orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

ジャパンディスプレイが発足当初に話していたこと

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瀬戸際のジャパンディスプレイ

ジャパンディスプレイが相変わらずの経営不振です。

 

www.jiji.com

 中小型液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)は14日、2019年3月期の連結業績予想を下方修正し、営業損益が200億円超の赤字になる見込みだと発表した。5年ぶりの黒字化を計画していた純損益も赤字となる見通し。

 目標未達に伴い、官民ファンドINCJ(旧産業革新機構)の支援を受ける経営再建の先行きには不透明感が強まっている。また、JDIが運転資金や成長投資の原資確保のために中国や台湾の企業・ファンドと行っている出資交渉では、議決権比率などでなお隔たりがある状況だ。

 

www.nikkei.com

だが時間の猶予は日に日に失われている。JDIの現預金は18年12月末時点で543億円。今期に550億円を調達したが、18年3月末に比べて265億円減った。

事業で得る収入で設備投資を賄いきれていない状況が現金流出に拍車をかける。本業で稼ぐ営業キャッシュフローから設備投資などで支出するキャッシュフローを差し引いたフリーキャッシュフロー(純現金収支)は9四半期連続の赤字だ。

 

ジャパンディスプレイ自身は2012年4月に、ソニー、東芝、日立製作所の中小型ディスプレイ事業を統合して生まれた会社です。ただし70%の資本は官民ファンドの産業革新機構であり、国が噛んでいます。

もうすぐ8年目となるジャパンディスプレイですが先行きが見えないどころか、瀬戸際の状況にあります。どれぐらい瀬戸際かについては各種記事に譲るとして、発足当時の強弁を見ていきたいと思います。

 

記事1:「日本発のグローバルカンパニーに」

今の状況と比較しながら、評価してみてください。

 

monoist.atmarkit.co.jp

「2011年11月の正式合意から、ロケットスタートを合言葉に4カ月半という短い期間で新会社を立ち上げることができた。新会社として発足できたので、フラットかつスピーディな経営判断が可能な体制を構築できたと考えている。拡大の見込める中小型液晶ディスプレイ市場で、統合によるシナジー効果を発揮し、日本発のグローバルリーディングカンパニーとなることを目指す」

 

中小型液晶ディスプレイは年々価格下落が続き、作って売っても儲けが出ないという状況に陥ったにも関わらず、液晶一本足打法を継続しどんどんジリ貧に追い込まれていった、と言うのは有名な話です。

スマートフォン向けを中心に需要が拡大している有機ELディスプレイについては、「既に、3社の有する技術を持ち寄って、開発の方向性は決めている。2012年の上半期中にデモンストレーションサンプルを発表し、2013年に事業化を判断したいと考えている」(大塚氏)という。

と言いつつ、

 

今日こんな記事が。下記は2019年の記事です。 japanese.engadget.com

有機ELの量産は『技術的にはほぼ確立した。すでにパイロットランの状態』(月島義幸社長)とも語り、顧客(メーカー)との対話を常時継続している段階と表明。なお、量産日程については『お客様と合意した日程で進める』と明言を避けました。

会社の創立会見で事業化の見通しに触れながら、2019年までまだ事業化できていない。このスピード感の遅さが致命傷になっている感があります。

 

元記事に戻ります。

事業統合によるシナジー効果については、間接部門のコスト削減と、企業価値の向上という2つの方向性を示した。大塚氏は、「間接部門のコストについては、1+1+1を1にしたい。3社の研究開発費と販売費および一般管理費(SGA)の投資比率は、台湾のディスプレイ企業と比べて10ポイントほど大きい。このうち、親会社との関係などによって増大していたSGAは適正な額まで削減したい。一方、企業価値の向上については、1+1+1を3以上に高めたいと考えている。そのためにも、2013年3月末までの1年間で、3社の事業を継続しながら、新会社としての新たな価値を発揮できるような体制構築を急ぐ」

 

この記事の通り削減はしたのでしょうが、削減してしまったせいで有機ELなどの投資に出遅れ、そのまま本業の利益率がどんどん低下し、液晶を売っても売っても現金が減っていく現象が起こっているのだと推察します。

 

