orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

『借りるようにして読む』と『作者に印税が入らない』ことに対する経緯と解決策

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概要

紙の新書を買ってすぐに転売すれば安く内容を手に入れられる、そんなメルカリの子会社メルペイの主張が話題となっています。

 

www.itmedia.co.jp

 メルカリ子会社のメルペイは2月20日、実店舗などで使えるスマートフォン決済サービス「メルペイ」に後払いサービスを提供すると発表した。今春からスタートする。「後払いで本を買って、読み終わったらメルカリで売却し、その売上金で代金を支払う」といった使い方を想定する。

フリマアプリ「メルカリ」で一部の利用者に提供している後払いサービス「メルカリ月イチ払い」をリニューアル。名称を変更し、メルカリだけでなく実店舗での決済にも利用範囲を広げる。メルペイ残高が不足していても翌月払いで商品を購入できる。

 同社の青柳直樹代表取締役は、「新しい本を『借りるようにして読む』という、メルカリとメルペイならではの体験を届けられる」と話す。

 

これに対し、勝間和代氏が、転売する行為を繰り返しても著者には収入が入らない、とうことで大批判をされています。

 

katsumakazuyo.hatenablog.com

しかし、著者にとって、本を書いても、原則として新刊の印税しかこないというビジネスモデルだということを、メルカリの代表取締役や参加者はどこまで理解をしているのでしょうか?

もちろん、ブックオフも以前から存在し、中古本はいくらでも市場に出回っていますから、これは今に始まった問題ではありません。ただ、ブックオフは買取価格が安いこともあり、新刊のビジネスとはある程度棲み分けがなされていました。

それが、今回のメルペイは、著者や出版社へのなんの敬意もなく、そのような使い方をわざわざ助長するような決済方法を取り入れて、それを想定ビジネスシーンとするのはあまりにもひどいです。

 

ZOZOの田端氏がこれに突っ込んでさらに話題となりました。

 

この件について考察を加えてみます。

 

中古ゲーム問題と類似

作品に関して中古を転売するとクリエーターには何も手に入らない。この議論は相当昔からある議論です。

とても似ている問題として中古ゲームソフトの話題があります。新作ゲームソフトを転売しても、ゲーム会社には一円も入りません。この話題は1990年から2000年にかけて大きな問題となり、最終的には最高裁判所までもつれました。

 

timesteps.net

さて、この中古ソフト裁判においては「頒布権」というものが焦点となりました。
著作権法の2条3項には、
この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
という条文があります。メーカー側はこの定義がゲームにも含まれると主張。そしてこの「映画の著作物」には「頒布権」という著作権者が複製して占有頒布する権利が発生するのですが、これが中古の売買時にも消えずに残り続けるため、中古ソフトの販売は著作権違反、という主張がなされました。
反面、中古ショップ側は、この頒布権は映画のフィルムのような上映を前提とした限られた場合に適用されるものであり、ゲームソフトの流通においては異なる(中古売買時点では頒布権は消尽している)と主張します。

この「映画の著作物とゲームは同じ扱いのものか」「頒布権はどこで消尽するか」が今後の裁判の焦点となります。

 

今回の新書とメルペイの転売のケースと似通っています。著作物を発生させた著者だけが占有して頒布できるべきだ。いやいや、中古になった時点で頒布権は消滅していて、転売するのは自由だろう。

最終的にはこの裁判は、中古ソフト販売側の勝利で終わることとなります。

 

timesteps.net

そして2002年4月25日には、最高裁判所第壱小法廷においてメーカーの上告を裁判官5人の全員一致により棄却。これにより中古ソフト販売が合法であるという判決が決定することとなりました。

判決要旨によると、『家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡された複製物について消尽し,その効力は,当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない』とされ、ここにより頒布権は一度適法に譲渡された時に消尽するとされ、中古ソフトの販売が著作権法違反ではないという判決が確定することになりました。

 

従って、本も昔から「古本」として流通している事情から考えると、現時点で違法性を理論武装するのは相当難しいと言えるのではないかと思います。

また、筆者に一円も入らないシステムとして別に浮かぶのは、図書館です。良い本をいくら出しても、図書館で回し読みされたら筆者もたまりません。これについても別の仕組みがあります。

 

www.hc.lib.keio.ac.jp

著作権法では学術研究の発展のために、図書館での図書の貸出や文献の複写が例外的に認められています。
第38条により、非営利・無料の貸与に関しては自由に行えると認められています。
また、第31条により以下の条件を満たす場合に限り、著作権者の許可なく複写することができます。

 

したがって、非営利であれば貸出は自由。頒布権も売った時点で消滅。著者はある程度の覚悟を持って新刊を出す必要があると思います。

 

どうすべきか

本の印税ってどれくらいなのかな?という質問に関する記事です。

 

kot-book.com

本の印税は基本的には【本の定価の10%】が支払われることになります。

 

と言うことのようです。ただ今後下がってくるかもしれないという予想もありました。

一方で、紙の本であれば転売や図書館のように、新しい人に作品が渡っても著者に集金されないリスクがありえます。電子書籍であれば、個人アカウントとデバイスに紐づいているため、前項のリスクはぐっと下がっていると言えます。

一つの方法とすれば、電子書籍しか出さない、というのが手段としてあります。すっきりです。メルカリも手出しができません。

もう一つの方法です。紙の書籍だけ印税率をぐっと上げるのです。例えば1つの本あたり5回は回し読みされると考えれば、印税は5倍にする必要があります。しかし印税率50%にすれば出版社の商売になりません。したがって本の定価に増額した印税をあらかじめ含める必要があると思います。本の書籍と電子書籍に値段の差をもっとつけるべきかと思います。紙の本はそれだけ高価になると同時に、頒布する権利も有しますので、理にかなっていると思います。

 

紙の本を出した時点で他人に再頒布されやすいメディアになることを自覚し、そもそも紙で出さないか、出す前に前もって印税を高くすることで対応をすべきだと私は思います。