ソフトバンクグループの新30年ビジョンを再読するとわかること

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ソフトバンググループを煽る記事

最近はWeWorkでつまづいたソフトバンクグループのことを煽る記事を目にするようになりました。

 

president.jp

一方、市場参加者の中には、投資会社としてのソフトバンクの戦線拡大のペースがやや性急すぎると危惧する者もいる。最近、同社が100億ドル以上を投じてきた米国のウィーカンパニーがIPOを延期せざるを得なくなったことは、そうした懸念が高まる一つの要因となった。

 

gendai.ismedia.jp

6月14日の記事「まさかとは思うが『ソフトバンク・ショック』はありえるのか?」で危惧していた内容がいよいよ現実のものになるかもしれない。

この記事の副題に「ITバブル崩壊前夜と似てきた」とあるように、問題はソフトバンクだけにあるのではなく、同じようにベンチャー・バブルの波に乗ってきたIPO業界にも降りかかるから、世界規模の激震になる可能性もある。

 

それぞれ刺激的なタイトルですが、内容を読むとその根拠が緩いのがわかります。ソフトバンクグループの事業規模はもはや個人レベルでは想像がつかない大きさです。WeWorkの件は複雑で巨大な計算式のうちの一つの変数に過ぎないにもかかわらず、この件だけで投資活動全体を否定するのは相当に無理があろうと思います。

 

新30年ビジョン

企業は3~5年を単位として中期経営計画を策定するのは最近のトレンドですが、ソフトバンクグループは「新30年ビジョン」という普通はあり得ない期間の長期ビジョンを、2010年6月に発表していたのを覚えている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。

 

group.softbank

「ソフトバンク 新30年ビジョン」は、ソフトバンクグループが次の30年も引き続き情報革命で人々の幸せに貢献し、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指すという方向性を定めたもので、創業30年の節目を迎えた2010年の定時株主総会において発表されました。

 

サマリーということもあり、全文を確認したい方は書籍もありますので是非。

 

ソフトバンク 新30年ビジョン (単行本)

  

当時、このビジョンの報道を見ても、時価総額200兆円・グループ5000社、のような部分ばかりが切り取られ、テクノロジー的な観点ではどこも触れていないまま、人々の記憶は薄れていったと思います。

ただ、この発表から10年弱経とうとしている今、この内容を読むと驚くぐらい現在の状況を言い当てている面を強く感じます。

 

トランジスタの数

人間の大脳には約300億個の脳細胞がありますが、ムーアの法則に基づいて計算をすると2018年にワンチップに入るトランジスタの数が300億個を越えることになります。私は20年前に同じ計算をしましたが、そのときから答えは変わっていません。

 

こちらは下記の記事。2019年8月の情報です。

news.mynavi.jp

構成は最大8 Chiplet+I/O Chipletの構成で、最大64core/128Thread動作が1 Socketで実現可能。1 Socketの合計トランジスタ数は320億個にもおよぶ(Photo02)。

 

ノイマン型コンピューターからの脱却

コンピューターの進化により、脳型コンピューターが生まれ、300年後の人々は、脳型コンピューターを当たり前のように使っていると、私は想像します。

 

これは量子コンピューターがいよいよ実用段階に入っている現在を想起させます。

 

www.sbbit.jp

近年、現代社会に広く普及している従来型(ノイマン型)(注1)のコンピュータとは異なる仕組みで動作する「次世代コンピューター」が注目されている。

 

先日はGoogleが量子コンピュータの発表をしたばかりですね。

 

AI

そうなるとわれわれ人類は「人間より頭の良い存在」があることを許すべきか、コンピューターを制御できなくなるのではないか、クローン羊の議論があったように、科学技術をどこまで許すのか、人間にとって何が有益で何が有害かという点について真剣な議論がなされることになるでしょう。
しかし、人工知能により人間の生活はより便利になり、コンピューターは止めることができないくらい進化することになるでしょう。

 

下記はつい先週のニュースです。

 

www3.nhk.or.jp

急速に活用が広がるAI=人工知能をめぐっては、不当に人が差別されるなど、思わぬ副作用が起きるおそれも指摘されています。このため企業の間では、AIを活用するうえでの倫理上の指針を設ける動きが始まっています。

 

個人の尊厳を脅かすAIの使い方は、今まさに問題となっていますよね。

 

クラウド、IoT、5G

紙の新聞や雑誌、書籍、CDで音楽をトラックで運ぶことは、ほぼ100%ありえなくなる。情報というものはデジタルが当たり前になる。あらゆる電化製品、電化製品だけでなく靴やメガネなど、あらゆるものにチップが入り、無限大のクラウドと超高速のネットワークでつながり、「見る」「学ぶ」「出会う」「遊ぶ」などさまざまな感動の体験が進化します

 

最近は音楽をダウンロードするのではなく、ストリーミングで聴いているかたも多いのではないでしょうか。だんだん端末に保管して運ぶという概念が無くなっていき、クラウドからオンデマンドで取得し消費する。5Gの時代が来るとさらにその傾向は強くなっていくのだろうと推測しています。

 

ビジョンファンド

中央集権ではなく、戦略的シナジーグループがどんどん分散・分権して、お互いに自律している、そして協調しあう。だからこそ自己進化、自己増殖できるのです。出資比率20%から40%の緩やかな資本提携で、志を共にする集団を作る。そういうパートナー戦略で、組織構造を30年以内に5,000社規模に拡大したいと考えています。

 

これは、ビジョンファンドそのものですね。

 

先見の明、ではない

この件でわかることは、投資はセンスや直感ではなく、正しい情報に基づいて理論的に行われているということです。2010年において、テクノロジーの発達と、AIやクラウド、IoTの行く末をきちんと把握することがどれくらい難しいことかは私でもわかります。

2010年においては、まだiPhone 4が出たばかりでした。NTTドコモがXi (クロッシィ)というブランドでLTEを発表したのもこの年ですがまだ現在のように当たり前ではありませんでした。まだガラケーは使われていて、家庭に光回線がようやく普及しはじめたころです。AWSを筆頭とするクラウドもまだ知名度は低かった、そんな時代です。

これらの情報を適当にひらめいたのではなく、マスメディアの情報にはない先端情報を孫さんは入手していたということになります。

一つ、確実に言えることは、誰にも知られていない情報を先んじて入手することが投資の成功につながっているということです。

ですから、冒頭のようにWeWorkのつまづきだけでソフトバンググループのことを語るのは誤りであり根拠に薄いということになります。情報網に陰りがあれば話は違いますが、どうもこの2010年に発表された新30年ビジョンと、現在の状況を比較するに、とんでもない情報源を保有しているのではないかと勘繰りたくなる次第です。それぐらい、今を言い当てているし将来はその方向に向かっている、と感じます。