苦しそうな人を励ます
なんとなく表情も雰囲気も暗くて悩んでいる人を前にしたら、励ますしかないと思います。身の回りにいる人でしたら明るい方がいいですもんね。それでは、どうやって励ますか。これは高度な問題だと思います。
がんばれ。
これが効果的なときって実はあんまりないような気がします。苦しんでいる人はがんばらなければいけないのにがんばる力が出ないというので悩んでいるケースは多いとお思います。その人に、がんばれ、と言ったら言う方は楽なのですが何も解決しないケースが多いです。がんばらなければいけないのにがんばれないから、悩むんです。なのに、がんばれと言われたら余計暗くなってしまうでしょう。
とりあえずは明るく生きてみようよ。
この言葉も余計なお世話でしょう。そもそも明るくしたいに決まっています。けれども苦しいから明るくなれない。どうしたら明るい気分になれるのか、がんばる力が湧いてくるのか。病は気からという言葉もあって、とりあえず気持ちから明るくすることを勧める人はいますが、長続きしない気がします。
原因はなんだろうか。
一見正しいような気もします。苦しさの原因を探るのを手伝ってやるのです。でも暗いから発言もあまりしないでしょう。だんだん励ましてるつもりが、「なんであなたの原因を探ろうと思っているのに、あなたは受け身なんだろう」となってきて、かえって怒ってしまったりして。あれ、励ましていたのに、苦しんでいる相手を怒ってはいけませんよね。
原因は××だね。絶対そうだ。
だんだん励ましている方が耐えきれなくなって、原因を決めつけようとしてしまいます。励まされている方もめんどうになって、そうかもねと言ったりしますが、だいたい原因はそれではないので、暗い雰囲気のまま終了します。
ではどうすれば?
そんなこんなで、おそらく励まそうとしても、なかなか答えは出ません。励ますって難しいですね。明るさを押し付けることでもないし、原因を見つけてやることでもないのです。
励ます上で大事なことは、苦しそうな人は自分が悩んでいる理由がわかっていない場合が多いということです。悩んでいる理由がわかればそれを解決しているはずです。その苦しさは明らかですが、悩んでいる理由があいまいなため、その苦しさのほうが主体になってしまい解決できないまま立ちすくんでいるケースがあるような気がします。そのとき、不機嫌に任せてまわりの空気もくすみがちになると思います。
こういうときにどうすればいいか。まずは「どう行動するか」を中心に考えていくべきだろうと思います。気分は暗いままで構いません。どういう行動をするのが一番ベターかを一緒に考えてあげるのです。もしかしたら一緒に何かできることであればなお良い選択肢です。共同作業は暗い気持ちを幾分明るくしてくれます。
どういう行動をすると相手の心がより晴れるかを考えると、原因に近づける場合があります。その行動がなぜ相手の心を晴らすかを分析してもいいですが、しなくても、原因には近づいています。そして、その行動を一緒に考えてくれたり手伝ったりすることが、より相手にとって「励まし」なんだろうと思います。もしそれで苦しみがやわらいだら原因が明確になるのですから。そのころには悩みがどこかに行っているかもしれません。
臨床心理学の分野では行動療法の分野になると思いますが、そんなにアカデミックに考えなくても、励ますためには原因を探らず良い方向に行くための行動を一緒に考え手伝うこと、と考えると、なんだかうまく行くことがあるような気がします。
誰でも、知らず知らず、苦しみ悩みの道に入り込んでしまうことがあると思います。まず行動から整えてみることをお勧めします。