orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

職務記述書から始めるジョブ型雇用の概要を知る

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日立のジョブ型雇用の話、随分話題になっているみたいですね。

 

www.nikkei.com

日立製作所は7月にも、事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を起用する「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げる。管理職だけでなく一般社員も加え、新たに国内2万人が対象となる。必要とするスキルは社外にも公開し、デジタル技術など専門性の高い人材を広く募る。年功色の強い従来制度を脱し、変化への適応力を高める動きが日本の大手企業でも加速する。

 

ジョブ型雇用について理解するのなら、中途採用のシーンが最も具体的です。募集をかけるときに、どんな仕事でどんな条件のことをやってもらうのか、ということを明記しますよね。人事担当者を募集したのに入社したら経理の仕事を振られたら、「ウソじゃん」となります。年収と仕事内容を明確にしてから入社し、そこからはその仕事をすることが原則なので、これはジョブ型雇用の典型例と言えます。

この仕事のさせ方を社内でも徹底するということです。各社員は「職務記述書」というドキュメントに基づいて仕事をします。職務記述書には、以下のことを書くことが一般的なようです。

・役割と責任

・業務内容の詳細

・必要な経験

・必要なスキル

・期待する行動

まずは標準的な成果として報酬を設定し、実績に基づき給与が決まっていきます。

職務記述書が同じである二人がいるならば、それぞれの給与は同じだろうという考え方となります。

ジョブ型雇用とは対照的な雇用方法が、メンバーシップ雇用と言われます。

終身雇用の前提のもと、何の仕事をするかは決められていません。不定期な異動を行って幅広い業務を把握しつつ、管理職に昇進していくというやり方です。

ドラマ半沢直樹でも、主人公はいろんな現場に異動しながら、だんだん偉くなっていきましたよね。あれは完全なメンバーシップ雇用。

ここまで整理して考えると、IT業界ってかなりジョブ型雇用に近いことをやってきたと思うんですよね。

というより、転職すると給料が上がる現象は明確で、これって新卒で入った会社はメンバーシップ雇用に基づいて給与体系が決まっていくので、若い間は給与が機械的に安い傾向にあるということです。一方で中途採用時には仕事内容にて給与が決まるので、もし仕事ができたら、給与が跳ね上がる場合があるということですね。

一方で、中途採用で職務記述書に対し「できる!」と入ったのにできなかった場合は最悪です。その会社の中でそれなりのグレードに再評価され、給与も入った時よりダダ下がりということもあり得て、その時、居場所のなさを感じてすぐ退職してしまうことになります。

ですから、IT業界は転職が多い時点でジョブ型雇用になりやすく、そして大企業は待遇が良く転職しにくいのでメンバーシップ雇用が残っていたと言えるでしょうね。

この「職務記述書」ですがいくらIT業界がジョブ型雇用の色彩が強いと言っても、社内で個々人の職務記述書を設定している会社はまだ少ないと思います。もっと業務内容を抽象化し、

・メンバー~リーダー~マネージャー~管理職・スペシャリスト

みたいな枠で決めているところばかりじゃないでしょうか。

ただ、社外の募集に対しては職務記述書を作るのに、社内では作らないと、中途採用で入社した人の方が給料が高く、新卒から長くいる人の方が給与が少ないなんてことが普通に起こります。

変な話、転職サイトに転職希望を出したところ、自社から今の給料より断然高い金額で、今の自分の仕事と同じ内容でオファーが届いた、なんて話も聞きます。それなら、自社に転職すればいいじゃない。髪型変えてマスクして、話し方も変えて、ね。冗談ですが。

ですから就労条件を社内でも社外でも標準化するというのは、これはいいことだと私は思います。

一方で、職務記述書と外れたことを指示された場合どうするか。よく、拒否しますという人もいますが、これは逆で職務記述書を書き換えて給与を変えるだけでしょう。ということはジョブ型に移行したとしても柔軟性が無くなるわけではないと思います。

職務記述書は固定的なものではなく、会社のありようが変わればどんどん新しく生まれたり、変わったりするものでしょうから。

 

ま、会社に入れば人生のステージに合わせて自動的に給料が上がっていく、そんな時代の終わりが明確になる。ということは、人生のステージは、仕事の能力によって左右されてしまうということです。全員が結婚できなくなるし、全員が子どもを作れなくなる。そういう捉え方もできるでしょう。

そう考えた時、生きる権利ってどうなんだろう。別に息を吸って、ご飯を食べて、寝るだけが生きるということじゃないよね。健康で文化的でなきゃいけない。

社会が、仕事ができる人だけに排他的になればなるほど、社会はやせ細っていくような気がしてならないんですよね。仕事しない人に高給を与えるのは確かに不要だけど、一方で人生ってステージによってかかるお金に差が出るのは当たり前だからね。

いやいや、世知辛い世の中のルールがますます進む今回のジョブ型雇用の話ですが、大きな矛盾は依然として存在するなと思うのです。ジョブ型雇用で救われない人を、国はどう救うのかな(救わないのかな)。