orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

日本にテレワークがなじまなかったワケ

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欧米のテレワーカーの様子

日本におけるコロナ禍の状況は欧米に比べるとものすごく穏やかです。今日はスペインで再度非常事態宣言が行われたり、フランスで新規感染者数が過去最多になるなど、全然収まっているどころか、今からが本番と言わんばかりの状況です。

ですから、テレワークに対する取り組みは日本より欧米の方が進んでいると言え、欧米のテレワーカーの様子を見ているととても参考になります。

日本の場合は「テレワークもできることがわかったので今後必要に応じて使う」、という意識がとても強いですが、欧米は「必要に迫られてテレワークする」という状況です。しかも長期化してきているので従業員のマインドの変化も日本より明確です。

今日のzdnetの記事は、その欧米のテレワーカーの様子を切り取っています。

 

japan.zdnet.com

 コロナ禍が収まる様子が見えない中、フルタイムの在宅勤務で働く期間が長引いている従業員の多くに、オフィスから離れた生活の悪影響が見え始めている。

 しかし、HP Inc.が新たに発表した調査レポートでは、社会状況が思わしくない中でも、従業員は自分の将来の働き方に関するビジョンを見つけようとしていることが明らかになった。同社は、「エンパワーされた従業員」の増加という新たなトレンドについて指摘している。

 

テレワークのデメリットをこう言っています。

 

 従業員の3人に1人は、オフィスに通勤できないことによって士気が低下したと認めている。また、業務中に気が散り、仕事にストレスを受けやすくなっていると感じている回答者もいた。

 それに加え従業員には、雇用者が自分たちを十分に支援していないという共通認識があるようだ。米国と欧州の従業員のうち、リモートワークに関して、雇用者から新しい働き方のヒントや、データセキュリティのベストプラクティスなどについて指導を受けた人は、4分の1未満だった。

 

そして、プラスの面をこう表現しています。

 

しかしHPの調査によれば、在宅勤務で連日働くことには潜在的な難しさがあるにもかかわらず、労働者は大きな視点からものを考えていることが分かった。また全体として見れば、回答者は将来に対して前向きだった。調査対象の従業員の過半数は、今回の危機によって生まれた新しい働き方は、自分たちが労働環境を良い方向に変えることを可能にすると考えている。

 この数カ月、労働者は自分たちの「9時5時」が将来どうなるかを考えており、それに備えている。調査では、多くの従業員が継続的な学習やスキルアップが成功の鍵だと認識しており、時間を無駄にすることなく自分たちの再トレーニングを行っていることが明らかになった。

 

考察

テレワークの環境によって会社への忠誠心が下がる。一方で、自分のスキルアップへの関心が向き、自己教育や起業に興味を持つ。

この変化こそ、日本の経営者が恐れていることではないかと感じます。日本は封建制度の文化が長く、日本の正社員がなぜこれだけ厚遇され解雇されにくい法律が馴染んでいるかというと、圧倒的に正社員の会社への忠誠心が海外に比べ著しく高いから、だと思います。

非正規社員ですら忠誠心が高いので、会社に裏切られたときに裁判にまで発展するケースをよくニュースで見ます。一生懸命働いてきたのに、ひどい、と。

一方で海外の場合は契約ありきであり用が済んだら解雇、も普通にありますから、もともと忠誠心も薄めです。逆に言えば契約に対するプロ意識も強く、成果の連動も明確なので結果で示そうとします。

どちらがいい、というより文化の違いです。

一生会社に尽くす、滅私奉公、という思想と、日本の終身雇用・年功序列の考え方がマッチして日本は高度成長できました。そこにテレワークという方法論がなじまなかったと考えます。仕事さえできればいいんだよの欧米。会社への忠誠心を基盤とする日本。

どうやっても会社への忠誠心は落ちる中で、欧米ではこれに依存していないので変化しやすいのですが、日本の場合は風土や文化の問題で敏感に反応しがちだと思われます。

ですから、今年の春を思い出していただきたいのですが、何とか忠誠心を保とうとオンライン飲み会やら雑談のための会議やら、変な文化の試行錯誤がありました。今や聞かなくなりました。もともと無理があったのです。今はオフィス回帰が始まっていますが、感染対策をきちんとしながら良い落としどころを見つけている最中にあると思います。

私は日本が欧米のようになれ、とは思いません。日本の文化は欧米との差別化になっていてこれからも強みにしていくべきだと思います。ただし、テレワークは非常にこの強みと相性が悪いので、極端なテレワーク文化を持ち込まないようにすべきと考えます。会社への忠誠心を下げないような会社運営こそ日本においては重要です。