orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

学生は新卒プラチナチケットを手放してはいけない

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新卒一括採用は見直してはいけない

この会議に出ている学生たちは、自分たちだけは新卒プラチナチケットが無くても勝てると考えているんだと思うんですよね。

 

www3.nhk.or.jp

学生と企業が今後の就職活動の在り方を議論する催しが開かれ、学生からは、新卒一括採用などこれまでの慣習にとらわれない対応を求める声が聞かれました。
就職支援にあたる企業などが東京 港区で開いた催しには、およそ70人の学生や、80社ほどの企業の人事担当者らが参加しました。

参加者はグループに分かれて、将来希望する働き方や希望に合った就職活動の進め方をテーマに話し合い、学生からは「異なる職種をいくつも経験してスキルを身につけたい」「企業と対等に本音で話せる仕組みができてほしい」といった意見が出ていました。

参加した学生の1人は「新卒一括採用があるため、失敗が許されないようなストレスになっている」と話し、別の学生は「大学生がいつでも就職活動ができるように変わってほしい」と話し、新卒一括採用などの慣習にとらわれない対応を企業に求める声が聞かれました。

IT企業の人事担当者は「仕事や就職活動に対する学生の価値観は変わっており、学生が自己実現できる環境を整えていかないといけない」と話していました。

 

いわゆるロスジェネの世代から口をはさみたい。私たちの時代には、新卒一括採用が歴史的に冷え込んだ時期でした。新卒プラチナチケットがない時代。結果どうなったかというと、我々の世代は大量に非正規雇用に組み込まれ、スキルアップが構造的にできない人たちがたくさん生まれ現在社会問題化しています。

スキルがほとんどない、新卒の母集団をできるだけ正社員化していく日本の仕組みは、私は安定化した社会を作るにあたってとても大事だと思います。欲しくても与えられなかった私たちからすると、「何を寝ぼけたことを言っているのか」と思ってしまいます。

 

新卒プラチナチケットをソシャゲに例えるなら

ソシャゲを始めると、いきなりSSSレアカードがたくさん手に入ったり、スタミナがどんどん回復したり、チュートリアルが何時間も用意されていたり。どのゲームをやってもそんな仕組みになっていませんか?。どうやったら課金できるのか?、それくらい新しくゲームを始める人は恵まれています。石やレアカード、ログインボーナスなどたくさんの特典を与えられ、ゲームの中で活躍できるようになってきて初めて、普通の待遇に戻ります。

社会の中において新卒という役割はこれに非常に似ています。会社でいきなり配属されてもまずはルールがわかりませんので活躍しようがありません。ですから、会社によっては半年、長くて数年の研修期間が設けられるところもあります。給料をもらって、勉強するというのは、ソシャゲと全く同じ状況です。日本が長いことこの制度下にあるので麻痺していると思うのですが、実際考えると、お金を稼いでいないのに教育を受けられ、かつ現場に配属されてからもOJT(オンジョブトレーニング)があるというのは厚遇以外の何物でもありません。

ノースキルなのに、経験者(中途採用)の人たちと同じ目線で比べられ、取捨選択されるような就職活動を新卒段階でやりたいというのは、どこかで悪い大人に騙されているような気がしてなりません。

 

具体的な発言に対して反論

「新卒一括採用があると失敗が許されないからストレス」

新卒でも中途でも、失敗など許されないし就職活動などストレスでしかありません。失敗して許される就職活動なんてありません。もっと言えば、就職氷河期の就職活動は百社以上受けて全部落とされるという大変なものだったということを強調したいと思います。新卒プラチナチケットを手放そうものなら、もっと大変なストレスに見舞われることを予見しておきたいと思います。

 

「異なる職種をいくつも経験してスキルを身につけたい」

スキルと言う言葉を、それこそロールプレイングゲームのように捉えがちなのかもしれません。短期間で身につくスキルなど、実際のビジネススキルとは呼びません。商売の基本として、商品やサービスがあってそれに値段があり、その値段を下回る原価を消費して、差分の利益を生み出すものです。もし短期間で学べるスキルをその原資とするならば、他の競争相手の誰でも同じビジネスに参入でき、途端に稼げないビジネスとなってしまいます。

ちょっと経験して、わかったと思い込んでこのスキルを活かして他業種に、と、聞こえはいいのですが、わざわざレッドオーシャンに向かって飛び込んでいっているようにしか見えません。

企業はなぜ長い研修期間を設けるのか。そして正社員にして長期雇用しようとするのか。これはその企業が他の企業に対して優位性のあるビジネスを運用していて、この秘訣を身に着けていってもらいたいからです。これにはある程度時間がかかります。いろんなケースを体験するには机上の知識ではなく経験が必要となるからです。この経験こそスキルの源泉であり、経験をベースに勉強を積み重ねるのでスキルが身につくのです。

あたかも、希少スキルを身につければ若手でも年収1,000万、みたいなおとぎ話がネットを中心に流行していますが、この1,000万をどのようにビジネス上利益として生み出すかを現実に知っている人間からすると、考えが甘すぎてどうしようもないという感想です。

 

「大学生がいつでも就職活動ができるように変わってほしい」

大学生は勉強しなさい。研究しなさい。

どれだけ学費がかかると思っているんでしょう。私立では年間百数十万かかりますし学科によっては倍近くかかります。元を取ろう。そんなにいい就職がしたければ、それを裏付けるための知識を身に着けよう。

もし大学で勉強しても就職とは関係ないと思うなら、入る大学が間違っている。勉強に支障がないように就職活動を制限するのは絶対的に正しい。

もし、働きながらでも勉強したいというならば、カドカワのN高校のような仕組みを大学にも導入すべきなのかもしれない。ただ、主は勉強で、従が就職としないと、まるで大学の意味がない。大学に集められた学費は、何のためのものなのだろうか。

 

「仕事や就職活動に対する学生の価値観は変わっており、学生が自己実現できる環境を整えていかないといけない」

企業側も、いざ不景気となれば学生が自己実現できる環境なんてきれいごとです。生き残りに必死になり、20年前の就職氷河期がやってくるだけです。

今の子供たちは、ゆるやかな好景気しか知りません。ですから新卒プラチナチケットを手放す話すら子供たち自身から出てくるのです。

それ手放すなら、ロスジェネ中途プラチナチケットを代わりにくれよと思っている、我々世代が大量にいると思います。

せっかく、新卒を大量雇用できる社会が現時点で成立しているのに、なぜにこれを変えようとするのか、全く理解ができません。

 

変えるばかりが改革ではない

最後に、私が就職活動をした20年前は、派遣を象徴とする非正規雇用が拡大された時代でした。そのころには大量に派遣会社のコマーシャルがテレビで流され、下記のように言っていました。

・新しい働き方
・一つの会社に縛られない
・自分でキャリアを選択する
・多くの会社でたくさんのスキルを経験できる

私は何となく気持ち悪さを感じ、なんとか正社員枠で(ブラックかもしれない)SIerに潜り込んだのですが、数年後に派遣切りなどたくさんの問題が噴出したのを覚えています。※一方で、SIerには偽装請負などの問題がありそれはそれで影の部分もあるのですが。

20年前は私も学生で何の抵抗もできなかったのですが、今回は少なくともこのブログにおいては、「学生は新卒プラチナチケットを手放してはいけない」と表明しておきたいと思います。新卒の一斉雇用は社会を安定させる大事な仕組みです。