orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。



ダウンロード違法化の件はなぜ騒ぎになっているかを簡単に言う

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ダウンロード違法化に対して緊急声明が出る

今日、文化審議会著作権分科会のダウンロード違法化に関する報告書に対して、緊急声明が出ました。

 

www.itmedia.co.jp

私的利用目的でのダウンロードが違法となる対象範囲を見直し、規制対象を音楽や動画のみの現状から漫画など著作物全般に拡大することを検討している文化審議会著作権分科会の報告書に対し、法学者や弁護士を中心とした84人と1団体が連名で、「さらに慎重な議論を重ねることが必要」とする緊急声明を2月19日に発表した。

 

本件、たくさんの報道が出ていますが、なぜにここまで揉めているのでしょうか。なかなかわかりにくい様子なので、わかりやすく説明してみようと思いました。

 

資料

文化庁「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書」

こちらが話題となっている文化庁の報告書。

文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書の公表について

 

共同声明 「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する緊急声明・「ダウンロード違法化の対象範囲」の具体的制度設計のあり方について

こちらが緊急声明。

共同声明 「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する緊急声明・「ダウンロード違法化の対象範囲」の具体的制度設計のあり方について

 

何が問題になっているか

緊急声明の『「ダウンロード違法化の対象範囲」の具体的制度設計のあり方について』にある、『2.検討の視点:「立法目的と立法事実」「国民生活への影響」「誰が何を求めているか」の吟味を。』という章が非常に分かりやすいです。

そのわかりやすさとは。

 

下記の文面は、国民向けに相当にかみ砕かれた表現になっています。

例えば、違法にアップロードされた著作 物には、漫画の一コマ、書籍のうちごく短い数行の文章の転載、一部分に他人の著作物の違法な 転載が含まれる著作物など様々なものがあり、これらがSNSやウェブサイト等に掲載されたも のについて、国民の情報収集・コミュニケーションの過程において、スクリーンショット、コピ ー&ペースト、ダウンロードなどの行為が日常的に行われている。このように、国民が日常生活 において思索を深め、意見交換をし、表現を行うといった知的生産活動を行う場合には、資料を 収集・保存する目的で、ネットワーク上に掲載された静止画・テキスト等の複製を行うことが一 般的に行われているのである。また、マンガ家等のクリエイターの創作活動や研究者等の私的な 研究活動のための参考資料として、違法にアップロードされた著作物も含め、様々な形でダウン ロードが行われている4。これらのダウンロード行為のうち最初に述べた海賊版のケースを除けば、 基本的に著作権者に深刻な経済的打撃を与えていることを示す事実は把握されていない。 

 

例えますと、真夜中で歩行者信号が赤信号で車が全くいないときに、無視して渡る人がいるとします。今、この行動に対して検挙される人は全くいないわけです(もちろん私はやってませんが)。

なぜかと言えば、「誰にも迷惑をかけていないから」となります。

このように、法の運用はある程度柔軟に運用されているのが現実です。

一方で、このダウンロード違法化においては、著作権侵害、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いということになります。もし著作権を侵害する静止画やテキストであれば、スクショだろうがコピペだろうが全部違法扱いです。

今回は、海賊版の対策という話だったのに、なんでまた海賊版の被害ルートとは全く関係ない行動まで違法化するんだろうというのが今回のこの緊急提言の趣旨のように思います。

交通事故を無くすために赤信号無視のルールを厳格化するけれども、もう真夜中だろうが無人だろうが何でもかんでも取り締まることになってしまい、もともとの交通事故を無くすという目的から大きく外れているのでは、という例えが最も近いのではないか、と思いました。

今回の緊急声明は、「もっと現実に沿って、海賊版被害を食い止めるためのスマートな対策を考えようよ」という意見に見え、冷静かつ適切な内容だと思いました。現行の「ダウンロード違法化」をそのまま通してしまうと、国民が、今までのように自由に気軽にインターネットを利用できなくなってしまう。萎縮してしまうと言っているのです。赤信号の例に例えれば、「車の量が多い場合」「悪意がある場合」など、明らかに有害な場合に条件を留めるべき、と言うことになろうかと思います。

 

感想

緊急声明に関しては、大学教授や弁護士、著名な研究者などが作成した記事の割には、とても分かりやすく書いてあってとても論点がはっきりしたと思います。

一方で、文化庁の報告書は一般国民にはとてもわかりにくくて、その割には大変なことが書いてあるのでこれだけ問題になっているということと理解しています。

目的は、「海賊版被害の撲滅」なのは同じだと思いますので、ぜひ正しく議論が進むことを一国民として願っています。

確かに、萎縮したくないです。