orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

海賊版サイトに対する現状の議論まとめ

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昔、興味があっていろいろと調べてたんだけど、今日のニュースで取り上げられていた、海賊版サイトの件。

 

www.asahi.com

 漫画の海賊版サイトのデータを配信して出版社の著作権を侵害しているとして講談社、集英社、小学館、KADOKAWAが米国IT企業「クラウドフレア」に約4億円の損害賠償などを求める訴えを来月初旬にも東京地裁に起こす方針を固めた。関係者への取材でわかった。

 

ほとんどの人が、クラウドフレアって会社が海賊版サイトを配信してるんだな、と思っているだろう。これは間違ってはいない。配信しているのは間違いなくクラウドフレア社の設備だ。ただ彼らがやっているのは配信部分だけの話だ。オリジンサーバーと呼ばれる、大元のコンテンツは彼らは持っていない。クラウドフレアの利用者が、どこにコンテンツがあるかを指定する仕組みで、大元のコンテンツは別の場所にある。

この別の場所というのがやっかいで、マイナーな法律の及びにくい国にサーバーが置かれていることが多い。しかもその業者も「絶対に身元は明かしません」みたいなポリシーのサーバーホスティング会社が存在している。

いやいや、クラウドフレア社が配信止めればいいじゃん、という主張はごもっともだ。ただ、どうも彼らの主張は、下記の彼らのサイトに見て取れる。

 

CloudflareはWebコンテンツをホストしないため、Webサイトからコンテンツを削除することはできません。 Cloudflareは、著作権所有者または著作権所有者の正規代理人から苦情の証拠を受け取った場合、正当な著作権の苦情に対応します。正当な苦情が提示された場合、CloudflareはWebホスティングプロバイダーに関する情報を提供します。

 

つまり、彼らは、オリジンサーバーの開示までしかしないのだ。

したがって、きっと、出版社はオリジンサーバーを探し出すまではできたと思うが、そこまで。運営者までたどり着けないというのが実情だと推察する。

一方、ドメイン名はどうだろうか。ドメイン名はWhoISデータベースに運営者が登録されているだろうという話になる。

しかしこれも、サーバーホスティング会社と同様、WhoISの中身を隠してくれるドメインプロバイダーが存在していて、ここでもオリジンサーバーと同じ議論になる。

インターネットの世界でまだ話がかみ合うのは国内の話である。世界に出ると無法地帯の場所もありそこともつながっているからタチが悪い。

そして、配信する、いわゆるCDNというサービスを行っている企業と、著作権の関係は結構裁判まで持っていかれるが、これも出版社には分が悪い状況だ。

 

gigazine.net

インターネットインフラ企業であるCloudflareが「著作権侵害サイトをブロッキングせず野放しにし、著作権侵害をほう助していた」として権利者から訴えられていた件について、2021年10月6日付けでCloudflareの主張を認め、著作権侵害のほう助には当たらないとする判決が下されました。

 

結局のところ、運営者だって出版社が動き始めていることを察知したら、さっさとオリジンサーバーやドメイン名を捨てて、新しいサイトに引っ越したりするので、これはもう詰んでいる感じになっている。

一方で、国内ではじゃあ、被害が検知されたらブロッキングしようという議論さえあったが、結構な炎上になって立ち消えになった歴史もある。

 

www.jiji.com

 次の手をどうしたらいいか、難しいところですね。違法サイトへのアクセスを強制遮断する「ブロッキング」という方法も検討されましたが、憲法が保障する「通信の秘密」が侵害される恐れがあります。いつか「政治家を批判するブログもブロッキングしよう」となってしまうことにもつながりかねず、ブロッキングを「漫画家の権利を守るため」と言って安易に導入することには強い違和感があります。

 

今回、出版社がクラウドフレア社を日本の裁判所に提訴したことについては、クラウドフレア社の配信サーバー(エッジと言われる)が日本にあることが根拠となっているんだと思う。でも、じゃあエッジサーバーを日本から撤去したらどうなるんだろうとも思えなくもない。あと、金額も被害額からすると少なすぎるのも注目に値する。

後、どうもこの議論、広告側の方からの攻め手の方が有効に機能しそうなのは昨日のニュース。

 

www3.nhk.or.jp

成果報酬型のインターネット広告「アフィリエイト広告」によるウソや誇大な宣伝の対策などを議論してきた消費者庁の検討会は、広告主の責任を明確にすることなどを消費者庁に求める報告書案をおおむね了承しました。

 

一件、インターネット広告の信頼性の話のように見えるが、海賊版サイトに広告を掲載することそのものについて踏み込んでいる話。サイトそのものの著作権侵害については誰しも認めるところなので、そこに置いてある広告を配信している会社に注目することで、海賊版サイトの配信のモチベーションを取り去ろう。これが一番今、効果的ではないかと思われる手法であろう。

数年前からすれば議論はかなり進展しながらも、結局は野放しのままというのが現状に思う。

 

www.jiji.com

 漫画を無断でウェブサイト上に公開する海賊版サイトが後を絶たない。「漫画村」の摘発後も同種の違法サイトが次々登場し、新型コロナウイルス禍の「巣ごもり」とも相まって、上位3サイトの月間アクセス数は流行前の26倍に急増した。漫画家からは「創作意欲を失い、将来の傑作が消えてしまう」と怒りの声が上がる。

 

これぐらい知っておけば、ひとまず今の状況は把握できよう。

結局、ここ数年の動きは、海賊版サイトへの参入障壁が上がっているだけで、上位のサイトの寡占が進んでいるのも見て取れる。