Amazon RDS on VMware
Amazon RDS on VMwareという、謎めいたサービスがVMwareおよびAWSから発表されました。
Amazon RDS on VMwareは、データベースのマネージドサービスであるAmazon RDSを、AWSがVMware vSphere上で提供するもの。VMC on AWSではAWSが提供するインフラ上で、VMwareがサービスを提供するが、Amazon RDS on VMwareは逆に、VMwareのインフラ上で、AWSがサービスを提供する。
VMwareからのニュースリリース
早速VMwareからはニュースリリースが出ています。
英文しかないので、個人的な興味のもと本文を日本語訳してみます。
AWSとVMware、VMwareでAmazon Relational Database Serviceを発表
Amazon RDS on VMwareは、AWSのようにオンプレミス環境やハイブリッド環境のデータベースを簡単にセットアップ、操作、拡張できるようにします
LAS VEGAS、2018年8月27日(GLOBE NEWSWIRE) -VMworld 2018で本日、Amazon Web Service(AWS)、Amazon.com(NASDAQ:AMZN)とVMware(NYSE:VMW)は、Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)on VMwareを発表しました。VMware上のAmazon RDSは、VMwareベースのソフトウェア定義のデータセンターやハイブリッド環境でデータベースを簡単に設定、操作、拡張し、それらをAWSまたはAWS上のVMware Cloudに移行するためのサービスです。VMware上のAmazon RDSは、データベースがどこに配置されているかにかかわらず、データベース管理を自動化し、顧客がアプリケーションの開発とチューニングに集中できるようにします。今後数か月以内に、VMware上のAmazon RDSはMicrosoft SQL Server、Oracle、PostgreSQL、MySQL、およびMariaDBデータベースをサポートします。VMwareのAmazon RDSについて詳しくは、https://aws.amazon.com/rds/vmwareをご覧ください。
リレーショナルデータベースは、オンプレミスで動作するビジネス上重要なシステムをすべてサポートします。 これらのデータベースのプロビジョニング、パッチ適用、バックアップ、複製、復元、スケーリング、および監視は、退屈で、コストが高く、危険です。間違いがあれば、アプリケーションのダウンタイムが長くなる可能性があります。 さらに、高可用性のためにデータベースを設定および管理し、複数のノードにまたがってデータを複製することはさらに困難です。 VMware環境内の自己管理型データベースは、これらの課題に加え、あらゆるデータベースに対して、データベースイメージの作成、オペレーティングシステムのインストール、パッケージのインストール、およびデータベースのセットアップが必要です。 複数のバージョンとパッチ適用をサポートすることは、特にバージョン、構成、および拡張機能がビジネスの成長に伴って変化するにつれて、組織全体で扱いにくくなります。 セキュリティ、コンプライアンス、および監査の要件が追加されると、データベース群のメンテナンスに費やされる時間は大幅なコストとなり悩みの種になります。
過去9年間、Amazon RDSは数十万のお客様のデータベース管理の苦痛を軽減し、AWSで稼働するデータベースの高可用性、耐久性、セキュリティを提供してきました。 Amazon RDS on VMwareは、これと同じ経験をVMwareベースのデータセンターにもたらします。 Amazon RDS on VMwareは、データベースを地上からクラウドまで管理し、単一のシンプルなインターフェイスでAWSへのアクセスを可能にします。 Amazon RDS on VMwareは、データベースのプロビジョニング、オペレーティングシステムとデータベースのパッチ適用、バックアップ、ポイントインタイムリストア、ストレージと計算スケーリング、インスタンスヘルスモニタリング、フェールオーバーを自動化します。 また、Amazon RDS on VMwareを使用して、低価格、高可用性のハイブリッド展開、AWSへのデータベース災害復旧、AWSクラウドのAmazon RDSへのレプリカバースト、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)の長期データベースアーカイブを実現します。
Amazon Web Servicesの最高経営責任者(CIO)Andy Jassyは次のように述べています。「データベースの管理と運用は非常に困難で、エラーが発生しやすく、リソースが集中しています。「数十万のお客様がAmazon RDSを信頼して、規模でデータベースを管理しているのはこのためです。VMware社のオンプレミス環境やハイブリッド環境にも同様の運用テスト済みのサービスを提供することができ、データベース管理が企業にとってはるかに容易になるだけでなく、これらのデータベースがクラウドに移行するのが簡単になります。 "
