orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

ヘイズの人材不足指摘は的外れだ

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世界最悪?

どうにも納得できない記事だったので取り上げます。

 

tech.nikkeibp.co.jp

人材紹介のヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンは2019年11月21日、高いスキルを持った人材の需給効率を分析した調査「グローバル・スキル・インデックス」の結果を発表した。高スキル人材の確保が容易かどうかを示す指標「人材ミスマッチ」で、日本は調査対象34の国・地域の中で下から2番目だった。AI(人工知能)やビッグデータの技術者が特に不足している状況も改めて浮き彫りとなった。

 

考察

下記の記載に特に違和感をおぼえています。

 

ミスマッチの拡大を防ぐには「雇用年数や年齢でなく個人のパフォーマンスに基づいた報酬制度の導入」「入社時の能力でなく学習意欲やコミュニケーション力、創造性などに着目した多様な採用体制」などが重要とした。

 

この2点を行うと改善できるとの提案ですが、よく意味を考えてみましょう。

・完全に入社後の成果だけで給与を決めること。
・採用時は、学歴・社歴・職務経験で決めるのではなく、学習意欲・コミュニケーション力・創造性を採用基準にする。

本当にこれを日本に導入してうまくいくと思っているのでしょうか。

 

成果主義

まず一点目の成果主義の件ですが、成果主義を導入して散々失敗事例を積み重ねたのは有名な話です。

 

diamond.jp

成果主義は重要だが、それだけを評価軸にするのはあまりに危険――。『人事の超プロが明かす評価基準』の著者で、人事コンサルタントの西尾太氏はそう警鐘を鳴らす。では、成果主義の問題点はどこにあるのか。

 

ここに書かれていることは非常に重要で、パフォーマンスを測ることは非常に高度な判断が必要になります。安易に導入してしまうと社員に不公平感が生じ、その結果離職率が高まったり業務影響が出たりします。

かつ、社内で社員同士で成果を争うことにつながってしまいますから、社員同士のWIN-WINの関係が失われてしまいます。誰かを助けることで自分の成果を奪われる、そんなマインドを浸透させてしまうことになります。

社員給与一律で有名になったZOZO、ヤフー買収後はどうなっているか不明ですが、成果主義の悪い部分を嫌った人事制度はあまりにも有名です。

 

bizspa.jp

 競争しないことへのこだわりは、会社の勤務形態にもよく表れています。ZOZOは、基本的に基本給は一律で、ボーナス支給も一律だそうです。残業代などは別途支給されるそうですが、一律給与とは驚きですよね。
 その理由について前澤氏は9月26日放送の『ガイアの夜明け』(テレビ東京)にて、「社員どうしが悪口を言うのは最悪。給料の差や成功報酬を過激にやると『あいつはこうだよね』とか変なことがおきるので透明性を持ってやっている」と話していました。

 

正解は常に変化し続けている、というのが人事制度であり私はヘイズの「個人のパフォーマンスに基づいた報酬制度」なんて言う言い回しは誤解のもとでありこれまでの日本企業の苦闘を踏まえていないと思います。

また、日本社会って、かなり企業に社会福祉の責任を担わせていると思います。個人に対する税金を強化しつつ、企業の内部留保はどんどん積みあがっている話が有名です。

 

www.tokyo-np.co.jp

財務省が二日に発表した二〇一八年度の法人企業統計(金融・保険業を除く)は、企業が蓄えた内部留保に当たる「利益剰余金」が前年度比3・7%増の四百六十三兆一千三百八億円と、七年連続で過去最高を更新した。一方、働く人たちの賃金は伸び悩み、企業の利益とは対照的だった。専門家は、景気の不透明感から、もうけを賃金に振り向けない現状が続くとみる。

 

人生はたいてい、結婚や子育て、マイホーム購入や介護など、加齢とともにお金がかかるようになっています。それに合わせて企業が給与を割り増していくことで人生設計が長い間成り立ってきました。終身雇用が崩壊しつつ、正規・非正規の問題が発生しています。もし企業が社会福祉の側面から外れるのであれば、その内部留保、国に返しなさい、と思います。

国の仕組みとしてまだ、人生設計に対する支援が企業寄りのままなのに、一方で企業が高齢社員をどんどんリストラすると、今後ゆがみがどんどんひどい方向に行くんだろうなと思います。

 

採用基準の見直し

モチベーションとコミュニケーション力を採用基準にしろという提案も、これもまた大きな危険が伴っています。

人材採用の場に何度か立ち会っていますか、正直、誰が優秀かなんてわかりません。実際携わった方もそういう感想をお持ちではないでしょうか。

その中で、モチベーションとコミュニケーションは、面接の場で演出ができます。あるように演技できる人を優先して入社させると・・。結局はあの場だけだったのだ、と。

また、コミュニケーション能力が高いからと言って、仕事ができるとは決して限りません。コミュニケーション能力だけが高くて技術力がない人。たくさん見てきました。技術畑にいるからかもしれませんが、コミュニケーション能力が無かったら無かったで、信頼関係を深くしたりITの力を借りるなど、やりようはいくらでもあります。しかし技術力ばかりはどうしようもない。で、勉強します!って言うことと勉強することは別物。

一番信用できるのはやはり職務経歴書であったり、学歴だったりします(ぶっちゃけ話ですが)。学歴は二番目ですね。職務経歴が上。職務経歴が無い場合は年齢が若ければ若いほどなんとかなるか、なんて思います。

古臭いのですが、なぜここまで保守的かというと、日本は解雇規制が強いからです。なぜ解雇規制が強いかというと、前段の通り、社会福祉の側面が強いからです。個人に安定した生活基盤を提供し、人生設計しやすくする。

昨今は非正規社員の施策に対して、同一労働同一賃金であったり、限定正社員であったりと、社会福祉的な法整備を政府は強めています。

この点から言っても、なぜ「モチベーションとコミュニケーション力を採用基準に」というのは極論過ぎると思います。一度採用したら企業側も社員の人生に責任を持たなければいけなくなるから、です。そんな表層の理由を目的にしてはいけない。

 

風土に合った議論を

以前、下記のような記事も書きました。

 

www.orangeitems.com

もう役目を終えていいんじゃないかと思いますけどね。おそらく、OECDの構成員の人たちに、「就職氷河期世代」の人が全然いないんだと思います。当事者意識が全くないんでしょうね。

 

まぁ、耳を貸さなきゃいいだけですが。

このブログでは、とりあえず異論があれば表現するようにしています。

反対意見はあっていいものだと思いますから。