 同氏は、「官民ファンドではあるものの、産業革新機構は2009年から2年間を掛けて、ジャパンディスプレイに対する投資の見極めを行った。こういったプロセスは、政府から直接投資を受けたエルピーダメモリとは状況が異なる。また、DRAMは毎年技術が進化し、それに合わせて莫大な投資が必要になることが問題だった。一方、中小型ディスプレイは、技術進化のスピードはDRAMほど速くない。高付加価値の中小型ディスプレイである低温ポリシリコン液晶ディスプレイの製造パネルサイズは、当社でも最大で第4.5世代(730×920mm)である。これをさらに大型化することは容易ではない。技術進化の速度はDRAMより2回り以上遅い。つまり、投資額はDRAMほど大きくはならないはずだ。現在保有する液晶ディスプレイパネル工場が、全て減価償却が終わっていることも大きい」と説明する。

 また、中小型ディスプレイはほとんどがカスタム品であるため、汎用品のDRAMよりも販売価格を安定させやすいという。

 

この見解が全ての元凶なのでしょう。エルピーダは2009年に公的資金が注入されたものの2012年に破綻しました。液晶ディスプレイの場合7年持っている、ぐらいの差にしか過ぎないと思います。当初の段階で読みを外していて、そこから毎年毎年読みを外して今に至るといったところでしょうか。

 

記事2:「最大の強みは技術力」

こちらは、技術サイドの記事です。

 

tech.nikkeibp.co.jp

――有機ELパネルの開発に関する現状と具体的な開発目標を教えてください。2011年末のインタビューの中で大塚社長は、「Samsungと同等レベルの有機ELパネルを2013年に量産化できるだけの技術を持っている。そこに達するまでには、それほど高いハードルがあるとは思っていない」とコメントしました。これを裏付けるような成果や取り組みがありましたら教えてください。

田窪 2013年度中に量産することを前提に、さまざまな検討をしています。TFT基板については、現時点ではおそらく、韓国Samsungグループよりもレベルは上だと思っています。社内の優れたLTPS TFT技術を駆使することで、有機ELパネルの映像表示への影響が小さいトランジスタ設計や回路設計が可能だからです。開発が遅れているのは、有機EL素子の方です。ここは、決してずっと後追いになることがないように、研究開発を強化します。

 

当時、韓国に後塵を拝するなんて想像は全くしていなかったのではないでしょうか。結果として、有機ELはLG、サムスンの独り勝ちの様相です。

有機ELに関して、なぜジャパンディスプレイはここまで出遅れたのか・・経緯を調べるとこれまた感想は苦しさしかありません。

 

2015年1月に産業革新機構主導で、有機EL製造のためのJOLEDを立ち上げ

av.watch.impress.co.jp

 

2016年12月にJDIがJOLEDを子会社化すると発表、JDIは産業革新機構から追加融資を受ける(しかし)

av.watch.impress.co.jp

 

JOLEDの子会社化、2017年には延期、2018年に取りやめ・・

toyokeizai.net

 

2016年の追加融資は、結局救済資金であって有機ELとは全く関係のないことに使われてしまったことになります。

発足当初に技術責任者が誇っていた、モチベーションや技術力の高さは、液晶市場のジリ貧でキャッシュフローがマイナスに落ち込んでいく中で、追加投資の余力も無くなっていった現実が待っていた、ということになりますね。

2016年11月には、ジャパンディスプレイに有機ELを作るモチベーション無し、と見透かされた記事もあります。

 

newswitch.jp

 

まとめ

発足当初の、経営トップおよび技術トップのインタビュー記事を読んでわかること。それは、偉い人の言うことを真に受けてはいけないということです。ポジショントークをしてしまうのが人間の本性です。常に自分で情報を集め、自分の頭で理解し、自分が納得する日々を送りましょう。たかだか8年前のインタビューですが、どれだけズレが生じているか明白でしょう。このズレと時間の経緯で、ものすごい不利益が生まれるという好例だと思います。このようなことに巻き込まれると思ったら撤退する勇気も必要だということです。

未来に正しいビジョンを策定すれば、正しい方向へ人やお金、物やサービスが進んでいきますが、誤ったビジョンを策定すれば、簡単に何百億というお金が誤ったことに使われ、そのために人が雇用されてしまう怖さです。