orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

生産性のなれのはて 向上させるだけでは人は幸せになれない

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生産性を考える

世の中、生産性一色ですよね。

この前私のこどもに、「私は生産性ネイティブ世代だ」って言われてハッとしたわけです。今の学生世代、生産性を上げて行かないと世の中の負け組になるよというメッセージを学校からというよりインターネットから随分インプットされているようです。そりゃあ政府が生産性向上を唱え続けているのですから、そこから経済界・マスメディア含めて生産性ブームとなるのは当然かと思います。

こどもたちは、学業に対して良い成績を残すために、どのようにすれば生産性を高められるかかなり突き詰めているようです。昔は、そういった効率の良い勉強法を目指すと「要領のいいやつ」みたいな扱いを受けたものですが隔世の感です。インターネットも含めてどのように動けば成績が上がるか。生産性と言う言葉自体は大人の専売特許ではなく、こども世代にも重くのしかかっています。

 

上げればいいのか生産性

さて、この生産性ですが、今むやみやたらに「上げよう」となっています。みんな生産性を上げさえすれば何とかなるという風潮があります。もちろん上がるに越したことはないのですが、生産性を上げて上げて上げた先には何があると思いますか。それは過剰設備です。リソース過多という言い方でもいいかもしれません。人間で言えば、生産しようと思えば生産できるけど、もう生産しなくていいという状態です。会社に来たら3時間で生産。ここから定時までにあと5時間あるけど、何も生産するものがないや。ということです。今の世の中の制度だと、あと5時間は仕事をしている振りをしなければならなくなります。早く帰っても8時間働いたことになるのならいいんですが、そんな会社はありませんよね。

一日8時間を超える仕事があるから、やれ定時で帰れないだの残業だのブラックだのという話になるわけですが。逆に生産性をどんどん上げて8時間ピッタリだと、これは人間にとって理想的です。ただ生産性というものは原理的には青天井であり、8時間をどんどん割り込んで0を目指します。人をロボットに置き換えたとき、人だけに注目すれば生産性は向上し、全部ロボットになった瞬間に0になります。じゃあロボットの生産性は・・・ロボットのメンテナンスは・・?みたいな話になり経営的には永遠の課題にはなりますが、何しろ生産性というものの正体を冷静に見つめる必要があります。

今、生産性を上げる議論になっているのは、単に人口減少との兼ね合いでちょうどいいところを探っているだけであり、行き過ぎるときっと、人間の働くスペースを奪います。もしくは、生産性を上げることに限界がある仕事です。例えば実店舗については必ず人が開店時間はいなければいけませんから、いなければいけない人はいくら生産性を上げてもいなければならない。店番しといて~、って言われて生産性を上げようと思っても、閉店時間を早めるわけにはいきませんよね。まあたまにそういうラーメン屋もいますが。スープが無くなり次第終了とか。そうすると必ず開店しているというサービスレベルを落とすことになる。そういった意味で、現実には生産性を上げづらい場所があってそういうところに人間が偏っていくというのはあると思います。

例えばアマゾンも、倉庫の生産性を上げる引き換えに、荷物を運ぶ仕事を起業することを推奨しているという記事を見かけました。荷物を運ぶことの生産性を上げるためにドローン配達など挑戦したようですが、どうやってもこの部分の生産性を上げることは難しいと判断したのか、人の配置を流通そのものに振り向けようとしている動きがあります。

 

japan.cnet.com

Amazonは、自社の配達能力を向上させる取り組みを続けている。
Amazonは米国時間6月28日、新たな「Delivery Service Partners」プログラムで、同社の荷物を配送する企業を創設する起業家を支援すると発表した。

 

人間がみんなで、生産性を上げよう上げようと努力したら、結局は人間は生産性の上がりにくい仕事に固まっていくということを考える必要があります。また生産性の上がらない仕事は性質上、給与も上がりにくいので、「高い生産性を作り出す人・それを守る一部の人」と、「生産性が上がらない仕事を支える大量の人」で給与格差が広がっていくことは間違いないなあと思う次第です。

 

生産性が上がったらまず考えること

生産性を上げると、自分は優秀であり給与が保証されるべき、と感じるかもしれませんがこれは大きな間違いです。意外と自分の足元を自分で掘っているかもしれません。最後はその穴に自分が落ちるのです。自分の仕事の効率をどんどん上げていった結果、自分の仕事自身が概ね自動化され自分の仕事がなくなっていく。

これは何度か私が常駐SE時代にいくつかの現場で感じたことです。常駐させられるだけあって、だいたいにおいて生産性の低い現場が多かったです。無駄なことをするから仕事が増えて残業が増えて人手が足りなくなるのは間違いありません。この無駄を消す仕事をどんどんやっていくと現場はどんどんホワイトになります。ホワイトホワイト・・どんどんやっていって、結局は自分すらいらなくなるという。しばらくは効率的にしたことで高い評価を受けるのですが、まあ火のないところで消防士は仕事できませんから、生産性のなれのはては、必ずしも人を幸せにしないということになろうと思います。

したがって、生産性を上げた時は、その余った時間を使って新しい何かを生み出さないと、きっと高くなった生産性が自分の机と椅子すら消しに来ようとします。怖いですね。生産性のなれのはてをきちんと理解してキャリアパスを考えていきましょう。新しい何かを生み出すことは、「生産性を上げる」という概念に入っていないのがポイントです。表紙の「Think outside of the box」という言葉はなかなか良い言葉です。生産性の向上とともに自分が入っている箱はどんどん小さくなっていくのですから、その外側を大きくしていく方法を考えねばならないですね。