高額納税者の嘆き
最近LINEからZOZOTOWNに移籍された田端信太郎さんのツイートが話題です。
誰か、高額納税者党を作ってほしい。少数派を多数派が弾圧する衆愚主義じゃないか。 https://t.co/Oo576pbj7w
— 田端 信太郎 (@tabbata) 2018年3月10日
上記は以下のツイートについてのコメントです。
2016年に源泉徴収で所得税を納めた給与所得者は4112万人で、納税額は9兆418億円になります。このうち49.9%にあたる4兆5167億円分を、給与所得者全体の4.2%に過ぎない「1000万円超」の人たちが負担しています。#日経ビジュアルデータhttps://t.co/UjJxBOo8la pic.twitter.com/3oy8zWo3tj
— 日経ビジュアルデータ (@nikkeivdata) 2018年3月9日
つまり、税金をたくさん収めている人たちが少数なので多数決原則においては政治に反映されないということでありますね。まあ、自民党の支持団体はその少数派である経団連や日本医師会というのは有名で、そんなことないとは個人的には思いますが。
で、今回の議論は「フランス革命」です。なぜ?。それは所得者全体の4.2%と、それ以外の人の間の対立を見て、連想したからです。
フランス革命の背景とアンシャンレジーム、そして今の日本
まずはフランス革命の背景です。こちら、最も分かりやすい説明はニコニコ大百科にありましたので引用します。
独立に成功したアメリカ合衆国や、産業革命直前のイギリスが近代へと向かう中、フランスはブルボン朝による絶対君主制が依然として続いていた。ルイ14世から続く戦費による借金、ルイ15世治世期のバブル崩壊、アメリカ独立戦争への関与によって、フランスは見るも無残な赤字経済を辿っていく。
国民は、第一身分の聖職者、第二身分の貴族、第三身分の平民、といった具合で区別されていた。第一・第二の身分は免税や大土地所有権、加えてすべての要職を掌握し、年金まで支給された。これらだけでも酷い話だが、真に驚くべきは、人口における平民の割合は90%に達していた、という点。これが世にいう「アンシャン・レジーム(旧制度)」である。
多くの平民が領主への地代や税の負担に苦しむ中、もう一方で、商工業者たち有産市民層もまた、その富や実力に見合わぬ待遇に不満を抱き始める。
どうでしょう。今の日本を連想しませんか?。しかもアンシャン・レジームの図がまた面白い。
https://yamatake19.exblog.jp/21951760/
特権身分は国民全体の2%しかおらず、ここが好き勝手やっていて、で、98%の平民の不満が溜まっていったというわけですね。
で、98%の中にも貧富があって、その中に含まれていた10%の商工業者・弁護士もなんで社会でこんなに成功しているのに、こんな待遇悪いの・・。ということで、これ今の日本とそっくりな状況なわけです。
先ほどの日経ビジュアルデータの表を再掲します。
面白いですね。歴史は繰り返す。
再度ニコニコ大百科に戻ります。
こうした中、シェイエスが『第三身分とは何か』と小冊子で謳い、また、ルソーやヴォルテールの旧体制への批判、アメリカの自由の風や、プロイセン、ロシアの啓蒙思想がフランスに吹き込んだ。
時の王ルイ16世は「もう平民からは増税できないよな、さすがに」と考え、テュルゴーやネッケルらによって劣勢を打破しようと試みるが、貴族階級から税を取り立てようとしたために、大反発を招き、失敗。逆に赤字を増やす始末であった。
これ、どうですか。先月衆議院を通って、今参議院で議論中の税制改正法案ってまさにこの「貴族階級から税を取り立てようとして」いますよね。
この状況で、「フランス革命」が起こった後のことを学ぶことは、非常に今の日本にとって有益であることがわかると思います。
フランス革命では何が起きたのか
フランス革命を今の日本に当てはめる前に、まずはフランス革命で何が行われたかを学ばねばなりません。
ここからの流れは、引用すると長くなるので、今一度ニコニコ大百科を読んでいただきたいです。
流れだけを書きます。
・国王が、国家の問題を解決するため聖職者・貴族・平民の代表を収集し三部会を開いた。
・聖職者と貴族が結託し、平民のいうことなど聞かねえモード。したがって何も決まらない。
・平民がブチギレて、自分たちだけで国民議会を構築。
・国民議会で憲法を制定。
・国王と保守派の貴族が結託し、武力で平民を制圧しようとする。
・平民が再度ブチギレて武力蜂起。権力者を制圧していく。
・国民議会が人権宣言を採択
・平民が国王に人言宣言の承認を(武力で)迫る。国王涙目で承認。
・国王はお引越しし監視されて生活。
・貴族は次々と他国に亡命。
・国王も逃げようとするが見つかって処刑。
はい、フランス革命って、人権宣言やら自由の女神やら何やらで美化されてますが、歴史なんてこんなもんですね。血まみれです。
まあ何しろ、2%が持っていた資産は徹底的に没収されたわけですね。
でこの後の流れは、一気にリベラル政治(左)に行った後、また一気にあのナポレオンが統治する保守政治(右)に傾いたとあります。
結果についてはこう結ばれています。
有産市民層の一人勝ち。
無産市民は依然変わらず(あるいは改善されたか?)の農奴的生活に甘んじ、貴族・聖職者などの特権階級は大幅に領地と権威を失墜させ没落、というように揺れ動いた。
大雑把にいってしまえば、たとえ王さまが死のうと自由になろうと、独裁者は現れる、ということである。というかルイ16世よりもロベスピエールの方が怖かった。急激な改革の後に来るのは、やはり急速な保守化運動であった。
ということです。大昔だということで忘れてはいけないですね。なんとも今あっても不思議じゃないような話です。フランス革命はブルジョワ革命とも呼ばれていて、貴族・聖職者が倒れたあとはブルジョワが権限を握ったわけです。で、はじめはリベラルでやってみよう!とはなるものの、結局は、独裁者が現れる、というオチです。
今の日本にあてはめたら?
日本という国では、「革命」というのは一度も成功したことはないですよね。農耕民族という言葉もありますが、フランス革命の歴史のように、民間人が直接的に血で争うようなことは好まない。だから、フランス革命と同じ方法で事態を解決するようなことは考えにくいと思います。
ただ進んでいる方向はかなり似ています。薄く広く取るのが限界に来て、今はブルジョア層とその上の富俗層から増税しようとしています。給与UPというのは掛け声だけで、この増加率より税金の上げ幅の方が大きいのが事実です。今後の経済動向は流動的ですが、もしこれで物価上昇率2%も達成できずデフレ基調が続き、赤字が拡大していき、重税感が増し庶民の暮らしはますます苦しくなり・・フランス革命前夜です。
そのときは、この国の2%を98%が何らかの形でリストラし、最適化しないと良くならないと歴史が教えています。革命やろうぜとは言いませんが、「高額納税者党」じゃなくってこの文脈だと「平民党」、そうなると一度リベラルに流れるわけか。立憲民主党はいい位置にいることになりますね。
経済の良化を中心に置く自民党の核心はここにあると思います。ここからもし悪化したら本当にフランス革命的な左へのベクトルが、加速すると思います。
それで何も決められず独裁者が現れ、右に行く・・、これもありそうな話。
こういう視点があれば、世界史楽しかったのにな、と思った日曜0時でした。
追記
この記事を書いた後状況が悪化していたのでもう一つ記事を書きました。
田端さんのツイートからのZOZOTOWN退会騒動とその考察 - orangeitems’s diary