orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

キャッシュレス業界のポイント還元赤字は本当に許容できるのか

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はじめに

私はほぼ現金で、キャッシュレス決済は使ってもクレジットカードまでなので、ここ最近の「ポイント還元〇〇%」という広告が乱れ飛んでいるのを横目で見てすごいなあ、本当なのかなあと思っているうちに一年が経ちそう、という状況です。

さて、そろそそ運営会社の決算も出てくるのですがかなり攻めた状況になっているようなのでこれをまとめてみます。

またその上で、現在の市場の状況を俯瞰し、今後の動向について考えます。

 

決算状況

キャッシュレス決済で強い、LINE、PayPay、楽天、メルカリの決算状況です。 

 

LINE(2019/7/24)

www.nikkei.com

LINEが24日発表した2019年1~6月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が266億円の赤字(前年同期は29億円の黒字)だった。スマートフォン決済で大規模なキャンペーンを行い、先行投資が膨らんだ。稼ぎ頭の広告事業では新たに導入した商品が下期から本格的に収益に貢献する見通し。決済への先行投資をどこまで補えるかが焦点となる。

 

PayPay(2019/6/28)

kigyolog.com

売上収益595百万円に対して販売費及び一般管理費が37,157百万円です。
そのため当期利益はマイナス36,787百万円(367億円)となり、とんでもない決算状況になっています。

 

楽天ペイメント(2019/5/10)

tech.nikkeibp.co.jp

楽天も決済サービス「楽天ペイ」を含む「楽天ペイメント」事業は売上高64億円、営業損失12億円と赤字だった。楽天ペイメント担当の中村晃一常務執行役員は「楽天ペイはきちんと加盟店から手数料をいただき、64億円を売り上げた。システム開発などの費用が先行するためまだ赤字だが、少額に抑えられた」と話し、他社との違いを強調した。

 

メルカリ(2019/7/25)

www.nikkei.com

フリーマーケットアプリ大手メルカリは25日、2019年6月期の連結最終損益が137億円の赤字(前の期は70億円の赤字)となったようだと発表した。これまで売上高以外の業績予想は開示していなかった。スマートフォン決済「メルペイ」への先行投資や、従業員の積極採用による人件費の増加で前の期より赤字幅が拡大した。

 

分析記事

いくつか現状を分析した記事を集めます。

 

BUSINESS INSIDER JAPAN(2019/7/11)

www.businessinsider.jp

肝心のQRコード決済別サービスの「認知状況」は、なかなか興味深い。100億円還元を2回も実施したPayPayはさすがに認知度が高く、対象1万6994人に対して、認知度70.4%とトップ。

2番手は、同じく大規模なCMや還元キャンペーンを打ち出している競合かと思いがちだが、この調査では「楽天ペイ」だった。

楽天ペイは、PayPayやLINE Payなどに比べるとプロモーションは派手ではないが、楽天カードユーザー向けに実質5%還元のキャンペーンを実施したり、楽天の店舗向け営業力を生かした対応店舗数など、地道で着実な営業を続けていることで業界では知られている。

「300億円祭」で話題になったLINE Payはこの調査では認知度3位の59.7%にとどまった。実質的に「国内3強」と呼べるのは、PayPay、楽天ペイ、LINE Payだということになる。

 

日刊SPA!(2019/6/10)

nikkan-spa.jp

 さて、ここでみなさんがもっとも気になるのは、やはりどのキャッシュレス手段をメインで使うべきかではないでしょうか。企業の財務諸表や事業計画を読み解くリサーチャーとして、今回はその答えを用意しました。

 ずばり、生き残るのは「メルペイ」です。

 LINEやソフトバンクなど、日本を代表するIT企業がすでに存在するのに、なぜメルカリ?

 その理由を今から3分ほどで簡単に説明していきましょう。

 

BCN+R(2019/7/19)

www.bcnretail.com

ドコモLINEメルカリ・au楽天連合・ソフトバンクの構図に

 

APPBANK(2019/6/3)

www.appbank.net

スマホで使えるキャッシュレス決済の「何とかPay」、どれがお得なのか主要サービスを解説します。

 

大還元ブーム、リスクも

プラットフォーム事業を考えると、どの業界をみても3~4社で寡占となります。例えば私の本業のクラウド業界(IaaS)においては、AWS・マイクロソフト・Google、グローバルではIBMやORACLEなどで引っ張っています。キャリアはNTTドコモ・AU・ソフトバンクの3社寡占なのは言うまでもありません。コンソールゲームだとソニー、任天堂、マイクロソフト。一度寡占の状態となるとなかなかそのバランスをひっくり返すのは難しく、プラットフォーム業界というのは初期段階でのシェア獲得こそが王道と言えると思います。

キャッシュレスもまさにその段階であり、認知度で言えばPayPay、楽天ペイ、LINE PAYが3強で、メルペイがそのあとに続いているという状況がわかります。ここ最近はもはや寡占状態はほぼ完成し、これらの業者が横に組んで参入障壁を作るという段階に来ているように思います。

 

news.livedoor.com

PayPayおよびLINE Pay、メルペイは23日、各社のスマートフォン(スマホ)など向け決済サービス「PayPay」および「LINE Pay」、「メルペイ」がコンビニエンスストア「セブン-イレブン」の全国2万973店舗(2019年6月末時点)にて3社合同の第2弾キャンペーン「毎週最大300円相当お得な5週間」を実施すると発表しています。

 

楽天ペイは他の3社と比べて還元戦略も含め距離を置いているように見え、面白いところです。楽天経済圏と言う言葉の通り独自色を出したいということでしょうか。

なお、リスクポイントとして、気になる記事を見つけたので最後に指摘しておきます。

 

tamakino.hatenablog.com

大量のスマートフォンを用意して、大量のポイント還元をむしり取るグレービジネス「羊毛党」が下火にならない。それどころか、IT企業は新規顧客獲得のために、ポイント優遇を大型化しているため、ますます羊毛党が暗躍することになっていると電商馬小雲が報じた。

 

ここ最近思うのが、昔はアメリカで流行したものを日本に持ち込めば成功するという話。今は実は中国が日本の未来を行っているのではないかという事実です。ITに関しては中央集権国家らしく、民衆の抵抗が弱くどんどん新しい技術が適用されているのが中国です。従って問題も日本の先に起こる。

7Payの事件でも中国が不正利用に関わっていたように、企業の意図と違う使い方をする技術(?)も中国が先に行っていると思います。今、先行投資ということで様々な会社がポイント還元赤字を大盤振る舞いしていますけれども、ボンヤリしていると羊毛党のような組織が日本でも暗躍するのではないかと思います。

本当にポイント還元赤字は許容できるのか、これは先行投資による赤字がきちんと回収できて始めて許されたことになると思います。上記のような案件が中国で実際に起こっている以上、不正利用を監視し食い止めるような機構を業界全体で運用しないと日本でも負の影響が出るような気がしてなりません。