「当初、AWSのVMware Cloudと提携したとき、われわれのメッセージは明確でした。プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方のリーダーが提供する最高のものを、顧客に提供しています。VMwareのAmazon RDSにより、我々はもう一度やります」とVMwareのPat Gelsinger最高経営責任者(COO)は語っています。「今度は、AWSから革新を取り、VMwareをプライベートクラウドインフラストラクチャとして選択した数十万のお客様に提供していきます。エンドユーザーとデータベース管理者は、AWSとVMwareのこの機能により、実行する環境がプライベートクラウドかパブリッククラウドかを問わず、クラウドのようなデータベース管理エクスペリエンスにアクセスできるようになりました。このタイプのゲームを変える革新は、VMwareとAWSのパートナーシップの深さを示しています。
今後数か月以内に、VMware上のAmazon RDSはMicrosoft SQL Server、Oracle、PostgreSQL、MySQL、およびMariaDBデータベースをサポートします。
考察
このニュースを読んで、オンプレミス環境のVMwareにAmazon RDSを載せられると思った人がずいぶんいらっしゃるのではないかと思います。しかし、このニュースはもっと注意深く読む必要があると思います。以下は現情報を踏まえた個人的な考察です。
VMware Cloud Foundation (VCF)ありき(多分)
少なくともオンプレミス側のVMware環境は、VMware Cloud Foundationという最近のVMwareが提唱した基盤である必要があります。2018年冬に東京リージョンで利用開始となるVMware Cloud on AWSも同様の設計で構築されています。
VMware Cloud Foundation 統合 SDDC プラットフォーム
こちらのVMwareのページの表を見てもわかる通り、AWSだけではなく、IBM CloudやHCIでもサポートしています。vSphereだけ使っているVMware環境にAmazon RDSが載ると思うのは間違いだと思います。
VMware Cloud Foundationの中身を見ると、VMware NSXが入っていてネットワーク仮想化まで含みます。この機能にてオンプレミスやクラウドなどの環境をソフトウェア的に接続し、1つのデータセンターのように見せます。これをSDDC(ソフトウェアディファインドデータセンター)とVMwareは定義しています。
VMware Cloud on AWSありき(多分)
まずは、VCFがオンプレ側にあることを大前提として、VMware Cloud on AWSの利用も必要となってくると思います。
オンプレ側(VCF)<---> クラウド側(VMware Cloud on AWS)
という構成のもと、オンプレ側を1つのAZ(Availability Zone)として利用するのでしょう。もともとAmazon RDS自体はAWSのマネージドサービスですから、AWS側からオンプレ側へのアクセスパスがないと、マネージド(運用管理)できません。RDSを利用した方ならわかると思うのですが、最新パッチがAWS側の意思でどんどん適用されていきます。また、RDSのカバー範囲としてOracleやMicrosoft SQL Serverなど有償パッケージも含まれていることから、オンプレ側での利用状況をリアルタイムに把握する必要があります。オンプレミスの閉じられた環境でAmazon RDSを単独で使われたらVMwareもAWSも把握ができません。
Amazon RDS on VMwareのデプロイは、VMware Cloud on AWSのコンソールから実施する(多分)
3段論法で考えると、Amazon RDS on VMwareをデプロイするときは、VMware Cloud on AWSのコンソールから実施するのでしょう。それをオンプレミス側のVCFにもデプロイすることができ、AWSはオンプレミスのデータセンターすら、AZ化する目論見なのだと思います。
今回はRDSのみの話ですが、技術的にはEC2もその土壌に入ってきそうです。
まとめ
オンプレ側については、HCIだけではなくIBM Cloudなどのクラウド環境も視野に入ってきます。もともとVMware Cloud on AWSの費用はかなり効果な部類です(見積もってみればわかりますがエンタープライズ向けです)。マルチクラウドでのVMware環境を構築しつつ、AWSのアドバンテージとしてRDSを押し出してきたということになります。
「できること」だけ見ると技術的な側面とすると「すごい」のですが、VCF自体にはvSANやNSXのライセンス費用も含まれていて、ちゃんとやろうとするとなかなか高額なソリューションになってしまっていると思います。
vSphereでサーバー仮想化だけで十分なユーザーが、本当に(高額なコストを支払って)SDDCまでやる必要があるのかな・・という思いがあります。コストさえ見ないならぜひ見てみたい技術ではあるのですが。現時点での個人的な感想です。
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