配置転換施策のその後
RPAで間接部門をリストラしてクリエイティブな領域に配置転換。なんとなく聞こえのいいこの施策も、結局は人減らしになるという記事を書いたばかりでしたが、直後に注目すべき関連記事を目にしました。
富士通は19日、早期退職制度により3月末までに2850人を削減すると発表した。間接部門から営業などへの配置転換も進める。米アマゾン・ドット・コムをはじめとするIT(情報技術)大手がクラウド市場で大きなシェアを握るなど、業界が激しく変化するなかで構造改革を急ぐ。
2018年10月にグループで5千人規模の配置転換を実施する方針を打ち出していた。グループ外への転職を促す「転進支援制度」で退職割増金を加算。今年1月末までに2850人が応募したことから、2千人強を配置転換することにした。人事や総務などに所属する人材の一部は研修を受けたうえで、営業やシステムエンジニアなどITサービスに関わる職種に転換する。
富士通が5000人規模の配置転換を行うという件は以前から注目していました。特に富士通はRPAのパッケージも持っていますしソリューションも他社に行っていますから。まず一番先に自社から手を付けるのはごくごく自然でした。
そして結果は、
約5000人のうち、2850人が退職。2000人強が配置転換。
つまり、半分以上の人が配置転換を拒否し転職したという結果です。
これが現実だ
前回の記事の通り、たくさんの企業が間接部門の工数削減をRPAで目論んでいます。
さて、おそらく国内で一番目にやり遂げた富士通。現実はこの結果です。
長い間、間接部門で就業していた方が、来月から営業だ、システムエンジニアだと言われて拒否した人が半分以上いるということです。富士通はまだ経営的に余裕がありますから退職割増金を計上できましたし、転職先もまだ豊富にあると思います。これは富士通が非情な会社ということでは決してなく、「十分な退職条件で」「退職先がまだ豊富なうちに」先んじて実施したことで、まだ優れた施策だと思っています。
今後、このようなリストラ策に転じる企業がどんどん増えます。宣言している企業もたくさんあります。その後半分以上が拒否して転職となると、間接部門中心に転職市場は人余りに転じます。当初はRPAが入らない中小企業で人手不足に悩んでいる会社は転職先となるでしょう。また、スタートアップ企業で大企業のバックオフィス経験者は優遇されるでしょう。しかし数に限りがあります。また、どうしても大企業の給与テーブルよりは下がります。最終的には転職したくても転職先がないため、配置転換を迫られるケースも増えていくと考えます。
しかし、この配置転換ですが、いばらの道です。まず間接部門と事業部門の給与体系や評価テーブルが全然違います。配置転換でいきなり給与を大きく下げることはないにしても、時限付となり結果が出なければ降格となることが通常でしょう。そうしないと、もともと事業部門で働いている人との差が不公平となります。そんなことが実際に起きているから、半分以上が拒否する状況となっているのは間違いないと推測しています。
これが現実です。現実の雲は思ったより素早く、日本を覆い始めています。
スリム化が目的ではない
このような配置転換を行う際、一番いい方法は記事の最後に書かれています。
リストラで費用を圧縮する一方、高採算が期待できる新しい事業分野の発掘も迫られている。
高採算が期待できる新しい事業分野へ配置転換することです。新しいだけに社内で誰もリーダーがいません。未来が明るい分野へ集中的に配置することで成功することは考えられます。例えば、アルバイト募集でも新規開店だとみんなスタッフが知らない者同士、全員業務に慣れていないが活気がある。下手に枯れた職場に、業務未経験の間接部門だったスタッフを当てても、みんな大変だと現場目線で思います。小さな事業会社を作って小さな間接部門を作ってもいいかもしれませんね。
ぜひ、この富士通の例を先行事例として、最適解を日本全体で考えていく必要があると思います。新卒も含めてどのようにジョブアサインをしていったら、生産性が向上し、国民全体が幸せに向かえるのか。早急に解決しなければいけない議題です。