化がコロナ禍で後押しされている。政府の会議のメンバーも務め、論客の新浪剛史サントリーホールディングス社長の口から飛び出した「45歳定年制度」。その背景は? 実現性は?

 

なぜ経営者たちは好意的なんだろう、その理由を想像してみました。

名だたる大企業のほとんどは、社会において大きな既得権益を保有しています。圧倒的なシェアのビジネスがあり、社員たちはそのビジネスを正しく管理することが求められます。すでに形がきちんと決められていて、しかもシステム投資も進んでいて、人間が関わる部分はすでに限られています。安定した利益の上に雇用がなりたっているので社員たちは給与水準も高く仕事も大きなトラブルはありません。人もうらやむ高待遇です。

しかし、この図式は問題があります。頂いている給与ほどのスキルが身に着かないということです。すでに立ち上げられたビジネスは大きな変化がなく、クリエイティブな発想も不要です。決められた通りのオペレーションこそが求められるので、例えば新しくビジネス開発を行うことなど到底無理です。むしろ新しい発想が求められないのが特徴です。

このような環境に若い時、例えば新卒から二十年くらいいると、社員も気が付きます。今の高い待遇で転職しても同じ待遇ではいられるどころか下がってしまう。今までの経験を他社に持って行っても給与が下がってしまう。

経営陣も社員側もそれに気が付いてしまったのです。希望退職制度が全て経営側の名指しで辞めさせているとは到底思えません。社員も希望していて、なりたっていると思います。結構なケースで会社の想定より多い人数が希望した、ということになりますよね。当然退職に当たっては破格の退職金などを出すことが条件になっていますが、お金だけではなく、社員自身もこの会社に居続けていたら危ないと考えるのです。しかも退職に当たって退職金が割り増しになるのだからいいチャンスだと、だからここまで希望退職制度が機能したのだと思います。出直すとして、軍資金が得られるのだからこれは確かにチャンスなのだ、と。

ただですね、これは上場企業など大企業に限った話なんです。

中小企業では全く事情は違います。もともと大企業より中小企業の方が待遇が悪い。それは、「立ち上げられたビジネス」というほど大きなしっかりした収益がないからです。むしろ、これからクリエイティブな発想を踏まえ、企画し、大企業のようになれるように社員は駆けずり回らないといけないのが中小企業です。

ですから、中小企業にずっといた人は、クリエイティブな発想はずっと求め続けられたはずで、いわゆるプレイングマネージャーが非常に多いはずです。そうなるとむしろ45歳という年齢は働き盛りで、とても会社の仕事のことをよく知っていて、中小企業の経営者としては手厚く保護して離せない人材がこの年代に多いと思います。おそらく45歳定年制なんてとんでもないです。むしろ、大企業のやり方を知っている人たちを招き入れたいと思っているのではないでしょうか(高い待遇は難しいとしても)。

大企業と中小企業の置かれている現状は、異世界なんです。

だから、今のメディアが騒いでいる45歳定年制は、日本全体にあまねく広げるととんでもないことになるんです。勝手に大企業だけでやってください、という感想です。

高い待遇を得られるけれども45歳で定年になる大企業か、それとも待遇は高くないけれど60歳で定年になる中小企業か。事実上、大企業への希望退職の広まりでそんな図式になっているにもかかわらず、これを社会のルールとして一般化するのはいかがなものか、ということです。

もし法制化する場合は、以下の検討が必要でしょう。

①45歳定年制を導入する会社の規模を厳格にすること。例えば東証一部上場基準と同一にする、など。

②原則、入社時に同意した社員のみに45歳定年制を適用すること。中途の社員に関しては希望制とし強制されないこと。

③45歳定年制と、60歳定年制を行き来することはできない。給与制度を二つ持つことを前提とする。一般的に45歳定年制のほうが給与水準が高くなる。

④45歳定年制、60歳定年制どちらにしても、定年後の再雇用のルールを整備する。

ある程度規制を入れないと、全ての経営者に45歳で自由に解雇できる権利を与えて、終わりになるだけです。労働者目線では全く利益の無い制度変更となってしまいます。

大企業の話を聴くと「役職定年」という言葉を耳にすることがあって、雇用はするけれども管理職からは外す、みたいなことが一般化しているようです。中小企業の感覚とは完全にずれるなと思っています。中小企業の場合は年齢に関わらず優秀な人材にずっと働いてほしいのではないでしょうか。むしろ代わりがいなくて問題になっているくらいです。この役職定年の話も、45歳定年制の発想が大企業寄りな現象の一つの現われだと思います。

法律というのはいろんな企業の事情をひっくるめて制限を強制することになるので、「45歳定年制」が独り歩きして労働基準法第47条に悪い影響を与えないことを願うばかりです。